6 ベアキラーPT実力調査

「結構ヤルじゃねぇか!」


会議の翌日、紗季と茶楽が手合わせをしていた。

昨日の会議で言った通り紗季と樹里香は武器を持ち込んでいたが、さすがに殺傷力があるのはまずいので、練習用の物を使っている。


茶楽は木製の短剣を両手に装備し、紗季は竹製の薙刀を手に行った。


「取り合えず紗季は中々なんじゃネェカ? 明彦」

「いや、俺もそう思うが……」


紗季と事前に話をしていたが、一般的に言われるだという事だった。

熟練したぶつかり合いの場合はリーチの優位性はあっても、それ以上の差は無いと言われた。


なので、モンスターと戦闘を行える茶楽は油断できる相手じゃないとも紗季は添えていた。


「「「……」」」


手合わせをした紗季と樹里香、見物しに来たタツは驚愕した目で茶楽を見ている。



「これで、前衛が大分厚くなるな!」

「……ボクが突っ込んでいいのか分からないけど、なんだけど……」


紗季の言う通り、今地べたに前のめりに茶楽が倒れていて、眼前には構えを解きつつも困惑した顔を浮かべた紗季という構図になっている。

茶楽は倒れ込んだ瞬間から威勢よく会話し始めた物だから、全員呆気に取られてしまった。


「ウルセェ! 声でも出してねぇと気持ちが落ち着かネェんだよ!」


負けると思ってなかったので、悔しさを紛らわせていたらしい。


「実際手合わせした紗季から見て、茶楽はどうだった?」

「強いと思うよ。 攻撃の受け流し方とか見切りとかはセンスあるし……でも僕は攻撃繋げていくの得意だから、相性悪いんじゃないかな」


紗季は1度攻撃に入ると20程度は技を流れるように繋げていた。

茶楽は短剣の間合いになる先の懐まで飛び込めたことはなかったが、あそこまで凌いだのは見ている俺も驚いた。


1度ではなく何回も紗季は攻撃に入っているので、茶楽の回避力が高い職業になっていて、ダンジョン内でも体現していたけれども外側から改めて見て驚かされる。


「あそこ迄いなされたのは初めてだから、ボク自身驚いてる……でもボクみたいなの相手にするなら、流すんじゃなくて断ち切らないと入ってこれないよ。 逆に一撃にパワーを込めるタイプなら受け流して打ち込めるだろうから、茶楽と相性いいんじゃないかな」



攻撃があまりにも一方的過ぎたので、茶楽を起こして短剣の間合いで茶楽に攻撃をしてもらう。


「樹里香はどう思う?」

「筋は悪くないと思います。 紗季に防御に徹してもらってますけど、何度か紗季の体に攻撃を当ててます。 正面からの単調な攻撃だけでなく立体的に行っているためだと思いますので死角からの攻撃は優れています……が、純粋な戦闘力は紗季には敵わないでしょう。 あの程度では紗季の連撃を止めれません」


手厳しいけど、何度も紗季の試合とかを見てる樹里香が言うならそうなんだろう。


「でも、木崎……じゃなくて茶楽は強いと思います。 私が見た中ではあんなに紗季の攻撃を受け流した人いないですし、紗季が楽しそうに薙刀振ってるの初めて見ます」


今日の朝、紗季からPTなんだから名前で呼び合う事を提案されたばかりなので、樹里香は名前で呼ぶのにまだ慣れないのだろう。

名前呼びにすると遠慮が無くなったりするので、意外と重要なポイントだ。

本人は体育会系なノリだけで言ったんだろうけど。


「樹里香も脇差で紗季とやったりしないの?」

「あんなに受け流せません。 扱いますけど、腕は茶楽よりも数段下です。弓の方の修練を重視してきましたので」


スキルに適性2つ出てたとしても、そりゃ同レベルじゃないよね。


「じゃあタツはどう思う?」

「そもそも2人のレベル高いよな…… 木崎に確実に勝てるのはウチだとタイチョーくらいだろう」


タイチョー……あんたも大概規格外だよな。


「後は訓練方法の違いなんじゃないか。 村上さんは対峙している相手では木崎よりも強いけど、周囲への警戒は木崎の方が高い。 ダンジョン探索という観点ではどっちが上とは言い難いな」


タツはたまに石を投げ込んでいたが、紗季は気を散らしていたが茶楽は自然に対処していた。

伊達にサバイバル訓練をしていたわけじゃないのだろう。




□◆□◆□◆□◆□◆□◆□




「いやいや!! せめて50mにしてもらいなよ! 100mとかボクは絶対無理な距離だと思うから!」


次は茶楽と樹里香の手合わせとなった際に、弓と短剣なので距離を決める事から始まったがそこに紗季が割り込んできた。


「ンデモ、動いている相手に当てるのは難しいダロウし、近すぎンと懐に入られるプレッシャーでまともに射る事ができネェダロ」

「あ~、もう! それなら、最初に50mでやって余裕なら伸ばしていけばいいでしょ!」

「樹里香はそれでいいのか?」

「私は構いません」


当人である樹里香はどうでもよさそうにのほほんと返事をする。

弓使いって距離ってかなり大事な問題じゃないのかな。



そして、樹里香の1射で手合わせは終わった。



「「アリエネェ!!」」

「ボクの言ったとおりでしょ……」

「距離問題以前に人を射るのに全く躊躇なかったんだけど!?」

「弓って人相手じゃなくて的相手だから、実際射ろうとすると動揺するものじゃないの!?」


騒いでいる俺達の声を聞いても仰向けに倒れた状態から反応が無いので、気絶してるんだろうな。


「昔から、動物によく射っていたので」

「いや、それ問題になる!!」

「私の親戚が神社の神主でして、正月明けにので夜の警備に駆り出されるので、自然と動く物体に射るのも慣れました」

「いやそれ、人間じゃ……」

「人間なら被害届とか来るのでしょうが、そういうの全くこなかったので動物です」


そりゃ賽銭泥棒しに行ったら攻撃されましたなんて、言いに行けないからだろ。

樹里香はおしとやかそうに見えてどこかズレてるな。


俺の身の安全の為にも怒らせないようにしようと心に誓う。



当初は茶楽が2人の実力を測るつもりだったけれど、逆に実力を叩きつけられた形になった。

実力に疑問? ナニソレ




□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


アッキー:そういえば、茶楽が当たり前のように短剣2本だったけど、そもそも1本って俺のだよね?

タツ:いや、本人から2本の申請あったから今後も2本の支給だけど?

アッキー:じゃあ俺も申請出したい

タツ:出すだけ無駄だと思う

タマ:なんで弱体化したいの?

タイチョー:却下

アッキー:なんで!? 装備増やして強化は普通の発想!

タイチョー:特殊事例

タツ:アッキーの手刀⇒クマの貫通、サバイバルナイフ⇒貫通せず折れる (※他複数人で実証済み)

タツ:ゆえにアッキーの手刀>>>サバイバルナイフの図式が成り立ち、素手のが強い事が立証されている

アッキー:理詰めで来るのやめて!! 逃げ道なくなるじゃん!

ユウ:ぇ? マジ!?

タマ:初日全国のダンジョンの報告の中で最大の謎ね、現在進行形で謎だけど

タツ:初日っていうか、インパクトのある報告してるのなぜかウチの所だけなんだよな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る