第32話 ニャンの十八の一 木偶と弥勒と鈍らと
あの、
今頃あの
何ともやんごとなき
死んでいる
生きているにしてもそれは小さな水の流れを
何とも不思議、毒でもなければ薬でもない。
色や気があるような無いような、居るのか居らぬのかが良く判らぬ。
曰く言い難く、気に
はじめは件のハトの禍々しい斑にこそ興味があったものの、次第にその奇妙な
いつも独りである。
食べているのかいないのか、寝ているのかいないのか。
即ち生きているのかいないのか。
世界には或いはそう言う奴もいるかも知れず、
意図は不明ながらに寝食する振りをしている風でもあり、一体何がどう楽しいのか、とんと見当がつかぬ。
夜っ引いて
他人がこの者に見えるに
礼節が大切とは判るが、はて、
よくよく見ると、餌以上の物には見えぬハトの野郎も、奴がこちらに顔を向け私と眼を合わせると、
ある
「もし、そこぞのお方。
この
加えて、そなたは書物ばかりを見て何が面白いのか」
重ねて問うのも間が抜けていると、暫くは奴を見ておったが、まったく動かぬ。
こ奴は何処かの誰かがこの者の事を思惟した時にのみそこに色香を漂わす、動く木偶なるものかとも思われた。
「是非教えを
と問うがやはり返事は無い。
ネコであろうと小馬鹿にしているのかとも思い、
「ああ、貴殿が申す如くのその様ではない。
寒くはあろう筈も無く、面白き書物を読むでも貴殿を在らぬもの、なきものと
ただ、貴殿と私との関係を、
ありと在るものの
在って無きが如きのもの、また無き様であるもの。
即ちこれを要するに其れ相対の如くに思い為すべきもの」
その様に仰せられ
何を言っているのか、まるで禅問答のようであったが、よく判らぬ
何も知れず解らぬ相手の言う事を信用できるわけもなく、色々と問うても真正面に応える訳でもない。
其処に無いかも知れぬものを、或いは見えぬようにも在るものを見えているかのように、
其処に在るかのような信用すべき証拠のない
もしやこ奴は
さらに加えて一つ
「夜鳥、即ち
「其れは
身代を支える
本来自身の
然るに彼らは我々の意には映らず、即ち見ることとは相成らぬ。
これを我らが意の内に在りとし、見えるものと為せば、其処にこそものの道理の極まれるを得る事とはなろう」
「それは、我が意の内に」
「
己が意の内とは、其処にこそこの
其処には常ならんとして日と夜とが、即ち光陰が生まれつつ消えては、常ならずして宿りながらにして、また廻り来、行き来したるもの」
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