第9話『あきらめるな!』
パリー・ホッタと賢者の石・9『あきらめるな!』
大橋むつお
時 ある日
所 とある住宅街
登場人物……女2(パリーを男にかえても可)
パリー・ホッタ 魔女学校の女生徒
とりあえずコギャル風の少女
少女: どうだ……?
パリー: ……すみません。やっぱり……
少女: あきらめるな! もう一度やってみよう。今度はアッコ風にやってみなさい。
パリー: 和田アキコ? えと……オリャアアアア!!
少女: バカ、ここでスゴミをきかせてどうする。秘密のアッコちゃんにきまってるだろ! 一年の一学期に習っただろうが。
パリー: はい、いきます! テクマクマヤコン、テクマクマヤコン……
少女: バカ、それは化ける時だろ。元にもどる時の呪文だ!
パリー: は、はい。ええと……ラミパス、ラミパス、ルルルルル……
少女: 元のロックウェルにも~どれ……!
間
少女: どうだ……?
パリー: やっぱり駄目です……(しおれる)
少女: 駄目かぁ……(落ち込む)
パリー: 落ち込まないでくださいよ、先生。
少女: まちがうな。オホン、こうなっちゃいかんという見本を示したんだ。これで永久に魔法が使えないときまったわけじゃない。
パリー: ……
少女: 魔法とは、とても精神的な技術だ。超一流の芸術と言ってもいいだろう。もし、君の、君にも気づかない心のどこかで、魔法や魔法を使う自分に迷いや疑問があるとしたら、魔法は使えない。しかし、それは、超一流の芸術家によくあるスランプのようなものだ。いつか迷いが解けたら、また使えるようになるだろう。
パリー: そんな時がくるんでしょうか?
少女: くるさ……見てごらん、この賢者の石はレプリカ、よくできた複製品だ、端っこの方にメイドインジャパンと書いてある。
パリー: じゃ、本物は?
少女: たぶん、もう存在しないんだろう。しかし、迷いが解ければ、こんなものがなくても、魔力は自然にもどってくる。
パリー: 本当でしょうか?
少女: 本当だとも、しかし……
パリー: しかし?
少女: パリーの迷いが底なしならば、二度と魔力はもどってこないだろう。
パリー: ……
少女: しかし、それはそれでいいじゃないか。新しい人生を見つければいい。勉強もよし、遊びも仕事も、恋もよし。そこから始めればいい。わしなんぞ、ライセンスをたよりに魔法を切り売りしていくしかないイマイチの魔法使いだ。成功した人生に見えるかもしれんが、これは、実りのない淀んだ人生だ。もう八百……いや千年だったかな……生きていると、もうこの淀みは流れようがない。ブツブツとメタンガスのようにグチをこぼすだけさ。パリー、淀んだ安定より、不安定でもいい、前進し、流れ続けることが大事だぞ。
パリー: はい……
少女: うつむくんじゃないパリー! 胸を張り、あごをあげ、地平の彼方まで見渡すんだ、そして考えろ、見落としはないか、次の一歩をどこに降ろしたらいいかを!
パリー: ……先生。「どこもでもドア」で、もう一度わたしを校長室へ連れていってください。
少女: ひげもぐらの部屋に?
パリー: あのパソコンをもう一度見てみたいんです。賢者の石のデータ、まだピリオドのあるところまで読んでいないんです。無駄かもしれませんが、そこから始めてみたいんです。
少女: ……よし、行ってみるか!
パリー: はい!
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