16杯目 ホンジュラスとしろっぷ
「むむむむむむ……」
私は苦悩していた。
――――事の発端は今から1時間前。
私が彼にそれを聞いてしまったのがきっかけだった。
「そう言えば私達ボードゲーム大会の時に会ったよね」
「懐かしいね、あの時の凛ちゃんの挨拶僕はまだ覚えてるよ」
「早く忘れて」
「あれは忘れられないでしょ」
「私は基本参加しなかったけど、はやとくんってボードゲーム強いの?」
「うーん、どこからが強いか分からないから何とも言えないけど少なくともあのグループでは人生ゲームとかでない限りはまだ1回も負けてないよ?」
「そんなに!?」
「やってみる?」
「そんなに強いなら戦ってみたい!」
そう言って彼は『オセロ』を取り出した。
その後ずっと戦っているのだが。
1度も勝てていない。彼が強すぎるのか私が読んすぎるのかは分からないが多分両方だ。
私は負けず嫌いなので何度も彼と再戦していたのだ。
「凛ちゃん、その置いたら角取られちゃうよ」
「なぁっ!?」
「今回も僕の勝ちかな」
彼も何気に負けず嫌いなのである。容赦が無い。
この試合もまた彼に惨敗してしまった。
「つ、次は勝てるもん!」
「あはは、連戦し続けても脳が疲れて単純な動きしか出来なくなっちゃし、一旦休憩しよっか」
「仕方がない……敗者の私が珈琲を淹れよう……」
「嬉しいなぁ、今日はなんの珈琲なのかな」
「今日の珈琲は『ホンジュラス』です」
「マヤ文明の国だね、どんな味なんだい?」
「味はアメリカンタイプで凄く飲みやすいの! 珈琲の中でもトップクラスに飲みやすいからガブガブ飲めちゃう。カフェとかでは良く使われてるかも」
「なるほどね、いっぱい飲んでくれた方がいいもんね」
「そうそう、私はどうせなら色々なの飲んで欲しいけど」
そう言ってドリップを済ませ、彼の前に珈琲を差し出す。
「どうぞ。ホンジュラスです」
「ありがとう、いただきます」
彼は珈琲を口に入れる。
「うん、フルーティーな香りと酸味、後味もマイルドで美味しいね。これなら確かに沢山飲めそうだね」
「もう一杯いる?」
「あ、じゃあ貰おうかな」
「わかった! ちょっとまっててね」
私はもう一杯ホンジュラスをドリップする。
これをドリップする時は飲みやすさを引き出すために若干薄めに作るのが私的ポイントだ。
しばらく休憩した後私達は再戦する。
「かてなーい!」
「あはは、9戦9勝、ラストにしようか」
「最後は絶対勝つから!」
私たちの対局が始まり、私の心の中は緊張が走る。
部屋にはパチッパチッと音が響く。私は夢中になっていた。
「あっ」
気づくとオセロの盤は全て埋まっていた。
「数えよっか」
彼と一緒に自分の色を数える。
結果は34対30。私の勝ちだった。
「やったぁ!!」
「あぁ、ギリギリ負けちゃった」
「やっと勝てた……頑張った私」
だが私は嘘の苦手な彼の顔を見てあることに気づいた。
「あー! 手加減したでしょ!」
「そ、そんなことないよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜今日の珈琲〜
ホンジュラス
苦味 ☆
酸味 ☆☆
甘味 ☆☆
コク ☆
香り ☆☆
・アメリカンコーヒー寄りでとっても飲みやすい。
・そこまで苦くもないので珈琲初心者にもおすすめ。
・沢山飲みたい時はこれ!
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