第9話 ニャンの五の一 ネコ描きに寄す
故は知らぬがその絵の片隅に
何処からやって来て何処へ行くのかも判らぬ、何時から流れているのかもすらも判じ得ぬ、ゴミのような
ネコ描きの野郎は黙々と、また悠然として筆を執った。
筆はどうやら勝手に動くものらしく、奴は半眼に、
自ずと筆の加減速について行けぬ事も
その
曰く、奴自身が描いているのかどうかは判らぬと。
若い頃は寝食を惜しんで明け暮れ山野の写しに
それにしても今をやり過ごす、奴のこの
陶酔の中の夢幻なりや。
神と悪魔とをして為さしむる
ヒトやネコにとって自然の
それは
世間乃至は人間世界に背を向けつつも、悪魔或いは神にだけは
此の見物の様をそれとなく眺めていると、何処からともなく
斯くの如き画幅に
それは兎も角も、暫くは奴に付き合い宿飯の恵みを有り難く頂戴した。
此の
時に月明かりを
ほかにも幾つか私の寝姿などを習作に残したようである。
言葉少なに私を評価し自分の風景に添えたが、画幅に留め置かれた若き日の私を見るに、悪魔の使徒と言うにはあまりに素っ気なくも颯爽と描かれ、
然りとて長々と
此の頃の闇をこうして
先に述べた奴の画幅に映る遠い昔の
一方漆黒の闇に在る月は厳冬の烈風吹き荒ぶ
それにしても近頃の宵闇は音に
月の闇を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます