第35話 生徒会イベント
月末の土曜日、生徒会イベントの当日、俺達一年生は第1体育館に集められていた。
そこには多くの1年生達――おおよそ8割程の生徒が集まっており、皆落ち着きがなくなっている事から、生徒会のイベントを楽しみにしてる様子が見て取れる。
「特に強制参加ではないって話だったけど、結構な数の生徒が出てるんだな?」
「あぁ、正直俺も驚いてる。まぁそれもこれも現生徒会長の人気故だろうな」
真司がそう言いながら肩をすくめた所で、背後から声をかけられた。
「あっ海人君、浅野君おはよう!」
「海人さん、浅野さんおはようございます」
「由香里、詩音さんおはよう」
「2人とも、おはようさん」
振り返り、俺達が返事した先には、詩音と由香里の2人が笑顔で立っていた。
だが、笑顔だった詩音の顔がすぐに不安げなものになる。
「えーっと、どうかした? 詩音さん」
「……渚さんがまた何かやらかさないか心配で」
そう呟いたのを聞いて、思わず納得してしまう。
――確かにあの人は何やらかすか分からない所ありそうだしな……
そんなことを考えていたところで、体育館の照明が突然パッと切れたかと思うと、壇上の1点にスポットライトが当てられた。
照明の先に立つのは1人の女生徒――考えるまでもなく、生徒会長だ。
「ヤッホー、皆元気してるー?」
そう言いながら耳元に手を当て、大きな仕草でこちらにマイクを向けてくる姿は、まるでアイドルか何かのようだ。
「元気でーす!」
何人かの生徒が近くで大声を上げたので、ノリの良い生徒が追随して返事をしていく……。
「はーい、1年生に紛れて返事してくれた運営係の皆、ありがとうねー」
若干投げやりな口調で生徒会長がそう言うと、ドッと笑いが起こり、思わず俺も笑ってしまう。
「いやぁ、新入生の皆も入学して1ヶ月経って、そろそろ慣れて来た頃だと思うけど、どんな感じかな?」
再び俺たちの方へと会長がマイクを向けてくると、さっきより明らかに多くの生徒が返事を返す。
「うんうん、元気な返事をありがとう。私もこの学園大好きだから、皆が気に入ってくれてたら凄く嬉しいよ。さて、今日やるイベントなんだけど……っとその前に」
と一旦会長が話を区切った所で、落ちていた体育館の照明がパラパラとつき始める。
「事前にスマホ持って来るようにお願いしていたけど、今日スマホ持って来てないよーって子か、そもそも持ってないよーって子が居たら手をあげてくれる? 後、バッテリーが残り少ない子とかも」
そう会長に言われて数人が手を挙げると、その生徒達に運営係と腕章を付けた生徒が近づいていって、端末やモバイルバッテリーを渡していく。
念のため、自分のは大丈夫か確認してみたが、充電は十分にありそうだ。
「もし、やっぱり無かったって子が居たら運営の誰かを話かけてねー。それで、話を戻すけど今回のイベント内容はっ……」
バッと会長が手を振ると同時にドラムロールが始まり、その間に大きく息を吸う音がマイクから聞こえ――ドラムロールが止まると口を大きく開いた。
「校内全部の財宝を探し出せ! 財宝王に俺はなる! ですっ」
そう言った瞬間、バーンと会長の後ろのスクリーンに派手なフォントの文字が浮かび上がるが……周りからはポカーンとした空気を感じる。
かく言う俺も理解が追いつかず、壇上でポーズを決めてる生徒会長をジッと見る。
「……あっれー、もっと盛り上がると思ったんだけどなぁ。話が違うよぉ、書記ちゃん」
そう言って会長が舞台袖に居る眼鏡をかけた女生徒――書記と思われる先輩に苦言を呈すと、すごい勢いで頭を下げていた。
「わっ、ごめん、ごめん。そんな謝らないで! 冗談だよ。えー……それじゃあ気を取り直して、ルール説明をしていくよ!」
そう言ってプロジェクターの図解込みで説明されたのは、要約すれば校内サイトからダウンロードしたAR(拡張現実)カメラを使った宝探しゲーム。
お宝の近くを通ると、アプリが音声を鳴らすので、専用のカメラアプリを通して見るとお宝がゲットできると言う内容。
「制限時間は本日の17時まで。お宝の数は100個以上有って、それぞれバラバラの点数が振られてるよ。後リアルタイムでランキングが更新されていって、最終的にTOP10に入ると購買や食堂で使える景品が貰えるから、頑張って探してみてね」
その後、入場禁止の区画や具体的な景品の内容が説明されていった。
――と言うか、1位の食券3万円分と会長の直筆サインと言われて、サインの方が盛り上がっていた辺りこの学校ならではだなと思う
「それじゃあ、ゲーム開始のカウントダウン行くよー! 10秒前!」
9、8、7と体育館内に居る全員が声を張り上げる中、真司がニヤリとした顔をしながら俺の脇腹を突いてくる。
「なぁ海人、今回のイベントの得点で勝負しないか?」
「別に良いけど、俺は由香里や詩音と一緒にやるぞ?」
そう尋ねるが、真司はやけに自信ありげに頷いた。
「全然いいぜ、そいじゃ負けた方が明日の昼飯奢りな」
ニシシと笑いながら、妙に自信ありげな真司を不思議に思っていると、既にカウントが5秒を切っていた。
「3秒前、2、1、スタート!!」
会長が声を上げると同時、体育館の扉が開かれ、一斉に新入生達が飛び出していった。
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