第6話『もつべきものは友だちだ』
パリー・ホッタと賢者の石・6『もつべきものは友だちだ』
大橋むつお
時 ある日
所 とある住宅街
登場人物……女2(パリーを男にかえても可)
パリー・ホッタ 魔女学校の女生徒
とりあえずコギャル風の少女
空から宅配便が降ってくる。
少女: あ、青色耳なしネコからだ!
パリー: 青色耳なしネコ!?
少女: ああ、もつべきものは友だちだ。
パリー: 先生、それってドラ……のことですか!?
少女: 名前は言えんが、ドラやきがとりもつ縁でな……やったア! 異次元ポケットのスペアだ! (彼方にむかって)ありがとうドラ……いや、青色耳なしネコく―ん!
パリー: あ、手紙がついてます。
少女: なになに……(友人の声で)「こんにちは、ぼく青色耳なしネコです。けして青ダヌキではありません。御依頼のあった道具、いちいち荷づくりしては大変なので、スペアのポケットごと送ります。フォグワーツまでは魔法が使えないのですから、ひげもぐら校長のいやがらせや妨害があるかもしれません。お役にたてればさいわいです。なお、ポケットの中の道具は種類は多いですが、その分おためし品や体験版がほとんどです。使用回数や機能に制限がありますので御注意ください。おちついたら、またいっしょにドラ焼を食べにいきましょう。ウフフフ、二〇××年、イマイッチ・ロックウェル先生へ、青色耳なしネコ。」
パリー: すごい、ドラ……いえ、青色耳なしネコって字が書けるんですね。でもあの丸い手でどうやってペンを持つんだろう?
少女: そりゃあ、二十二世紀のロボットだからね。
パリー: ひげもぐらの妨害ってありそうなんですか?
少女: わしは、妨害されるほど値打ちのある魔法使いじゃないがね。それでも妨害はしてくるだろう、奴は反対されるだけで、相手の存在が許せなくなる心のせまい男だ。
パリー: ひげもぐらの何に反対されていたんですか?
少女: すべて! しかし、わしも自他共に認める事なかれ主義のイマイチ先生じゃ、九十九パーセントは我慢した、ニッコリと微笑さえうかべてな。しかし、最後の一つだけは許せん!
パリー: あ、勤務評定の実施!
少女: うんにゃ。
パリー: 魔法の国の歌と旗の強制!
少女: うんにゃ。
パリー: 食堂のカレーライスの十円値上げ!
少女: あれは二十円あげろと言うとる。ただし肉を二十グラム増量したうえだがな。
パリー: それじゃあ……
少女: わからんか?わしが奴の何に反対しておるか?
パリー: ……はい。
少女: 「三べんまわってワン!」じゃ
パリー: え……?
少女: この春から奴が実施しようとしとる、新しい挨拶のスタイル「三べんまわってワン!」じゃ。
パリー: ああ、ピロティーの掲示板に大きなポスターが貼ってある、あれですか?「スリーターン・エンド・ワンバウワウ」 あれ、評判ですよ。
少女: なんだと?
パリー: だって、かわいいでしょ。しゃっちょこばった起立・礼よりソフトだし、土下座しろってわけでもなし。頭下げたり、腰まげたりしないところがいいってみんな言ってますよ。両手を胸のところへもってきて、ぐるぐる回って……ワン! 自治会じゃ、この「ワン」というところで首を傾げるって修正案を考えてるみたいなんですが、右に傾げるか左に傾げるかで対立が続いているそうです。
少女: あのなあ……
パリー: ワン!……やっぱ右かなあ、ね、先生はどっちがかわいいと……あ、先生は反対なんですね。
少女: かわいいだけでものごとをかたづけちゃいかん。ものごとの本質を見なさい、「三べん回ってワン!」が、どれだけいいかげんで人を馬鹿にしたものか。我々はけして犬ではないんだぞ!
パリー: ……それって、犬を差別していませんか?
少女: なに?
パリー: 有史以来、犬は人間にとって最上のパートナーです。そのパートナーの挨拶をとりいれることを否定するのは、人として傲慢ではありませんか?
少女: じゃ、なにか、「お手」とか「おあずけ」とかやるのかい? 「ハウス!」と指をさされたらしっぽをまいて家に帰るのかい? これはな、犬にえさを「やる」と言うのを、えさを「あげる」という、ささやかな文法上の間違いを許したことに遠因があると思うぞ。
パリー: それは……
少女: 君は多少もののわかる子のようだから……こう言おう、「三べんまわってワン!」をやることで、ゆるみはじめた学校がひきしまると思うのかい? 君がなぜ魔法がつかえなくなったのかその理由がわかるのか? そしてパリー、君の失った魔力がもどってくると言うのか?
パリー: はい……(落ち込む)
少女: すまん、イマイチともあろう者が、ムキになりすぎたようだな……そうだ、いい考えがうかんだ! このポケットの道具で魔法博物館にいこう。「どこもでもドア」を使えばあっという間だ(スペアポケットに手をいれる)おっと、ここでは人目につく、家の裏側へいこう。
パリー: は、はい!
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