第35話 ニャンの十九の二 百寸導師と芋2
つまり宗教というものが然るべくしてそのようにあるのかどうかが私にはどうにもよく分からないのだ。
ヒトはパンのみに生くるに非ずというのは理解できるが、それは
その後で初めて、あらゆる真善美なるものに命が捧げられ、またあらゆるものが真善美を具現化すべき命に捧げられるべきなのである。
したがって、宗教や宗教的イデオロギーに捧げるものが命なのではない」
こ奴も何処で悟ったかは知らず、まずまずのことを言う。
多少は感心したが、奴が一息ついて続けて宣うには、
「同じ宗教の中にも、
この、我が国の先の内戦もほかの国々同様それによるものだ。
何と
恥ずかしい事に理想に燃えた私は、この
そうして少しの時間ではあったが、人間の
自論にそぐわぬ連中の言い分には耳を貸さず、いわば多くの人命を奪おうとした
ほんの僅かな対立から
殺し合い、破壊の限りを尽くす。
何とも愚かな事よ」
此の世とか此の国とか言うてはおるが、そりゃ人間の区分けであって、ネコには
人間なぞ
ネコが申すのも何だが、お主が申すのはあらゆるそれらのものが排除された、自分たちの考える「はみ出しもの」を切り捨てた世界という文脈の中での説法に相違あるまい。
それにしてもお主の言う宗教とはそもそも何ものぞ。律法の如きヒトの世のヒトを支配する何ものかであるのか。
此の世が終わったら、もしかするとあの世でもお世話になるものなのか。そのような食えもせぬ得体も知れぬものにこだわって如何すると言うのだ。
まったくヒトどもの気が知れぬ。
我らネコやネズミにはそのようなものは要らぬ。
それと知らずにその様なものに
いや、その様なものがあろう筈はなかろう。
そう思い、
「なに、人間のこの世とネコの世との違いか。
まあ、人間一般はネコの世があるなどとは露ほどにも思ってはおらぬ」
と、そのように、まるでこちらの意を汲んだかのような事を言う。
私は
「つまり、それをどのように解するかだな。
我々人間が言うこの世とは、人間を中心に
さらにその中心には神と言う見張り役、或いは創造者と呼ばれるものがいる。
その世界の中に階層的にイヌやネコ、ネズミや鳥や魚たちが
ネコはその世界で言えば添え物、言い方を変えれば食い物の
「何と、お前らのその世界は見張り役がおらぬと成り立たぬと言うのか。
そ奴がこちらを見ておらねば、このネコの世は存在せぬとまで言うのか」
階層や序列があるのだとすれば、その順序は
「なに、ネコと人間、どちらが偉いのかと言うのか。
果たして真に序列付けが可能なのかどうか。
実のところ難問だ。
さて、何と答えてよいのやら。
確かに先ほどは人間が
それが我が偽らざる本心かと問われれば、決してそうではないだろう。
あまけにエサをやるのは人間で、ネコはもらう側だ」
「ある二つのもののうち、どちらがより偉いと言うのなら、そのように言うものはその論拠を示さねばなるまい。
もう一つ、人間にとっての我ら添え物の存在意義とは一体何だ」
と、論客のネズミが言った。
「うーん」
「ほれ見ろ。
論拠もへったくれもあるまい。
恐らくは、人間一般はこのような事を考えたことがないのだ。
何も考えずに我々に石を投げるばかりだ」
「すると、きっかりと考えもせずに人間はその様に信じ込んでしまっていると言うのか。それは真に本当か」
ネズミがそう言うのに私が応じた。
「序列とは言え、そこは実は単純で、人間とそのほかと言う事なのだろう」
「つまるところ、人間以外は
ネズミは
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