2 ベアキラーPTに新メンバー?
「和田さん~送って~くれますか~?」
呟いた時と異なり、間延びした声を上げながら西原さんが会議用の部屋に戻ってくる。
そう言えば昨日の朝、無理やりタマの道連れにしたんだった。
お互い色々あってその事を失念してた。
「すみません、それじゃタマ」
ドゴンッ!
「送って~くれます~よね~?」
漫画なら背景にキラキラしたトーンでも貼られそうな程、物凄くいい顔した西原さんが再度問いかけてくる。
当然ながら俺の言葉の途中に発生した音は西原さんの足と壁の接触音だ。
当然これを拒否すると次は俺の体に放たれるし、場合によっては乗ってきた車 (月夜から入院中借りてる)にまで被害が及びかねないので承諾せざるを得ない。
朝のドライブがそんなに不満だったのだろうか?
……いや不満しかないか、俺自身嫌で道連れにしてるし。
蹴られた壁を見ると、俺のアパートのドアと同様に凹んでいる。
やっぱり、ダンジョン潜っても戦力に絶対なるよな。
……あ、でも同じPTに入ると心労が大変そうなのでやっぱいいかも。
西原さんと連れ立って駐車場に向かって歩いていく。
連れ立ってと言っても、蹴りの射程範囲の距離は取っている。
なんでダンジョンの外でも警戒しないといけないんだろ……
「あの、もしかして車で来られてます?」
声のした方に目を向けると、対談に参加していた女性冒険者が2人いる。
正直人が多すぎて名前覚えてないので、誰だか分からない。
というか冒険者皆隊員服着てたけど、もしかして服って支給されてる?
「車で来てますよ」
「それなら乗せていってくれません?」
「俺はいいけど、そっちとしては問題にならないの?」
何て名前だったか一般PTのリーダーは俺たちに対して間違いなくいい感情を持ってないと思う。
ああいうのはプライドが高い事が多いので、目をつけられると面倒なことになりかねない。
「あ~、そもそも置いてかれてしまったんですよね~」
話しかけてきたストレートロングの女性が苦笑いしながら答える。
ならしょうがないと思って月夜の車の方に誘導する。
□◆□◆□◆□◆□◆□◆□
「実はちょっと相談がありまして」
黒髪ストレートロングの
直接話すのは初めてなので車に乗った直後に自己紹介をしたおかげで、名前を認識できるようになった。
「ボクと樹里香をそっちのPTに入れてくれないかな? 人欲しいよね?」
茶髪で短髪な
2人は大学で友人同士だったらしいけど、宮川樹里香がおしとやかな感じで村上紗季は部活少女という感じ対照的だ。
よく友達になったなと思ったけれど、自分の友人たちを思い返して友人になるのは意外と似通ってないように見える人物となりやすいのかなと思い直す。
髪もとかした感じではなく散らされたようになっているのが、村上紗季の活発なイメージを印象を強くしている。
「PTとしても人数欲しいけど、なんで?」
ただでさえ男2人なのに、おっさんと陸自に目をつけられてそうな男という組み合わせだ。
20代中盤と思われる女性からすれば率先して近寄りたい集団ではないはず。
「実は私達が置いて行かれた原因でもあるのですが、揉めてしまいまして……」
「今回の事を考えても協力した方がいいって言ったらねぇ~……ボクたちは裏切り者みたいな感じになって」
「他の冒険者とか宮川さん達を擁護しなかったんですか?」
「こう言っては何ですが、主体性の無い方が多いので取り合えずトラブルを起こしたくないという感じの方ばかりですね」
「死にかけたのにね~。 和田さん達が助けてくれたから、これからも何とかなるって勘違いしてるんじゃない?」
あのリーダーだとありえそうだし、無職でヒコキ……じゃなくて自宅警備員という職業だったなら他の冒険者のような我関せず適な発想をするのかもしれない。
「俺たちのPTに入るよりも自分達で第3のPTを立ち上げるという事をしなくていいの?」
「私と紗季の実力ではとても生き残れるとは思えません」
「それに、生き残る為にどうすれば良いか考えてるし、人助けまでする人達なら一緒のPTでも安心だと思うから」
ゴメンナサイ、人助けに関しては俺は逃げようとしました!
その点に関しては茶楽の功績なんだけど話の腰を折るのもいけないと思って言わないでおく。
……他意はない。
「事情は分かったけど俺の一存でも決められないかな。 茶楽とも相談したいし……今後の事を考えると陸自側とも共有しておきたいか…… 明日ちょっと別の件で話し合うんだけど参加しませんか?」
「お願いします」
「するする!」
ダンジョンで気づいた事について話し合うけど、その前にPT追加の話を振る事にすると2人に伝える。
「時間は特に決めてないから、最初から俺たちと一緒にいるとちょっとマズイかな。 決まったわけじゃないし……」
「じゃあ、会議する時間になったらボクたちの携帯に連絡してくれない? 明日はダンジョンの方には行かないようにしておくから」
「いや、連絡先知らないし……」
「だから、さっさと携帯のロック外してこっちに渡す! ボクと樹里香の連絡先入れるから」
言われたように操作して渡すとすぐに操作をしだす村上紗季。
10年以上変化の無かった俺のアドレス帳やフレンドに最近新規登録が増えていく。
陽キャってすごいなぁっと車をタイヤを鳴らさないように運転しながら思う。
車内の話は決まってないので西原さんには口止めをした上で、職場に降ろす。
冒険者2人は村上紗季の家で一緒に降りる事にしたようだ。
「私はここから遠くありませんし、和田さんにこれ以上お手間をおかけしたくありませんので」
「(樹里香の家ちょっと煩いから和田さんに迷惑かけたくないんだよ)」
車から降りる時に村上紗季が俺にこっそりと宮川樹里香の心遣いを伝えてくれる。
「あ、ちょっと2人に聞きたいんだけど……」
2人も他の冒険者も茶楽と同じ服装をしているので、気になっていた事を別れ際にぶつける。
□◆□◆□◆□◆□◆□◆□
アッキー: 俺にも隊員服支給して欲しいんだけど
ユウ: ジャージはないだろ
ツクツク: ジャージ素材はないんじゃない?
ユキ: ジャージは無いと思う
アッキー: 関係者からの返答希望!
タイチョー: 無い
タツ: 何でジャージであると思った?
アッキー: 多様性を重視する今の風潮なら……
タマ: 個人の強烈で個性的な趣味を多様性の中に含めないでくれない?
アッキー: (絶望したスタンプの送信)
タマ: あ、迷彩服とか制服を模したジャージ特注しないでね
アッキー: …………ダメ?
タマ: 冗談で言ったら本気だった!?
タツ: いや、問題になるから可能性あるから……
ユウ: ゴメン、アッキー常識が通じない所が合って
タイチョー: 分かってる
タツ: 日々痛感
タマ: だからこその成果かもだけどね
アッキー: 俺以外で共感してる!? 俺がおかしいの?
ツクツク: いい加減、そこは自覚もって欲しいわ
タツ: 他の冒険者に支給しているように迷彩服なら支給できるけど?
アッキー: ジャージ以外は不要!
タマ: そう言うと思ったからアッキーには聞かなかったんだよね~
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