3 ダンジョン対策会議1(PT追加の件)
「明彦……よくやった!!」
冒険者対談の翌日、本命のダンジョンについての話し合いをする為の会議の場に俺たちはいる。
会議に先立って昨日のPT参加の話をした所に出たのが茶楽の称賛の声だ。
一昨日死地から逃げ帰ったはずなのだけれど、そっちではこんなにうれしそうな声は一切聞かなかったな。
「お前最初の時の対応はフリなんだよな?」
「女好きは男の性!!」
どうやら女性に引っ付いていたのはチャラく見せる為ではなく、茶楽の素だったようだ……
未だにその点を熱弁しているが、せっかく改善してた好感度が下がっていくのを感じて欲しい。
ほら、部屋の中にいる3人の女性の視線の温度が茶楽が発言する度に下がっているんだけど。
「それは置いておいて、どうする?」
「俺は樹里香ちゃんの方が……」
「お前の好みじゃない! PTメンバーとして入れて良いのかって聞いてるんだ」
「え? もう入ってンじゃネェの?」
「……どう思う?」
どうにも頭の中が通常モードになってない茶楽と話をするのを諦め、昨日と同じ陸自メンバーに投げかけてみる。
「アッキーとしては気になる事があるって事だよね?」
「あ~、まあちょっとね……」
タマにこの会議に持ってきた理由を問われて、俺は気まずくなり2人の冒険者に視線を流す。
「和田さんが気になってるのは私と紗季がスパイではないかという事でしょうか?」
当人たちがいる中で俺が言い淀んでいると、当の宮川樹里香が俺の懸念を言い当てる。
本人たちに知られると嫌な気分にならないか気になっていたので、本人からの言ってくれるのは助かる。
元々は茶楽が察してくれて、話が進む予定だったんだけど……
「あ、そういうことか。 ンでも女の子と一緒に冒険できんならいいんじゃね?」
「その結果殺されるかもしれないんだけど。 ……その女の子以外に」
「真面目に検討するしかねぇな!」
ようやく頭のスイッチが入ったらしい茶楽。
最初からそうしておいて欲しかった。
「今の状況ならスパイ疑惑持つのは当たり前だよね、一般PTから反発受けてるわけだし。 ボクらとしてはその懸念を持ってくれる方が安心できるかな。」
「それじゃ、その懸念を払拭できる事を考えているのか?」
「それは無理だと私たちは考えています。 崎村1曹、例えば密林等での訓練時に死人が出た際に意図的でないか、スパイがいないのかという点を誰の目からも明らかな形で証明できますか?」
「それは…………無理だ」
質問を挟んできたタツに宮川樹里香が質問を返して、自分の質問が意味のない事を理解させている。
俗に言う悪魔の証明というものだ。
やってない事をやってないというのはとても難しい。
「だからボクたちはその懸念を責任を負う事で信用して貰う事にしたんだ。 和田さんと木崎さんに何かあった際にはボクらがした事にして。 例え他人がした事でもそういう責任を負う事にしていればボク達がスパイ活動をする事が困難になるよね?」
「当然ですが、2人だけでなくその周囲の方も含めてです」
俺たちに何かあった際に責任を全部負うというなら、スパイをするメリットはなくなるな。
茶楽が沈まされるのを見ているのだから、何かあった際にそれなりの事をされるのは分かっているだろうし。
ただでさえメンバーが欲しい中で、自分で考えて提案ができる人物は願ってもない。
茶楽と陸自に視線を投げかけると全員納得したように頷く。
「確かにそれなら、人柄的には問題なくなンな。 後は実力的な部分の問題か」
「実力はもう諦めて訓練してもらうしかないか無いだろ」
「けどよ、訓練したからって倒せるようになるとは限ンネェだろ? その目があるかどうかは考えた方が良くネェか?」
「その事なんだけど、蟻に関してはボク達倒せたと思うんだよね。 ……クマはどうかわからないけど」
ため息を吐きながら村上紗季が意外な話を振ってくる。
宮川樹里香も嫌そうな顔をしながら頷いているけれど、だったらなんであの時に倒さなかったのか。
「実はですね……」
宮川樹里香が引き継いで話してくれたのは、思っていた以上に酷かった。
まだ蟻が少ない時にまともに攻撃をしていたら、横から荒木 (一般PTのリーダー)や鴨田が敵意を持って2人に攻撃をしていたらしい。
それまでの探索でも荒木よりも目立つなというような忠告は受けていたようだけれど、命の危険が出た状態では構っていられなくなって倒そうと行動したら……フレンドリファイアどころか、普通に攻撃をされたと……
倒しても倒さなくても何故か命の危険がある状態とか……ナニソレ
「「「「「あいつら、クズだな!!」」」」」
話を聞いていた全員の言葉がハモるが何も不思議な事ではない。
「だから、攻撃をしてた感覚的には普通にしてれば僕も樹里香も何匹か倒せてはいたと思う……倒せてないから実績としては言えないのがツライんだけどね」
部屋の空気が微妙になってきたのを察したのか、アハハと明るく笑いながら村上紗季は付け加える。
「後、昨日話に出てた装備の話なんだけど、支給じゃなくて持ち込みダメかな?」
「具体的には?」
「陸自はボクたちのスキルで武器適正あるの知ってるよね?」
「ああ、槍・弓・剣だな」
タイチョーがタマから資料を渡されて回答する。
「そうボクが槍で、樹里香が弓と剣だね」
訂正、2人とも3つの適正あると思いっきり誤解した。
最初から話す事考えてないときタイチョー以外が話してくれないかなと思う。
色々怖いから口には出さないけど。
「私たちは実際に手慣れた道具があります。 それを使っていいのであれば今まで以上に戦いやすいと考えていますが、どうでしょうか?」
「いい」
「そうね。 2人に関しては自分の武器を持ってきていいわ。 さっきの制限の事もあるから変な事にはならないだろうし」
「じゃあ実力を確認したいなら、僕たちの普段の武器で手合わせしてよ! そうすれば正しい戦力としての測定できるよ」
「……というか茶楽、実力確認をするのはいいとしてももう入れても良くないか? 普段の武器以外で倒せそうだったって言うんだし」
「俺もソンナ気がしてきた」
「じゃあ、正式に入ったという事で陸自としても認識しておいていい?」
「そうしといて。 あ、一般PTの事はちょっと気を付けておいて。 話を聞く限り実害出してくる可能性あるから」
そう結論付けると2人は手を合わせて喜んでいる。
気が気でなかったんだろうな。
「ところで2人ともなんで手慣れた武器があるの?」
「ボクは家が薙刀教えてるんだよ。 樹里香は弓を教えてるけど、ちょっと脇差の扱いも指南してる」
「それって無職なの?」
「そんなに習いに来る人も少なく無いですし、私たちの形としては家の手伝いなので無職扱いみたいです」
ていうか、思いっきり武芸の経験者になるわけか……
「……事前に調査ってしたんだよな?」
「実力面としてしたかは不明だが、役所に再調査を依頼しておく」
タツが要請をするように言うが、珍しくタイチョーが気まずそうな顔をしている。
うっかり有望な人物を失ってしまう所だったと認識してくれているんだろう。
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