第37話 イベント途中経過
イベント開始から、約1時間20分が経過した。
俺たちの現時点でのポイントは、30ポイント。
高等部での探索を終え、大図書館の宝箱も残すところ後1個となっていたが、その最後の1個が中々見つからない。
これ以上時間がかかると完全クリアが厳しくなって来るから、効率を考えて他の場所を探すべきだろうか……そう考えていたところで、由香里と詩音が、俺の探していた部屋へと飛び込んできた。
「海斗君! こっちに最後の一個あったよ!」
そう由香里に呼ばれて、俺は自分の探していた部屋を出て、由香里達が手招きしている部屋へと移動する。
「一体どこに有ったんだ? 俺も一回この部屋を探したけど見つからなかったんだが」
「海斗くんが見つけられ無かったのも無理ないよ、私も偶然見つけたんだけど……この本棚を押すとっ」
由香里が少し嬉しそうな顔をしながら、車輪の付いた本棚に力を込めて移動させると――そこに、宝箱が有るのをスマホ越しに確認できた。
「まさか、こんな所に設置されているなんて思いもしませんよね」
詩音が苦笑いしながらそう言うと、俺も思わずうなってしまう。
「これは、区画の隅から隅まで調べてみないと見つからないな……って、これ1個だけで普通の宝箱の10倍――10ポイントもあるのか!」
画面に出てきたポイントを見て、思わず目を見開いてしまう。
これなら、足止めされた以上の価値は十分にあっただろう。
残り時間は後3時間弱。
高等部の校舎と、丁度今大図書館の探索を終えたので、残すところは後3エリア。
現在のペースで探せれば、移動時間を含めても100ポイントに到達できる可能性は、未だ十分に残っている。
加えて、先ほどのポイント加算で一気に俺達全員トップ10へと食い込む事が出来たが……。
「相変わらず、真司のやつは1人だけぶっちぎってるな」
スマホのランキング画面を見て思わずそう呟くと、由香里が俺の携帯を覗き込みながら首を捻った。
「一体どうやって、1人でこんなに早くポイント集めてるんだろうね?」
真司の奴は2位と10ポイント以上の差をつけて、現在56ポイント。
正直、今のところ3人でいい調子で探せているだけあり、点数を引き離されているのは、結構悔しい。
「なにやら自信が有ったのと関係しているのだと思われますが……私にも、皆目見当がつきません」
詩音も由香里と一緒に首を捻り、俺も思わず一緒に考え込みそうになって……中断する。
今やるべきは全力でイベントを楽しむ事――なら、次のポイントへ移動するべきだろう。
「俺から振った話で悪いけど、とりあえず俺達は真司のポイントの事より自分たちの出来る事をしようか」
そう提案すると、2人が揃って頷いてくれた。
あの真司の自信のあり様から考えて、何かしらの事前準備をしていただろうことは容易に想像できる。
もしそうなら、幾ら俺達が今頭を悩ませた所で、同じことが出来るわけでは無いだろう。
そんな推測を巡らせつつ、大図書館から次の目的地である部活棟へと移動していると、見知った面々――陸上部の同級生たち3人が前方から歩いて来るのが見えた。
「おっ、そこに居るのは海斗達じゃん! どうだ? ポイント集まってる?」
「田原達か。まぁボチボチかな」
そう言いながら、少し自慢げにスマホのランキング画面を見せると、目を見開いた。
「うえっ、マジか! さっきまで10位に入ってたのに抜かれてる! ……って、そう言えば今日は浅野と一緒じゃないんだな?」
不思議そうに田原が尋ねて来て、俺は肩をすくめながら苦笑した。
「まぁな。イベント直前に、真司が勝負だって言ってきてバラバラに探す事になったんだよ」
そう説明すると、田原が納得した風な顔をする。
「なるほどな。どおりで、海斗達と浅野のポイントに開きが有るわけだ……っと、こんな話してる間にも他の連中のポイントが増えてるな。俺たちは急ぐから、またな!」
「ああ、またな」
手を振りながら陸上部らしく結構な速度で走り去っていく田原達は、俺達が来た方へと向かって行った……恐らく、これから図書館へと向かうのだろう。
「私達も残りの時間で浅野さんに追いつけるように、頑張りましょう」
「じゃあ、私達も皆で駆け足! あっ、海人君は本気で走っちゃダメだからね!」
そんな風に言いながら2人が笑顔で駆け出すのを見て、俺も気持ちゆっくり目に走り始めた。
――――――――――――――――――
本作品が、とあるラジオで朗読される事が決まりました。
全ては、最近不定期更新にも関わらず読んで下さっていただいている読者様のお陰です。
具体的なラジオ名、日程などは明日改めて紹介させて頂きます。
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