第4話『まあ、そこに掛けたまえ』


パリー・ホッタと賢者の石・4『まあ、そこに掛けたまえ』



大橋むつお



時     ある日

所     とある住宅街

登場人物……女2(パリーを男にかえても可)  


           パリー・ホッタ 魔女学校の女生徒

          とりあえずコギャル風の少女



少女: まあ、そこに掛けたまえ。これを飲むといい、百味ボーンズを溶かしたお茶だ。心配せんでも鼻くそ味とか耳くそ味じゃないはずだ(飲む)うん、初恋の味だ。

パリー: ……(飲む)

少女: どうだい?

パリー: 初恋の……でも失恋味です。

少女: こりゃ、重症だな。

パリー: はい……先生は、どうしてそんな一昔前のコギャルの姿に?

少女: 底意地の悪い校長のせいさ。

パリー: ひげもぐらの?

少女: ああ、実は、学校をおはらい箱になっちまってな。

パリー: ひげも……校長先生がクビにしたんですか?

少女: 名目は転勤だけどな、ファグワーツへ。

パリー: ファグワーツ……魔法界の名門校。大栄転じゃないですか!

少女: 本人が望んでおればな。ひげもぐらはわしに転勤を申し渡すと同時に、ライセンスをとりあげ、ファグワーツに送ってしまいおった。ファグワーツに着くまで、わしは魔法がつかえん。

パリー: で……そのお姿は?

少女: 化学(ばけがく)の時間に話が脱線してな。非模範的な人間の姿に化けて見せてやったんだ。学校や、ここの近所にも暴走族が出始めたり、援助交際のまねごとに興味を示す女生徒がいたりするからな。

パリー: 箒にオートバイの爆音をおぼえさせて喜んでる男の子もいますからね。

少女: そのとおり。そして、この姿に化けたまんまでひげもぐらに呼びだされ、転勤を申し渡されちまった。

パリー: その時、ライセンスも?

少女: 一瞬遅ければ、奴を本物のひげもぐらにしてやれたんだがな……おまえさんは、いつ魔力を失ったんだ?

パリー: えと……夏のおわりごろから魔法がかかりにくくなって、先週の薬学の時間、笑い薬の調合ができなくなってからは、さっぱり……

少女: 薬学……ジェシカ婆さんの時間だな。

パリー: その時は、隣の席のシンディー、ウォールをくすぐって……あの子、クラス一番のゲラだから、なんとかごまかせたけど、今週隣に座るのはパティー・デューク・ジュニアなんです。

少女: ああ、あの入学以来一度も笑ったことのない……

パリー: いいえ、生まれてこのかた一度も笑ったことのない……

少女: なんと……

パリー: 先生におうかがいしたいことがあるんです。

少女: わたしで間にあうことなら。

パリー: 賢者の石をご存知ですか?

少女: 魔界重要文化財に指定されてる……あれかい?

パリー: そう、あれです!

少女: たしか、ファグワーツの校長が災いを恐れて粉々にくだいたはずだが。

パリー: 本当は、まだどこかにあるんじゃないんですか!?

少女: どうして?

パリー: わたし、あれが必要なんです!

少女: ……なんだと?

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