【4章】ダンジョン対策
1 冒険者対談
俺は話が終わってコーヒーを啜って一息いれる。
昼食後、冒険者側全員参加 での対談が行われていたのがようやく終わったのだけれど、結構酷かった。
ちなみに対談の席次は次のようになっている。
タマ (書記)
-------------
タイチョー| |荒木 (L)
タツ | |鴨田
俺 (L?) | |清水
茶楽 | |木村
| |宮川
| |村上
| |山崎
| |佐々木
-------------
西原 (ゲスト)
俺らの立ち位置おかしくね!?
もう陸自に組み込まれてるよね?
3人なんだからタマの隣にと言っても何故か譲ってくれなかった。
ついでに俺と茶楽のPTのリーダーは俺にされてた。
陸自と茶楽の間にはまだ気持ち的に溝があると思うので、こっちは仕方ないと思うけど、交友関係の狭さからも俺はリーダーには向いてないと思う。
ひっそりと参加している西原さんは今日また来たのではなく、昨日の騒動に巻き込まれて帰れなくなったそうな。
支援業務や食事の方面で1日中手伝いをしていたらしい。
今日顔を見た際に挨拶したら何も言わずに蹴られた (流れるように3連発)後に説明してくれた。
「どうせなら今日の話聞いて来い」という平課長からのお達しもあり、そうとう腹に溜まっているらしい。
……マジ蹴りだと思うんだけどメッチャ痛い
その蹴りの威力をダンジョンで発揮してもらえないものかと思う。
平課長に打診したくもあるけれど、推薦者がバレルと俺の全身の骨がどうなるか分からないので自重しよう。
絶対もう一つのPTより戦力になると思うんだけどなぁ……残念だ。
議事録をまとめ終わったのかタマがスクリーンにノートPCの画面を映したので、俺たちは確認をする。
一般的に議事録は紙などで配布して確認してもらう形になるのだろうけれど、印刷機は設置されていないのでスクリーン確認になっている。
ちなみに電力はモバイルバッテリーを随所で利用している。
毎日基地で充電したのをその他物資と一緒に送ってくれているらしい。
当たり前に電気が通っているありがたさを改めて感じる。
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『第一回 冒険者対談』
■参加者
■■陸自
・中村 健司
・崎村 辰美
・姉崎 珠 (書記)
■■ベアキラーPT
・和田 明彦 (L)
・木崎 茶楽
■■一般PT
・荒木 翔太 (L)
・鴨田 友香
・清水 宗助
・木村 大和
・宮川 樹里香
・村上 紗季
・山崎 理人
・佐々木 和真
■■ゲスト
・西原 茜
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「「ちょっと待て!!」」
まだ出席者が映し出されただけの所で、俺と茶楽の叫びが会議室に響き渡る。
「ぇ? こんなところで何か問題あるの?」
「なんでそのPT名なんだよ!?」
「俺らPT名は申請してないし、ベアキラー明彦だけダロ?」
「2人とも冒険者カード貸して」
そう言われて俺と茶楽は冒険者カードを渡す。
タマはまず俺の冒険者カードを公開状態にして操作をする。
「タマそれはちょっと待って!!」
タマの指がとあるアイコンを押そうとしたので俺は言葉を発せずにはいられなかった。
そう、王冠の形をした称号のアイコンだ。
中身を分かっているタマに俺の言葉は当然無視される。
************************************
【称号】
ベアキラーと呼ばれし者
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「明彦……お前……」
「何も言わないでくれ」
お前ダンジョンにまで認められちゃったのかよ……
というような声色で声をかけてくる茶楽だけれど、皆同じ気持ちだろう。
俺も他人だったらそう思うし、実際に冒険者カード取得時にいた面々には言われたし。
俺は茶楽と掛け合いをしているとタマは俺の冒険者カードへの用が終わったので、茶楽の冒険者カードを公開にして操作し始める。
って、あれ? 茶楽にも称号がある……?
いやでもまさかね……
茶楽の冒険者カードに俺と同じ王冠アイコンを見つけ、嫌な汗が背中を流れるのを感じていても、タマはなんのためらいもなく王冠アイコンを押す。
************************************
【称号】
自称ベアキラー (笑)
************************************
「って、ナンだよその称号は!?」
どうやら茶楽は自分に称号がついているのを知らなかったようだ。
周囲は納得したような顔をしているが、笑って酷いだろ……
本当にダンジョンは称号を貰った当人を落ち込ませたいのではなかろうか。
「……茶楽、俺が知る限り称号が付いた人は皆そんな反応になる」
とある土下座の人もそうだったし。
「それで、PT名に何か不満でも?」
「…………………………ネェな」
「…………………………ない」
俺と茶楽は不満を押し殺し答える。
俺たちのPT名がベアキラーPTと不本意ながら正式決定する。
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■ベアキラーPTからの要望
・冒険者の補充
・現在冒険者の強化
・冒険者への装備配備の要望
・ダンジョン内食事の充実
※量ではなく質の問題の改善
・各能力の明示化
※各個人及びPT単位
■一般PTからの要望
・ダンジョン潜った後は休暇の義務付け
※一週間を要請
・安全な冒険の為、陸自の現地同行
・冒険者退職条件の設定
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「改めてみると相手方アレだよな……」
茶楽が呟くが、要望内容からもそりゃ無職になるわというような内容である。
なってしまったんだから、そこでなんとかする努力はするべきだろう……
対談の最中にこれまでの戦績を確認してみたのだが、驚くべきことに一般PTはモンスター討伐数は0だった。
(一般PT申告)
ダンジョン入る
↓
モンスター遭遇
↓
陸自呼ぶ
↓
陸自がモンスター倒す
もうこれ、一般PTダンジョンに入る必要なくないか?
前回笛を吹いていたのもいつもの一環だったようだけど、隣の穴から突然襲われて逃げる道を入り口側と先に進む側を間違えてしまったら大群に囲まれたというのが昨日の惨状らしい。
なんか命かけて助けたのに理由が……
ちなみに魔法の専門職もいるようなので、もっと真剣にあがいて欲しい。
いくらなんでも他人頼み過ぎだろ。
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■合意事項
・ベアキラーPTの名称の正式決定
A:該当2名の承諾有
・冒険者への装備配備の要望
A:和田明彦の戦闘力を基軸としつつ、悪影響も考慮し追加装備を陸自で上伸する
A:和田明彦に関しては既存で十分と判断し、追加配備を行わない
・各能力の明示化
A:開示内容についての検討事項はありつつもデータ収集の必要性及び戦闘力等の測り方を模索していく
A:システム化に関してはダンジョン関連委託先と協議していく
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俺個人としては特に装備に対して言いたい事があるが、全体の戦力増加に対しては前向きなので特に言うまい。
……さりげなくPT名も決定事項に盛り込まれてるけど。
ダンジョン関連委託先って、最近できたばかりのぽっと出の会社だろうな。
俺が所属予定 (書類上はもうしてるのか?)の新会社。
悪いユキ仕事増やした……
今頃会社で悲鳴を上げているであろう友人に心の中で謝罪を入れておく。
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■検討事項
・冒険者の補充
A:陸自とも検討したいが基準などの調整が必要
・現在冒険者の強化
A:一般PT側の同意は得られてないが、陸自としては必要性を感じる為
■却下事項
・ダンジョン内食事の充実
A:ダンジョン内での携帯性に優れ、満足度の計れる物が分からない為
・ダンジョン潜った後の休暇の義務付け
A:必要に応じて付与する場合はあるが、人手不足の現状認められない
・安全な冒険の為、陸自の現地同行
A:陸自は環境整備・非常時戦力・最終防衛を行っており同行を行える余剰戦力は無い
・冒険者退職条件の設定
A:国策であり選択権のある職業ではない
以上
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この2つに関しては大揉めした。
特に一般PTに関わる事で全く納得してくれなかったからだ。
というか今でも納得していないようで再度不満を噴出している。
「無理矢理集められてダンジョンに送られて、更には訓練って人を馬鹿にすんなよ!」
と荒木という男が吠えているが、たぶんここにいる全員収入ない事から年金は特例使ってるだろうから、大きな口叩ける無いはずなんだけど……
主に荒木という男のせいで確認時でも結構揉めたが、対談時はもっと酷かったのでお互い疲れたのだろう。
そもそも、話し合いと違う内容になってないかチェックする時間なのに、決まった事を蒸し返すなよ……
出席者全員の了承を取る頃には赤みがかった空が暗くなり始めた頃になってしまった。
西原さんが帰り際にボソッっと
「なるほど、和田さんを離してはいけない理由が分かったわ」
と漏らして部屋を出ていったのが引っかかる。
というか間延びない話し方が普通なら普段からそれでも良くないかな?
なんか使い分けるの大変そうなんだけど……
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