第5話『賢者の石が必要なんです!』


パリー・ホッタと賢者の石:5『賢者の石が必要なんです!』



大橋むつお


時     ある日

所     とある住宅街

登場人物……女2(パリーを男にかえても可)  


           パリー・ホッタ 魔女学校の女生徒

          とりあえずコギャル風の少女



パリー: 教えてください。わたしにはどうしても、あれが、賢者の石が必要なんです!

少女: どういうことかな?

パリー: 調べたんです、図書室の本を全部ひっくりかえして。どうやったら失われた魔力がもどってくるのか!? 最後はステルスマントをかぶって閲覧禁止の本まで調べました。

少女: その閲覧禁止の本に賢者の石とでも書いてあったのかい。それなら駄目だ、みんな賢者の石がくだかれる前に書かれた本だ。

パリー: ちがうんです。二〇××年度版の魔法大全に、こう書いてあったんです。「校内に置ける魔力の管理は校長が行い、その情報は、魔法政府のコンピューターに集約され、その端末は校長室のみに設置されるものとする」

少女: 校長の権限は強くなる一方だからなあ。

パリー: それって悪いことですか?

少女: 必ずしもそうとは言えんが、ひげもぐらが校長でいるかぎり最悪だろうな。

パリー: わたし、ひげもぐらの部屋に忍びこんだんです。

少女: え、校長室に?

パリー: そして、端末のパソコンを開いてみたんです……

少女: やったぁ……

パリー: 「失われた魔力をとりもどすには」そう打ちこむと……パリー・ホッタの失われた魔力をとりもどすのに必要なものは賢者の石……」と、ディスプレーに……そこまで確認すると、ひげもぐらがもどってくる気配がしたので、あわててスイッチを切って先生のところへ来たんです。

少女: そうだったのか……(パリーに背をむけて立ち上がる)

パリー: やっぱり、わたしには魔力をとりもどす資格はありませんか?

少女: そうじゃない。

パリー: それとも、賢者の石は……

少女: 賢者の石はある……

パリー: やっぱり……

少女: 今はもう、ごく一部の者にしかその存在を知られてはおらん。

パリー: それほどすごい石なんですね。

少女: あれはその名の如く文化財だ、本当に効き目があるのかどうか、それを知るものはだれもおらん。

パリー: でも、ひげもぐらのパソコンにははっきりと……

少女: たとえ効き目があるとしても、今はとても手が出せん。

パリー: どこにあるんですか?

少女: 魔法博物館地下百階の大金庫の中、百の呪いと百の魔法に守られて眠っている。いつものわしの力をもってしてもたどりつけるかどうか。まして魔力を失った今のわしではとてもなあ……

パリー: だめですか?

少女: すまんな。

パリー: ……


 


  やや近く暴走族の爆音




少女: またバカが走りはじめた……思うんだよ。つくづく魔力の無力さを。

パリー: 魔法さえつかえれば、あんな暴走族の百や二百、いつでもカボチャにしてやります。

少女: だから無力だと言うんだ。カボチャにかえて何の解決になる。それではカボチャの数だけ、この地上から人間を抹殺したことにしかならんだろう。

パリー: え……?

少女: 奴らを人間のままでバカをやめさせなければ解決にならん……魔法ばかりやっていると、そういうところの感受性が鈍くなる。

パリー: 放っときゃいいんです、ああいうバカは!

少女: おや、またなにかやってきた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る