第4話
「ユキちゃん。ステータスって言ってみて」
「え?・・・えっと、す、ステータス?きゃ!?」
おぉ。出た?俺には見えないけど・・・。
「こ、これ!なんですか!?」
「ん~【ステータス】としか言えないね」
困り顔。プラス汗って感じだぁ~ねぇ~。
「俺には見えてないんだけど。何て書いてあるか教えてもらっても良い?」
「見えない、んですか?――――。えっと、いいですよ」
====================
【篠原 雪】
【 】
盾の領域:4/4
具現の力:0/0
====================
だけ?
「これだけです」
これだけか~。
予想はしてたけど、やっぱあのアンケートメールが原因だろうな。
「一応聞くけど。『望みはなんですか?』って言う一文だけのメール届いてたりしてないよね?」
「ん~?・・・知らない、です」
「だよね」
更に確率アップっと。
「因みに俺はね~」
ユキちゃんに説明。
「錬金・・・術?ってゲームとかアニメで出てくる?」
「まぁ、そうとも限らなかったんだけどね。さっきの光景を見ると結構良い感じにファンタジーしてそうだよね」
「何かちょっとカッコ良かったです」
むふ~。誉められた!
「あれはただのご飯なんですか?不思議な力とかは?」
「あ~。多分だけど、あるね。回復っぽい言葉もあったし、能力が一時的に上がる的な感じの言葉もあったから」
「スゴい!ワクワクしますね!」
おぉ~。何かテンション上がってる!勿論俺も!
「アニメとか漫画好き?」
「はい!」
愚問だったな・・・フッ。
「俺も好き~」
「良いですよね!?ゲームは楽しいし!!」
さて、この変な力でどうにか生き延びることができないかな?その為にも色々と検証したいんだけど・・・・圧倒的に色々諸々たくさん足りない。
時間も、安全な環境も、資材や素材、材料に器材。いっぱい足りない!
ック!!こんなに心踊るものが目の前にあるのに!!
仕方ない。少しずつだな。
取り合えず今は・・・・。時間はある。他はないけど。仕方ないから後回しにするか。他に考えること・・・・あっ。
一番重要な『今後の事』を何も考えてないじゃん。
取り合えず・・・俺の事は後で考えるとして、ユキちゃんはこの先どうしたいんだろうか?
お母さんとお兄ちゃんが帰ってくるまでここに居る?それは――――全くもって現実的じゃないな。
「ユキちゃん」
「なんですか?」
「スゥ――――ユキちゃんは、この先、どうしたい?」
こんなことを、小学生に聞くのは間違ってるんだろうけど――――聞かないと、進めない、決めれない。勝手に俺が決めちゃうと後悔してしまうことになるかもしれない。
そうはならないかもしれないけど、なってしまった場合ユキちゃんがどうなるか――――――。
いや、結局のところ俺が後悔したくないから、だな。少しでも責任から逃れたいが為にこんな事をしてしまってるんだよな。しかもその頼っている対象が、小学生って・・・マジ笑えねぇ。
「・・・」
あ~ゴメンね。そりゃそんな顔するしかないよな。今にも泣き出しそうな顔を俺がさせてしまったと思うと、罪悪感が・・・今更後悔とかふざけるなよ?俺。
頑張れよ、俺。
頑張るぞ、俺。
いいか?ヨシ!イクヨ!!
「ユキちゃんがこのままここにずっとここに居るのは良くないことだと俺は思う。もっと安全なところを探さないと、危ない」
「・・・(こくり)」
やっぱ良い子だわ。そしてずっと思ってたけど、賢い。俺がユキちゃんくらいの時はもっと何も考えず、感情だけで判断して、行動してた。
「でも、すぐに動くのもユキちゃんのお母さんたちが帰ってきたときに困るから・・・もう一日だけ待とっか」
「・・・お兄さんは一緒に居てくれるんですか?」
おぉ!そう思ってくれるのか!?
オメメがウルルと・・・庇護欲が!?
「そうだね。ほとんどなんにも出来ないけど、こうやって話したり、相談したりは出来るからね」
「あり、ありが、どう、ごじゃい、ましゅ」
あ、あ~。泣かないで~。
ぐう。小さくても女の子だね。どうして良いかわかんない!
おおぅ。あ~よ、よし、よし?胸を貸せば良いだね?俺のこの遊んでいる手は―――ど、どうすれば?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
少しは役に立てたかな?マイハンド。思わず背中と頭と両方撫でちゃったけど――――――セクハラじゃないよね?
「スー。スー。」
「ゴメンね。頼りない上に辛い思いもさせちゃうダメな男で」
もう少し撫でとこうかな?心なしか撫でてた方が落ち着いて寝てるように見える。せめて、落ち着いて寝れるように。
◇◆◇◆◇◆◇◆
モンスターが現れて3日目。
「お母さん、お兄ちゃん。・・・どこいっちゃったの?」
「・・・・・・」
一夜開けて既に夕方、か。
結局ユキちゃんの待ち人来ず。
俺の方の家族からも一切の連絡なし。既読すら付かないこの状況から考えると、生存は諦めた方がいいのかもしれない――――。ちょっと流石にそれは認めたくないんですが?
ユキちゃんも俺と同じ様な状況で、こんな時に頼れる立派な人は何かしら行動出来るんだろうけど、俺にはかける言葉すらも出てこない。
あ~マジ役に立たね~。俺。
仕方ない。せめてご飯だけでも美味しい・・・・かどうかは兎も角。あったかい食事を用意しよう。
数回の食事の用意で何となく感覚は掴めてきた【アルケミー】。もはや『錬金術』ではなく、【クッキング】と言った方が言い様な気になってくる。
だって、【アルケミー】なのに料理に関してだけってのが、何とも宝の持ち腐れの気がしてならない。ってか、この【具現の力】、回復がすんげぇ遅いんですが?これゼロになったらどんなんの?
まぁ、悩んでも仕方無いな。わからんことはわからん!だって俺、バカだし!
切り替えてこ!!
お米を用意。
カップ麺を用意。味は醤油だから卵も追加で用意。
更に豚肉を用意。
水を用意。
鍋をコンロに置いて。
よし。準備完了。
火を使わないで済むから安全で、多少の光が出るだけだから周りへの対策も簡単。便利ではあるんだけど、もっと他の事に活かしたいのが本音の今日この頃。と言いつつもまだ3日目の今日この頃。
出来れば身の安全を確保できる武器や防具なんかが欲しい。果たしてそれらがあったからと言ってどの程度安全が得られるのかは未知数だけど。無いよりましなのは確か。だから欲しい!
余計な事を考えていても、今回も失敗することはなく。ペカリと光ればあら不思議。
確りと炊かれたご飯と出来上がった麺が混ざり、お湯も適温でありすぐに食べられる状態。そこに火の通った豚肉も入り、卵とじにされたものが鍋に現れた。何度見ても、考えても不思議な事だ。
さて。
「ユキちゃん。ごはん、食べよっか」
「・・・・・はい」
うつ向いた顔からは『悲しみ』や『寂しさ』など、負の感情しか伺えない。
当然の事であり、どうすることも出来ない事ではあるが、胸が苦しい。何とかしてあげたいが、いつの間にか身に付けた【アルケミー】も使いこなせていないし、身体能力的にもあまり活躍できない。運動神経あんまり良くないし。
あ~。なんだかあまり美味しく感じない。
まぁ?元々そこまで美味しいものじゃないしね!仕方無いよね!?
こんな物騒な状況になっても食べられる上に、暖かい。そんなありがたい食事の味も寂しく感じる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
モンスターが現れて4日目。
結局、状況変わらず朝が来ちゃったか・・・。
いや、変わってない訳じゃないな・・・。
隣を見れば、か弱く、か細く俺の手を握る、と言うよりも触っているだけのユキちゃん。俺が力を緩めればその手は重力に従って下へと落ちてしまうんだろうな。そして、視線はずっと足元の地面。表情は生憎の曇り空よりも尚暗い。
こんな時こそ元気出していこぉお!って空気でもない。流石にこんな状況で、こんな状態の人が居るのにバカには成りきれない。
「ユキちゃん。そろそろ行こうか」
「は、い」
必死に噛む下唇。それは涙を流さないようにと堪える行為であることは一目瞭然で・・・。胸が張り裂けそうな痛みを感じてしまう。
黙って歩くしか無く。俺らがまとう雰囲気は最悪と言って良いと思う。状況を考えれば仕方のないことではあるが、正直勘弁願いたいのが本音。
だからと言って俺にはどうすることも出来ない。
ユキちゃんの状態も気になるし、この雰囲気もどうにかしたいとは思うが、現状打つ手がない俺としては、せめて道を間違わぬように、周りの様子を確認し、それと同時にモンスターの有無を気にして安全確保を行おう。
◇◆◇◆◇◆◇◆
どういう事だろうか??
ちらほらと見かけていたモンスター。それらを途中から全く見かけない。
もうすぐ目的地である警察署だ。
朝早くに出たにも関わらず町ひとつも離れていて、警戒しながらのノロノロスピードだったからもうすぐ夕方だ。
正直クタクタ。だけど文句も言わずに付いてきているユキちゃんを思えば多少の無理はなんのその。もう少し気を抜かずに警戒をしよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ついた・・・・」
「・・・・・・・」
漸くと言う感情から思わず浮かんだ言葉が漏れ。それを聞いたユキちゃんが家を出て初めて顔を上げた。
しかし、その表情には何の感情も浮かんでおらず、ただただ無表情で目的地である警察署を眺めている。
何とかここまで来れた。最悪、警察署も崩壊している可能性も視野には入れていた。けど、それは杞憂に終わったようだ。良かった良かった。
俺とユキちゃんが居た町では殆どの建物が壊されていたから心配していた。
特にショッピングモール等買い物できる大きな建物と、公共施設、学校や市役所などは件並み壊され、一部のこれまた大きめのアパート、マンションも壊されて、比較的大きめの建造物は全滅だった。
だけど、この辺りは平和な光景とは言えないが、安全そうだ。家の一部や垣根は破損しているし、車やバイク、自転車は乗り捨てられていたり、電柱やら壁やらに突っ込んではあるけれど、それだけの様。多分俺が見たドラゴンやグラウンドをほぼ占領するほどの大蛇など規格外の大きさの化け物は居ないのだろう。たぶん。きっと。恐らく。メイビー。
それから疑問点が一つ。何故か、死体が見当たらない。
ユキちゃんと俺の家がある町では、道中にいくつも見かけた。遠目にみただけで無惨なもので、見掛けないことは正直ありがたいのだけれど、疑問は残る。そんな中で唯一の救いは、道中の死体をユキちゃんが見ていないことだな。この時ばかりはユキちゃんの視線が落ち込んで下がっている事はありがたかった。
そんなこんなの
目的地につき、その目的地が現存していたことで安全だろうっと勝手に安心している俺が居る。安全な保証も確証も一体何処から得たんだって話。もう一度気合いを入れ直し、気の緩みを正す。
一応入り口は締められているから安全だよな?
―――ぬぅ。一度緩んだら気持ちをもう一度引き締めるって中々に難しいな。疲れているからってのも理由のひとつなんだろうけど。
取り合えず中に入りたい。
そんで、本当に安全かの確認をして―――それから、か。ゆっくり休憩できるのは。
だぁ~。今すぐ座り込みたい。休憩したい!
「・・・・」
視線を下げれば、未だに虚ろで悲しそうなユキちゃんが見える。
うん。頑張ろ。
思い返せばこれだけ歳の離れた子と一緒に居るのは初めてのこと。テレビやマンガなんかでよく「子供を守る!」って感じの気持ちを描いていたりするけれど、正直、その気持ちを俺は理解出来なかった。だけど、経験した今となっては自然と『守ろう』とか『守りたい』とか、この子のためにと色々考えている。不思議なものだ。これが子供の『ちから』、なのか?まぁ、クズな思考も言動もやってしまっているから口が裂けても『立派な』とは言えないけれど・・・。
ま~。俺も健全な男だから、ユキちゃんは普通に、と言うかめっちゃ可愛いからね。将来はそれはもう可愛らしいお嬢さん、若しくはとんでもない美人さんに育つだろうって言うゲスな感想からそんな想いが湧き出てきているのも事実のひとつ。
そんな彼女の暗い表情は見たくはないし、解決してあげたいが・・・アカン。また考えが堂々巡りすることになるわ。
ヨシ。行こう!
軽くユキちゃんの手を握り直し、少しだけ引っ張るようにして歩き出す。余りにも抵抗が無く。すんなりと動き出すユキちゃんに視線を向けそうになるが、今は周りの状況の方を確りと確認して注意しておかないと、最悪ヤバイ状態へと急転直下だ。
折角ここまで無事に来たのだ。最後の最後でしくじりたくない。
あーまぁ、そうだよな。流石に表の入り口の自動扉は反応しない。手動で開けようとしても―――開かないっと。カギがかけられてる?
こんなときは――――裏口、だな。
ユキちゃんの手を引きながら裏口へとトボトボ。
うん。普通に開いてるし。
安全のためにドアは閉めてっと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
え~っと?誰も――――いない??
そんなバカな。警察署だよ?他の避難所とかが機能してなくても、ここだけはせめて数人くらい警察官が残ってると思ったんだけど――――考えが甘すぎた??
真っ暗だし、電気は??
荒らされた後??それともここに居た人がただ慌てた結果のこの散乱具合なのか?にしてはかなり―――――乱れている。
取り合えず一通り見て回るか・・・?うん。そうしよう。
「ユキちゃん。少し中を探検だ。―――ユキちゃんも、協力してくれる?」
「・・・え?」
なにもせずただただ歩いてここまで来た結果。ユキちゃんの表情、と言うか状態と言うか、内面的な気持ち的なものが悪い方向に転がっている気がする。少なくとも気持ちが沈んだままなのは間違いない。当然ではあるけれど――――。何かしら行動して、頭を働かせれば、少し気が紛れないかな?
「今からこの中を探検するから、何か気になるものや誰か他の人がいたら俺に教えてくれる?」
「え、えっと。わ、わかりました」
よし。返事は貰えた。これで気分が変わってくれれば―――――。さて、ユキちゃんにはお願いをしたけれど、俺は一人で探索する気分で気を張らないと!
「先ずは一階を回っていこう。一つ一つ部屋を確認していって、次は二階。同じように二階も一部屋ずつ見ていって、また上にいく。これの繰り返しだ。良い?」
「・・・・わかりました」
元気がない。
当たり前だと一体何回思ったことかわからんが、また思ってしまうよね。
フゥー。
一つずつ行こう。
裏口は何もなし。一応影になっている部分も注意しながら―――異常無し。
取り合えず部屋数は―――ざっと見6部屋、フロア?かな?
一つ開いて、異常無し。中まで入って―――異常無し。別の部屋を開いて、異常無し。また中まで入って――――異常無し。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
取り合えず一階は何もなし。部屋数、と言うかフロア数と言った方がいいのか?それは少ないけど、流石に公共施設。広い!一つ一つのフロアがバカデカイ。一階だけでもスッゲー時間かかってるし、なんなら疲れも増大だ。だけど、まだまだ終わりじゃない。次は二階で、その次は三階だ。
――――酷く音が響く。
ゆっくりなるべく音をたてないように歩いてる俺の足音も、体重が軽く音らしい音を外では出していなかったユキちゃんの足音も、かなり響く。何気にホラーだ。やめろ!俺!考えるんじゃない!!
変な考えはするな!おめービビリだろ!?トイレいけなくなるよ!?
探索に集中!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
二階、6つのフロアも異常無し。
え?マジで誰も居ない?
普通に警官が在中してそうな―――オフィス?的なデスクが並んでいる所も、ただ乱雑になってただけで、誰かが居る気配は微塵もなかった。いかんいかん。俺が不安になるとユキちゃんまで不安に「お兄さん」む?
「どした?」
「あれ・・・・」
ユキちゃんが指し示す方へと目を向ける・・・ホワイトボード?
更に詳しく――――お?
=====================
避難してきた人へ
現在街へと巡回に出ています
この場に残ってください
暗くなる前には戻ってきます
=====================
ここで待てば良いのか?―――よかったぁ~。
「ユキちゃんお手柄だ。少しここで待たせてもらおう」
何だか慣れって恐ろしい。いや、慣れる程はしていない、はず?なのに――――自然とユキちゃんの頭を撫でてしまう!?
特に否定的な感情は今のところ感じたことは無いから大丈夫だとは思うが――。ん?―――おぉ。少しだけ頬が上がった?誉めたことで少し気分が良くなったのかな?―――良かった。
「疲れたね~」
「えぇっと・・・はい」
ぐぅ。なんか出会った当初に戻ったみたいなよそよそしさを感じる。ただ精神的に辛くて、言葉数が少ないだけだとは思うけど――――。
「はい。・・・たべな?」
「・・・ありがとう、ございます」
道中寄ったコンビニのお陰で俺とユキちゃんの食料は数日間心配しなくて良い。食料の方が大事なのは当たり前で、でも少しだけっと思って貰ってきた嗜好品。
チョコのお菓子?ケーキ?みたいなやつは全部ユキちゃんに進呈する予定だ。
「・・・お兄さんにも・・はい」
「え?・・・いいの?えっと、ありがと」
黙って頷くユキちゃんの頭をもう一度撫で、半分にしてくれたお菓子を受けとる。少し前―――いや、半年くらい前?に出た商品、だよな?たしか。なんとなーくCMを見た覚えがある。初めて食べます!
ユキちゃんと出会って二日目の世間話。
このお菓子が大好きだと言う話を聞いていて、実物を実際に見たときに思い出すことが出来た。ここまでの道中にあったコンビニにもう一度感謝と謝罪を!少しでも気分が良くなるようにと思った俺の心に免じて!そして、何よりもこのいたいけな少女に免じてお許しを!
頑張れお菓子!少しでも気分を良くするんだ~!と思っていたら俺にもくれた。―――優しい。普通このくらいの年齢の子が好きなものを食べるときは一人で食べません?少なくとも俺は好きなものは誰かにあげようとは思ったことないな~って、あっま!!??
スッゲーアメーよ!?普通に板チョコ食ってる以上に甘く感じるけど、食感はもちもちしつつも少しパサついてる感じのパン?あ~なんかすっげー違和感!ユキちゃんには悪いけど俺には合わないです。
食感はまぁいいとしても、甘すぎる!
ユキちゃんは―――少し気分が上向いたかな?やっぱり好物なんだなぁ。
「――――す―――い」
「い――――い―――――――」
「―――ね――――――ん」
むむむ!!
これは!?話し声!!!
「ユキちゃん。誰か来るみたい」
「え?は、はい!」
「ッシ!先ずは俺一人で会ってみる。ユキちゃんは隠れてて?そんで―――もし、俺に何かあったら逃げるんだよ?良い?」
「え?え~っと・・・どうして、でしょう?」
ひそひそと話すことにも、もしものときは逃げることもユキちゃんにとっては疑問にしかならないか。でも残念ながら説明している時間が――――ないね。もう多分部屋に入ってくる。しくじったね。先にちゃんと考えて説明しておくべきだった。
誰かがいる事がわかったことから安心し、ここまで来たその労力からくる疲れからそこまで考える事が出来なかった。反省。
「じゃあね」
後悔しても遅く、最後に頭をまたもや軽く撫でてからユキちゃんをデスクの影に隠す。不思議そうに、そして不安そうに見てくるユキちゃんの視線を切り、入って来るであろう入り口近くまで移動。
「あぁ~疲れたッス~」
「はいはい。もう今日は終わりだからゆっ・・・」
「ん?どうした戸崎?」
「え、なに?どうかしたッスか?ユウカちゃん?」
入ってきたのが女性でビックリ。勝ち気そうな目が印象的・・・でも、視線、が・・・!!吸い込まれる!?!?
ラフなジャージで、しかも黒。正直目立たない。だけども―――フォーーー!!!
ビックバーーーン、インパクト!!!!!
「ちょ!?どこ見てんのよ!?」
「ご馳走さまです!!!」
「コロス!!!」
「「待て待て待て!!!」」
ビックでバ~ンな胸部を備えた戸崎と呼ばれた女性を止めるのはスキンヘッドで強面の厳ついスーツのおっちゃんと茶髪にピアスをした、いかにもチャラチャラした格好のイケメン(マジ不愉快)。二人がかりの腕力でも微妙に止まってない感じだよ?どれだけ力あんだよこの人。
「ふー!ふー!」
「・・・猫?俺猫好き!「やっぱコロス!!!」だぁ~!?」
思わず出た返しに、より一層勢いを増した戸崎?さんが伸ばした手に危うく掴まれるところだった!ちょっと!?ちゃんと押さえててよ!!だらしないよ!!!男二人も居て!!!!
「あ~名も知らん若者よ。そこら辺にしてくれ・・・。正直抑えられん・・・」
「りょ、了解です。え~戸崎?さん。ごめんなさいでした。」
ちゃんと腰を折って謝罪。姿勢が大事。
「戸崎もそれくらいにしとけ。な?」
「――――――――――――――わかりました。」
渋々・・・本当に、ほんと~に!渋々と言った具合で納得したビックでバン!の人は俺から距離を取るように動く。え~そんなに離れなくてもよくない?もっと拝ませてくれても・・・「ん”ん”。あ~良いだろうか?」おぉ。おっちゃんによるインターセプトにより俺の幸せな光景が・・・・。
「あ、はい」
ちょっと眉間にシワがより始めたので慌てて返事。うん。返事、これ大事。知ってる!
「君は~避難者、でいいんだよな?」
「そですね。隣町から遠路はるばる徒歩でやって来ました。」
「「「隣町!?」」」
「え?は、はい?」
距離をとってたはずのビックバンの人も近づいてきて驚きを露にしている。おぉ。俺の幸せが!あぁ~~~。もう!なんで塞ぐんだよ!おっさん!?
「いい加減にしようか?」
「イエス・サー!」
取り合えず事情説明。勿論ユキちゃんの事は伏せながら話して――。
「よく、無事だったッスねぇ?」
ん?何だぁ?おいこらイケメン文句あんのかコラァ!?
「『何を望みますか?』」
「っ!?」
「どうやら、聞き覚え、あるみたいッスね?」
「「ほぉ」」
どゆこと?それを知ってるってことは―――。
「変なチカラを持ってる、ってことか・・・」
「ご明察ッス!オイラは【ソルジャー】を持ってるッス。職業的な意味合いの欄には【ソードマン】ッス」
ほほぉ。もしかしてこいつがあのネットの?
そう言えばバットを片手に持ってるね?服装は普通にチャラ男だけど。
ってか、この人達どういう組み合わせ??
バット片手の高校生くらいのイケメンチャラ男と、筋肉ムキムキで大柄なスーツの三十代のおっさん。胸部装甲が異常なジャージ姿の俺と同年代?のつり目美人様!
クエッションマークしか出てこないんですが??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます