第8話『……今度は本物だ』


パリー・ホッタと賢者の石・8『……今度は本物だ』


大橋むつお


時     ある日

所     とある住宅街

登場人物……女2(パリーを男にかえても可)  


           パリー・ホッタ 魔女学校の女生徒

          とりあえずコギャル風の少女






 先ほどとは違う電子音して暗転。明るくなると大金庫の中。




パリー: ……今度は本物だ、いろんな宝物が……ソロモン王の指輪…… 


少女:フェロモン王の栓抜き……


パリー: バチカン美術館のラオコーン……

少女: シリコーン、クレオパトラの鼻の……

パリー: ジョンレノンのイマジンのサイン入楽譜……

少女: なわのれんのヒマ人のサイン入サイフ……

パリー: そっち側は変なお宝ばっかりですね。

少女: じゃ、かわろう……

パリー: クイーン・エリザベスが被った王冠……全面豪華!

少女: クイーン・エリザベスが読んだ朝刊……全面広告!

パリー: 阿倍清明のお番茶……

少女: 日本生命のおばちゃん……

パリー: やっぱ、先生おかしいですよ。

少女: そうかい。お……パリー・ホッタの魔法ビン!(パリーが肩から下げたポットを指す)

パリー: え……ああ、君のお茶が飲みたいっておっしゃればいいのに(お茶をついでやる)

少女: すまんなあ。でも、なんかギャグとばさないとつまんないだろう。

パリー: あ、国宝の魔法の杖……

少女: 貸し出し中になってんな。

パリー: あ、貸し出し期限がとっくに過ぎてる。誰が借りてるんだろう。

少女: 過ぎてるって言やあ、我々も通り過ぎてしまったんじゃないかな?

パリー: え、どこを?

少女: 何をさがしにきたんだよな、ここに……?

パリー: 何をさがしに……?

少女: いかん、入口にもどろう! 早く!(パリーの手をひいて入口までもどる)……思い出したかい、さがしものは?

パリー: ……思い出した! 賢者の石です! でも、どうして忘れてしまったんでしょう?

少女: 魔法がかかっているんだよ、ここのお宝には……いろいろ気をとられているうちに、本来の目的を忘れるようにできているんだ。いいかい、今度は他のものには目をくれないように、まっすぐ前だけを見ていくんだ……いいか、走るぞ!

パリー: はい!


   二人、目を真正面に向けて駆け出す。いくつか角を曲がって、賢者の石を見つける。


少女: あった! 見つけた! 賢者の石だ!

パリー: これが……!?

少女: おっと、それに手を触れる前に念をおしておく。たとえその石に効き目がなくても、けっして落胆しないこと。駄目なら駄目で、きっと別の道がひらける。そう信じること。約束できるか?

パリー: はい……行きます!

少女: うむ……と、その前に……

パリー: ズコ(ずっこける)

少女: すまんが、もし、魔力がもどったら、真っ先にこのわしを元の姿にもどしてくれんか。このなりでファグワーツに行くのはきまりが悪い。

パリー: はい……では!(石を手にし、高くかかげる)

少女: ……どうだ?

パリー: なにか全身に力がみなぎってきたような……!

少女: 試してみるか?

パリー: 全知全能の魔王の名にかけて、再び我にその力を与えたまえ。そして、ロックウェル先生を元のお姿にもどしたまえ!!

少女: へーーーーーーーーんしん……!!


   間、二人とも目をつぶっている。

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