第83話 ダンジョンにて

 心霊体のマヤは自分の透明感のある金色の姿を見てそれほど驚いてない状態だった。


「うんしょっ……これはたぶん私のにぃにぃへの心配が極限状態に達したことにより起きた新能力の発現……名前を付けるとしたら【金色の心精霊醒体アダマンテス・コルスピニスィディア】と名付けたほうがいいですね」


 マヤがなんか不思議ちゃんなというか中二病みたいな言い方をする。


 魔刀がマヤに言い放つ。


「お前を助けるために俺は苦労しているというのに……昔からマヤはそんな性格だったな」


「お兄はがんこだよね昔からそういうところはいっさい変わらないんじゃね~うさにゃんもそう思う?」


 そこにはうさにゃんもいた。


 同じく心霊体の姿で。



 うさにゃんはうさぎのような猫のようなぬいぐるみの姿でそこにいた。


「私はこのようなお姿になるとは予想外です。マヤ様は計り知れないお方ですね」


「褒めても何も出ないよ」


 とまあそんな感じで進む。


 心霊体の状態では本体である人間の状態とは違う点があるようだ。


 まずは人間の時みたいに飲み食いや排せつ行為がいらない。


 その二、壁とかをすり抜けることができる。


 物理攻撃が効かないなどだ。


 しかも心霊体だと魔力が無尽蔵にある状態というか周りから魔力を吸い取るようだ。


 なのでマヤの使える超能力と魔術がかなり使える。


 マヤは魔術の才能がないわけではない。


 むしろ魔術の中でも出力が必要な魔術の中でも器用な魔術は苦手だが、単純な魔術は得意だ。


 火の魔術なら炎を生み出して放つ魔術は得意だし、炎の形を変えて剣にする程度は出来る。


 だが炎を複数体操り、拡散させて放つのは苦手だ。


 できないわけではないが。


 といってもマヤは天才タイプなので無意識に魔術を発動できる。


 超能力のサイコキネシスを意識せずに使えるように、魔術も自由自在にできる。


 だが苦手な魔術もある。


 強化系の魔術や呪いなどのデバフ系やバフ系の能力値を強化する系統はあまり使えない。


 だが自然系の魔術などはかなり使える。


 試しにモンスター相手に使えるかを見せてくれた。


 452階層の鬼竜に対して風系統の魔術見せてくれた。


 風の刃で敵を複雑に切り刻んだ。


 


 鬼竜はAランクのモンスターでかなりの強敵だ。

 だが風の魔術の前では全てを破壊した。


 鬼竜がなすすべもなく蹂躙された。


 しかも相手からマナを吸収できるので敵はさらに弱る。

 

 まさに無敵。


 もはや兄である魔刀よりも実力は上だ。


 化け物並みの実力がある妹だ。


 しかも心霊体では物理攻撃が効かないうえに、魔術が使い放題だ。


 超能力のほうもかなりヤバい力がある。


 敵は立ってられなくなり、吹っ飛んで吹っ飛んで壁に激突する。


 稲荷仮面である拓郎ですらこの状態のマヤに勝てるのだろうかと思うぐらいだ。


 サンダーは私は味方でよかったと呟いていた。


 

 だが秋葉原ダンジョンを500階層まで来たところで流石に違った。


 Sランクのボスが待ち構えていた。


 敵は魔王系統のボス。


 魔王ゴーマが待ち構えていた。


「死ぬがよい」


 魔王ゴーマが炎魔法最終系統ベガフレアを放つ。


 稲荷仮面は咄嗟に熊氷を作り出して無効化した。


 だが次が来る。


 稲荷仮面は炎は効かないと判断して、物理攻撃で勝負を決めようとした。


「アグニス!! マリン!! アルマ!! スラン!! マイカ!!」


 一瞬で契約の武器達と従魔のスライムたちが現れる。


「これが稲荷お兄さんの契約者達……見事な者なのだ」


「凄い……稲荷仮面さんに匹敵する実力を備えている…………一人一人が壊滅的な力を備えている……恐ろしい人だ」


「お前……一体何者なんだ? こんなむちゃくちゃな実力の仲間を持っているなんて……」


「まあ色々あったんだよ……気にするな」


 魔王ゴーマが極大魔法を解き放った。


 闇の重圧が稲荷仮面たちを蹂躙しようとした。


 だがマリンが対抗魔法として、水の爆発魔法を放ち無効化した。


 アグニスが一瞬で隙をついて近づいて、ゴーマの右腕を切り落とした。


 アルマが禁術の【精神を蝕む言葉】を放ち、ゴーマの精神を蝕んだ。


 スランが酸弾を放ち胸に風穴を開ける。


 マイカが人間形態で鞭を奮い、ゴーマに片膝をつけさした。


 そして命令を行い、服従させた。


 ゴーマをどうするか考えた。


 そうだ従魔にしてしまおう。

 

 すると魔王ゴーマが従魔になると魔族だが、人間に近い形態になる。


 なんかビジュアル系のようなイケメンになった。


 敵の時は醜いゴブリンと鬼とインプと悪魔を混ぜたような厳つい顔だったのに。


 髪色は銀髪で眼の色は金色だ。


「主、稲荷仮面様…………あなた様に使えることになったゴーマです……あなた様の腕となり、足となり、すべて心をあなた様に捧げます」


「まあそんなにかしこまらなくていいから……お前はどのようなことが出来るんだ?」


「配下を……Dランク以下のモンスターを配下として使役出来ます。CランクやBランクも条件次第では配下として一時的に仲間に出来ます」


「それは凄いな。かなり使える」


 稲荷仮面は不敵な笑みを浮かべる。


「稲荷お兄ちゃんは魔王にでもなるつもりなんですか!?」


「稲荷仮面さんやめてください! そんなこと!!」


「てめえが俺は怖い何考えているのかわからないところだ」


 稲荷仮面は冗談交じりにオーバーに答えた。


「この後魔刀君を守るために戦力がいるからな。まああんましオーバーに考えるな。たかが従魔だよ。万能ってわけじゃねえから」


「俺を守る?」


「真犯人により魔刀君ははめられたようじゃないか」


 稲荷仮面は号外の新聞紙を取り出した。


 そこにはテログループの主犯は魔刀と書かれていた。

 顔写真も添えられて。


「ちょっとちょっと!? 少年法とかどうなってんですかこの国は!?」


 サンダーが驚愕の声を出す。


「治安維持法というか国家転覆罪か……そういう時は少年法なんて無視されるんだろ」


 稲荷仮面が皮肉まじりに答える。


「これは不味いな……俺はテログループの……というか魔術師の家の出だが魔術師のグループの主犯じゃない」


「信じていいのか?」


 サンダーが問う。


「にぃにぃが嘘なんてつくわけないでしょ!!」


 マヤが強く言う。


「俺は信じるぞ」


 稲荷仮面が答える。


「ありがとう。俺を信じてくれて」


 その後転移である場所に出た。


 行動を開始するのはその後だった。

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