12杯目 カレンとしろっぷ。【番外編②】

「ふふ、誰かと出かけるのも悪くないものね」


華蓮は珍しく休みを取って出かけていた。

しかも二人きりで。相手は凛なのだが。


「それで……どこに行きたいの? 華蓮」


「私……どこに行きたいのかしら?」


「そんな記憶喪失した少女みたいなこと言わないでくれる!?」


「冗談よ冗談、私、そろそろ洋服を買おうかと思って」


「え、どうしたの、好きな男の子でもできた?」


「貴方達と出かける時1人だけ白衣だと浮くのよ」


「たしかにね、じゃあ一通り回ろっか」


「ええ、お願いするわ」


その日は華蓮は着せ替え人形の様に色々な服を着せられた。


しかし彼女は全ての系統の服を着こなす。


可愛い系統の服から少し艶めかしい服まで全て似合う。


「やはりこの世は……」


「何かあなたから恐ろしいオーラを感じるのだけど……」


着せ替え人形の華蓮は困った顔をして凜に尋ねる。


「凛、どれがいいかしら」


「華蓮はどれが好きなの?」


「白衣」


「おい」


「仕方ないでしょ! 白衣は私のアイデンティティなのよ!」


「あんたが選びに行きたいって言ったんでしょ!」


「だって……友達と服を選んだりして出掛けてみたかったんだもん……」


(えっ、なに今のキュンときた)


しばらくときめいてる凛に華蓮は近づく


「凛……カミングアウトを無視するのは流石に如何なものだろうか」


「あっ! いや、ちゃんと聞いてた聞いてた!あまりにも可愛くてときめいてただけ」


「…………可愛い子でもいたの?」


「うん、わたしの目の前にね」


華蓮は後ろを振り向く。


「もう居なくなってしまったか……」










しばらくして

2人は何も買わずにベンチに座っていた



「この子は……華蓮、服ってゆーのは誰かの目を気にして着るものじゃないと思うよ?」


「つまり?」


「華蓮の着たいと思える服を着なさいっ」


「……わかったわ」


華蓮は凛の頬に軽くキスをする。


「ありがとう。凛」


(えっ、ちゅうですか!?)


「なっ、私女の子ですよ!?」


「感謝の気持ちよ?」


「あっ」


「あら、彼氏以外の子にときめいちゃったかしら? 浮気は良くないわよ」


「なっ! そっ、そんなわけっ」


「さっ、そろそろランチにしましょ」


2人はカフェに入って昼食をとる。


「わぁ! ワッフルだ。私も挑戦してみようかなぁ……」


「あなた常にお店のこと考えてるのね」


「華蓮もスマホばっかり見て、常に病院のこと考えてるでしょ」


「ぬう……それを言われては言い返すことは出来ぬが……ただ」


華蓮は携帯の電源を落として凛を見る。


「今日だけは、凛だけを考えようと思うわ」


「えっ、それってどういうことですか!?」


「ほら、私のも食べる? 資料になるかもしれないわ」


そう言って華蓮は凛にフレンチトーストを差し出す。


「はい、あーん」


「んん……あーん」


凛は華蓮の命ずるがままに従い口を開く。


「どう? おいしい?」


「は、はい……とっても……」


「ふふ、それなら良かったわ」


「華蓮が男じゃなくて良かったわ……」


「もし男で生まれててもあなたの彼氏ほど魅力は無いから大丈夫よ。安心なさい」


「華蓮はほんとに彼氏作らないよね〜」


「そうね……私の過去を全て忘れて惚れさせてくれるほど良い人がいれば喜んで付き合うのだけど」


「どんな人がタイプなの」


「そう言われるとなんとも……」


「適当に紹介しようか? 華蓮の顔見せれば大抵の男は紹介してくれ〜って言うと思う」


「凛に言われると気を遣われてる気分だわ」


「もう、茶化さないでよね」


しばらく雑談をしてから。


「そろそろ行きましょうか」


「わかった! すみませ……」


「会計なら終わってるわ」


「ダメだ完璧すぎる……今回私のいい所がひとつもなかった……」


華蓮は凛を家まで送った。


「じゃあ、また遊びましょ。次は3人で」


「そうだね。そろそろ3人で集まりたいかも」


「彼氏さんと仲良くね」


「ありがと!」


「こちらこそありがとう。じゃあまたね」


「うん! また!」


こうして華蓮の休日は終わった。





























「……たまには休むのも悪くないわね」

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