第16話 ニャンの八の三 ネコ描きとネコ
ネコの私をそのように考えていたのかどうか、去るもの
あらゆるものは事事に
或る時には
遠来、
帰還の度に迎え入れ、
その様にして未だ
「お前は好いな、
ヒトというものはそうも行かぬのが
ただ風の吹く
なるほどヒトとはそういうものか。
「それゆえ何につけ
結局、我我は死ななければ
「ふっ、ふっ、ふにゃっ」
「ふっ、かわいい
俺は絵描きだが、絵が売れぬゆえ俺のこの
本来絵は腹の足しにはならぬ。
従って、仮に俺の自尊を守りつつ画業を続けていくとすれば、
その理由が明らかとならなければ、そしてそれに俺が納得できなければ、
しかしまた一方、絵の売れぬ俺は生きて食うために、常々気の進まぬ儘にお前たち同様、生きものの本分とも言うべき殺生を、狩りをせねばならぬ」
「・・・、うぬ、それはもしやマーケティングではござるまいか。しかもあの
残念にも、私の思念は奴には届かぬ。
「人間一般は殺生という仕事を、いわば生じてしまった罪悪感を骨抜きにすることで日々これを繰り返して生きている
これはお主らには無用の作業だが、従ってそのためには我々は殺生そのものを正当化せねばならぬのだ。
本来我我生きものにとっては殺生こそが即ち生きる道なのだが、我々にとってはそうでなくなって久しい。
ヒトはほかの動物のようには生きられぬのだ」
「・・・」
「本来はどのような事についても、何にせよそのような意味や理由など要らぬ筈のものなのだが、要らぬと分かった上で、自ずと湧き立ってくるそれらの料簡や邪見の欲求を敢えて
然らば我が画力に見切りを付けて坊主ともなり、神仏に縋ろうとも考えたが、
良く分からぬが、なるほど、ヒトとはいかにも面倒で厄介ないきものだ。
「お前は日々殺生を
「・・・」
「俺は只の人間だが、それにしてもお前はまるで俺の前に
個と言えど、名など無し。
俺の足下では多くの小さきものたちが鬼の仲間入りを果たしてきたが、お前も
名は要らぬか、要らぬ長物か。
いや、それは単なる呼び名に過ぎん。
個を際立たせるものでも、区別の為のものでもない。
ところでお前のその瞳に宿る
奴にとって私は名さえもない哀れな野良ネコだが、或いはこの哀れな絵描きよりは多少の自由がありそうだ。
奴の
悩み無し ネコ
ネコの尻尾を ネコ見けるらし
描きつつ 筆の止まらぬ
ネコを
月輪に
深山の月に 仏すむかな
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