7杯目 コロンビアスプレモとしろっぷ。
今日は私は1日休みだった。
彼もいない上に来シーズンの為のシーズンブレンドの配合も終わってしまい、
やる事の無い私は家でゴロゴロしていた。
「ほんとにどうしよう……」
その時チャイムが鳴る。
「はーい……」
扉を開けると、知らない20後半から30代くらいの美人な女性が出てきた。
「えっと〜……どちら様でしょうか……?」
私が不審な顔をしているのと同じようにその人も私を敵を見るような目で睨みつける。
「貴方こそ、『どちら様』ですかね」
彼が例え年上好きだったとしても浮気をするとは思えない。私は小さい脳みそをフル回転させた。
それで出てきた答えは……
「ほんっとうに申し訳ございませんでしたっ!!」
「良いのよ、隼人の家に知らない子が居たから少し身構えちゃっただけよ」
この女性、いや、この方は彼のお母様だった。
「ほんとに無礼な態度をとってしまって申し訳ないです……」
「あはは! そりゃ知らないババァが来たら怖いわよねぇ!」
彼のお母様はとても優しかった。
きっと彼の優しさはお母様譲りなのだろう。
「まぁ隼人は良い男だから女くらい出来ると思ってたけど、まさかこんな美人捕まえてくるなんてねぇ!名前なんて言うの?」
「あっ、私は伊豆木凛と申します!」
私は過去最高に緊張していた。
彼と出会った時以上の緊張だった。恐怖の方で。
「あー!そんな畏まらなくたっていいのよ! 凛ちゃん。あなた何の仕事してるの? 主婦?」
「いえ、喫茶店を経営してます、!」
「経営者なの! やり手ねぇ!」
「いえ、そんな、とんでもないです……」
「じゃあ、私にも珈琲淹れてちょーだいっ」
「えっ」
「あら、お金が必要かしら」
「いや、いえ! とんでもないです! ただ少し急だったので驚いただけなので少々お待ちください!」
私は急いでキャニスターから豆を取り出す。
コロンビアスプレモ。それが今回使う豆だ。
豊かで奥行きのある香りと飲んだ後の心地よい後味が特徴だ。
私がドリップしているとお母様が話しかけてくる。
「隼人と付き合ってどれくらいなの?」
「えっと……そろそろ2年になります」
「あの子2年間もこんな可愛い子を私に紹介しなかったのね」
「いえいえ、そんな……」
「もうセックスもしたんでしょう」
「えっ!? あ、え、あ、はい……」
「その初々しい反応、まだ若いわねぇ、私の中学生の時みたいだわぁ」
私はもう成人してるのだが。
私はドリップを終えお母様の元へ運ぶ。
「お、おまたせしましたっ、コロンビアスプレモです」
「ありがとう。いただきます」
あっ、飲む時の手の動きもはやとくんと同じだ。
そんなことを思いながら見ていた。
「あなた……本当においしいコーヒーを淹れるのね。わたしは味とかこだわりないけど貴方のはそうね、温かさを感じるわ」
「あっ、ありがとうございます!」
「結婚は考えてるの?」
「へっ?」
「いや、だから婚約よ婚約。いつお嫁に来るのかしら」
これはつまり彼の両親から許可を頂いたという事でしょうか!?
「えっと、私は今すぐにでも行きたくて彼にも何度か言われたのですが……」
「愛に迷いでもあるのかしら?」
「それは無いです! 断じて! 絶対に!」
「あはは! 冗談よじょーだん。それで、何があなたを奥手にしてるのかしら」
「私は……いや、私の両親が少し……」
「なるほどねぇ……まぁこんな可愛い子手離したくないわぁ、わかるわかる」
「……………」
「でもね。子どもの幸せを願わない親は居ないわ。手離したくないのは相手を認めてないからよ。それなら2人で突撃して許しを得てきなさいな」
「お母様……」
「私の親も頑固でねぇ、今の夫に家の敷居を跨ぐな! なんか言ってねぇ、半年間毎日門の前で頼み続けたのよ」
「今じゃ考えられないですね……」
「でも、もし仮にそうなったとしてもあの子ならその程度やると思うわ」
お母様は椅子からたってそう言った。
「だって、あの子は私と夫の息子だもの」
「私……がんばります!」
「ええ、また珈琲淹れてちょーだいっ。義娘が出来るの楽しみだわ〜」
そう言ってお母様は帰っていった。
「ねぇ隼人」
「急に電話なんてどうしたの? 母さん」
「あの子はあなたを真っ直ぐに思っている良い子だわ。大切にするのよ」
「……もちろん」
「まっ、下手くそで飽きられないようにね〜っ」
「え?何言ってんの母さっ……」
「凛ちゃん……あの子は絶対に隼人とくっつくわね。お母さん、今から楽しみだわ〜〜!」
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〜今日の珈琲〜
コロンビアスプレモ
苦味 ✩✩
酸味 ✩✩✩
甘味 ✩✩
コク ✩✩✩
香り ✩✩✩✩
・スッキリした酸味が特徴。
・香りもとても良くコーヒーアロマを味わえる。
・酸味系が好きな人は是非。
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