11杯目 カスミとしろっぷ。【番外編①】
これはちょっと前のある朝の話し。
「……きろ。おい、起きろって『また』遅刻するぞ!」
「んん……はっ!? 華蓮先生! 許してくだせぇ!」
霞はハッとした顔をして起き上がる。
「なんだ……怜斗か」
「一体その人に何されてるんだ…まぁいい、朝飯作ってあっから早く食べろ」
「うおおおお、飯だ飯だー!」
そう言って霞は洗面所に向かった。
「朝から空元気なこって……」
霞は席に着いて食事を取る。
「あー行きたくなーい」
「頑張れ頑張れ」
「朝から怜斗が足りてなーい」
「じゃあ何すれば満たされるのよ」
「ちゅーしてくれたらやる気でるぞー」
「はいはい、考えといてやるよ」
「それ絶対してくれないやつ〜」
そんな話をしながら朝の準備を終わらせていき、仕事に行く。
「じゃあ行ってくるぞー!」
「忘れ物してねーのかー?」
「当たり前だろっ」
「じゃあコレはなんだ」
「しまったっ! あと忘れ物ないよな!?」
「『忘れ物』は無いな」
「良かった! じゃあいってきま……んっ!?」
怜斗は霞を引き寄せて唇を交わす
「ほれ、行ってこい」
「あ……い、行ってきます!」
そう言って霞は急いで家を出ていった。
「……頑張れよ、霞」
霞は車にエンジンを付ける。
「ほんとにしてくれるとは……不意打ちには弱いのに……」
霞は仕事は出来る。
そのはずだったのだが……
「霞さんこの資料……ここ間違ってるよ」
「あっ……すみませんっ! 今直します!」
「霞さん、患者さんの入浴終わってないけど大丈夫」
「あぁ、大丈夫です! 今やります!」
「最近ダメだなぁ……私」
仕事を終えてベンチに座っていると缶珈琲をもった華蓮がやってきた。
「あら、仕事は終わり?」
「あっ、華蓮先生!?」
「なんでそんなに怯えるのよ……流石に友人にそんな声出されるのは傷付くわ」
「いやぁ、ごめんごめん。華蓮も仕事終わりか?」
「ただの休憩よ」
少しの沈黙が続いた後華蓮が口を開く。
「あなた……最近疲れているでしょう」
「なっ……私は元気だぞー?」
「…………来月の水曜、師長に頼んで休みを入れといたわ。休みなさい」
「なっ……」
「あなたは働きすぎよ。仕事がしたいなら休息も仕事のひとつだわ。その休みに彼とデートでも行ってきなさい」
「華蓮……ありがとう……!」
「最後にひとつ……」
「?」
「もし上手くいかなくて悩んでいるなら1人で抱え込まないで私に相談しなさい。私じゃ不足しているなら凜でも良いわ。仲間に相談しないなんて……それこそ私たちに失礼よ」
そう言って華蓮は仕事場に戻って行った。
霞は帰りにある場所による。
りりーん。と可愛らしい音が鳴る。
「いらっしゃませ〜……って霞じゃない。もうすぐ閉めるわよ?」
「おーっす。じゃあケーキだけでも貰うぞ!」
「…………」
凛は黙って店の『Open』と書かれている看板をひっくり返した。
「凛……?」
凛は黙ってケーキを用意し、
目の前でハート型のラテアートを作る。
「ラテアート……頼んでないぞ?」
「……サービス。何かあったんでしょ?」
「んん……お前らには敵わないな……」
凛は隣を座って霞を見る。
「まぁだいたい顔に書いてあるからね」
「私そんなわかりやすいかな!?」
「……どうせなんかあっても霞は私達に自発的に言わないの知ってるしそういうのは華蓮の方が上手だから私からは何も聞かないけどさ」
凛は自分の手を霞の頭にそっと乗せる。
「もし、今日みたいにたくさん頑張ってたくさん挫折してどうしようもなくなったら愚痴でも何でも言いに来なさい。美味しい物でも飲み物でも作って聞いてあげる。それが私ができる事だから」
「うん……くる……」
「よしよし……でも今日は早く帰りなさい」
「なんでそんな事言うんだよ」
「私よりあなたの事を理解している人が待ってるんじゃないかと思ってね」
凛はそう言って笑って霞を見送った。
「……さっ、私も彼に癒してもらおっと」
「ただいま〜」
霞が家に上がると怜斗が黙って近づいてきた。
そしてそのまま霞を抱きしめる。
「うおっ、き、今日は朝から激しいですな」
「うるせえな」
「お仕事帰りの彼女にそれは無いのでは」
「俺は何があろうとお前の味方だ。それだけは忘れんなよ」
「…………うん」
「愛してる」
「怜斗、愛してる。大好き」
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