第38話 かつての記憶とイベントの終了
イベント開始から3時間30分が経過し、残り時間も残すところ後30分。
俺達のポイントも既に75ポイントを超えており、残すエリアは現在探している大音楽堂のみとなっており、ほぼTOP10入りは間違いない状況だったが……。
「まさか真司の奴、残り時間1時間を残して100ポイントに到達するなんてな……」
「一体どんな手品を使ったんだろうね?」
広い講堂の中で、机や椅子の裏などをチェックしながら、由香里がそう聞いて来たので、思わず肩を竦める。
「十中八九まともなやり方じゃないだろうけど、それもまたアイツらしいというか何というか」
思わずため息を吐き、頭をかきながらそう漏らす。
真司は見た目に反して授業は真面目に受けるし、他人に迷惑をかけるような事はしないが、時折しょうも無いいたずらをする癖がある事を最近知った。
――具体的には、部屋備え付けの冷蔵庫に糞不味い栄養ドリンクを置いてすすめてくるとかその程度のものだが
「でも、それもまたいい傾向なのかも知れませんね」
教壇の方を確認していた詩音がポソリとそんな事を言ったので、俺は思わず首を捻りながら問い返す。
「詩音さん的には、真司がしょうもない事をした方が良いと思うってこと?」
今ひとつ詩音の言った言葉の意味が理解できず聞き返すと、はにかみながら頷き返された。
「はい。あくまで私見でしかありませんが、中学時代の浅野さんは今みたいに話易い様な方には見えませんでしたから」
そんな風に詩音から言われて、思わず俺と由香里は一緒に首をかしげた。
確かに真司は、この学校で見かける様な生真面目なタイプの連中とは違うかもしれないが……。
今の真司を見ていると、話かけ辛いという真司を想像が全く出来なかった。
「そっか……まぁ中学時代の真司がどんな奴だったとしても、今のアイツが友人であるのには変わりないかな」
そう言って肩をすくめると、詩音が俺を見て小さく笑った。
「そんな風に人を色眼鏡で見ない所、私は素敵だと思いますよ」
「えっ?」
思ってもみなかったことをサラッと言われたので問い返すと、詩音が咳払いを一つした。
「えーっと、私はあっちの部屋を探して来ますね」
そう言って詩音が俺の方を見る事もなく、駆け足でこの場から去って行き……俺はその背中を呆然としながら眺めた。
立ち去り際に見えた、長い髪の隙間から見えた詩音の横顔は僅かに赤くなっていた気がする。
「むー……海人くん? 詩音ちゃんに見惚れちゃったのかな?」
そんな事を言いながらプスっと右頬を指さされたので、由香里の方を見てみると少しだけまなじりが上がっていた。
「いやっ、見惚れては……あんまりないぞ?」
「……もうっ、海人君なんて知らない!」
「えっ、いや……なんか悪い」
そう言って謝るも由香里はそっぽを向いていたが――長年の付き合いから、小刻みに震える肩が笑いを堪えるよう様な気がしてならなかった。
「由香里? お前もしかして笑ってる?」
「ふふっ、別に海人くんの情けない顔を見て笑ってなんかないよー」
「ちょっ、待てよ。情けない顔なんてしてないだろ!」
「さーて、どうだろうなー? 詩音ちゃーん! 2人で一緒にそっちで探そー」
「あっ、待て由香里!」
はぐらかしながら、駆け足で去っていく由香里を引き止めようと手を伸ばすも、すり抜ける様に走り去ってしまった。
「ったく……取り敢えず俺はこの部屋でも探すか」
2人が消えた広い講堂でそう呟くと、取り敢えず宝探しを再開する事にした。
――結局、この後俺たちは更にポイントを86点まで伸ばしたが、残念ながらそこでイベント終了のアラートが校内中に響き渡った
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昨日軽く触れさせて頂きましたが、本作「早起きは人生のトク!」のラジオ朗読が決定しました。
以下が、具体的な放送予定等です。
■ラジオ局:MBSラジオ
■番組名:寺島惇太と三澤紗千香の小説家になろうnavi-2nd book-
■放送開始日:2021/1/10(日) 17:10~17:40 (1月31日までの4週間予定)
関西の方はご存じかもしれませんが、MBSラジオ様は大阪に本社が置かれているAM1179kHz、FM90.6MHzのラジオ局です。
なので、大阪・京都近辺にお住まいの方はラジオやラジオアプリ「radiko」から御視聴いただけます。
ただ、上記箇所以外にお住みの方は「radiko」のプレミアム会員になるか、更新日不明ですが(大体OAから1週間以内位?)「Youtube」にてご視聴いただけます。
Youtubeで動画投稿されましたら、私の方から改めて今回の様に案内させて頂きます。
パーソナリティの寺島様は某バンドアニメ等で、三澤様は某アイドルアニメ等でご存じの方も居るかと思いますが、ラジオ内でも素晴らしいトークと演技をされて居ますので是非聞いて頂けると幸いです。
※台本に関しては恐れながら、私が監修させて頂きました。
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