6杯目 タンザニアとしろっぷ。

「ぉぉぉぉ、インドアの私には結構きつい……」


今日は彼と地域の雑草刈りに来ていた。


「うん、いい運動になるね」


私はインドア派で運動もロクにしないのでだいぶきついが彼のゴミ袋を見ると私の倍は軽く入っている。

同じ時間に始めたのにな…………


「おぉ、茶畑さん御夫婦……毎度毎度助かるのぉ……」


町長さんが私たちに挨拶してきてくれた。

まだ結婚はしてないのだが。


「町長さん、こんにちは」


「最近は若いもんはこんな雑用手伝ってくれんならのぉ……年寄りだけじゃきついんじゃよ……」


「僕でよければいつでもお手伝いしますよ」


「顔だけじゃなく心も良い男じゃのぉ……美人夫婦には何かお礼をしないといけないのぉ……」


「いやいや、そんな……あっ、じゃあ」


彼は少し町長さんと話してからこっちに来た。


「ねぇねぇ凛ちゃん」


「?」


「これからお店……開けられる?」














この日は開店以来最も人が来た。

彼の計らいで町民の方が沢山来てくれたのだ。


「おぉ、まさかこんなに良い喫茶店があったなんてのぉ……」


「ほんとですねぇ……店員さんもイケメン」


店中から沢山の声が聞こえる。

すると一人の女の子が私に話しかけてきた。


「お姉ちゃん!私も飲めるものあるー?」


「そうだなぁ……チョコレートはお好き?」


「うん! だいすき!」


「じゃあ少し待っててね〜……」


「わかった! お姉ちゃんはあそこにいるお兄ちゃんの彼女なの?」


「うん、そうだよ? 」


「えー! いいなぁ!」


「でしょ〜、あげないんだぞ〜?」


そんな話をして女の子の前に品を置く。


「わぁ! すごい!」


「『キャンプファイヤー』です」


ホットミルクと串に刺した焼きマシュマロ。

キャンプファイヤーの定番だ。


「あまくておいしい〜っ!」


「気に入って頂けたようでなによりですっ」


「お嬢さん」


お爺さんが私に声をかける。


「はい! ご注文でしょうか?」


「あぁ、ところでお嬢さんは珈琲を淹れて何年かな」


「歴だけなら今年でまだ6年ですね……」


「ふむ。じゃあお任せを一つ。」


お任せ。

霞が頼んだ数あるコーヒーメニューからそれを頼む人は霞のようなこだわりがない人間以外にもう1パターンいる。私を試す人間だ。


女で尚且つ若い。

これだけで技術を疑われるのである。

若くて疑われるのは仕方が無い。

だから『技術』で示す。


「承知致しました。少々お待ちくださいませ」


私は手際良く準備をしてドリップをする。


「お待たせ致しました。本日の珈琲は『タンザニア』でございます」


「ふむ……では頂こう」


そう言って1口。口に含む。

飲んだ後に私をしばらく見る。



「いや、素晴らしい。感服だ」


私はホッとした。


「参考程度に何故この豆を選んだか聞かせて欲しい」


「はい。おとうさまの世代ですと流行りは今のような酸味テイストではなく苦味のテイストが流行りでした。なので苦味とコクが際立つタンザニアを選ばせていただきました」


「人によって豆を変えているのか?」


「はい。お任せの場合はおおよその年齢を予想してその世代に受けが良いテイストの物を提供しております」


「若いながらも恐れ入った。これからも通わせてもらおう」


「はい! 是非ともお待ちしております!」


こうして私達のいつもより忙しい1日は終わった。


「今日は疲れたねぇ……」


「これもはやとくんのお陰だよ〜、」


「いやいや、凛ちゃんの珈琲の技術が高いからだと思うよ? 常連さんも増えそうだったしね」


「だといいなぁ! ありがとうね!」


「うん、僕は君のためならいくらでも力になるよ」


「はやとくん」


「うん?」



「はやとくんは誰にもあげないからね」

















「僕は最後まで君の物だよ」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜今日の珈琲〜

タンザニア

苦味 ✩✩✩✩

酸味 ✩✩✩

甘味 ✩✩✩

コク ✩✩✩✩

香り ✩✩✩✩


・強いコクと苦味が特徴の珈琲。

・香りもとても強く、コーヒーアロマを感じられる。

・苦味が好きな方には是非ともオススメしたい。

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