第42話 美香さんの男は日曜日の6時半。
『カツオ、もうすぐ着くって。』『カツオさん?』『あぁ、あたしの彼氏の名前!!』『…前世は魚だったんですね。』
佐野さんは若干不機嫌気味。自分で誘えって言ったくせに…。
そして、あたしはカツオが早くみたい。
…ワカメ連れて来たらどうしよう。(ワクワク)
『あの、カツオさんって苗字なんですか?』
勿論あたしは「磯野」を期待MAX。
『只野(ただの)よ。』『ただのカツオさん!?』『フルネームで呼んでいいか?』『煌太!カツオをバカにしないで!!』
「磯野」よりもハイスペックじゃないすか…。
いや、ディスるつもりは全然ないですよ。これで、顔がイケメンだったら全然・・・。
『あ、どもっ!お待たせしました!!』『カツオ!!やっほー!!』『あ!美香たんやっほー!!』
・・・待て待て待て待て。
ん?職質していいかな!?
お前、何歳だ!?
『お前が美香の・・・』佐野さんの顔が、猛烈にひきつっている。これは笑いからではない。・・・怒りからだ。
『カツオ、座って!』『まだだ。挨拶がちゃんとされていない。』『煌太!!』『只野さん、挨拶をお願いします。』
まぁ、あながち佐野さんの言う通り。
・・・まぁ、あたしは笑いを期待してるだけなんだけどね。
『挨拶・・・。あっ、初めまして!!只野カツオです。職業はレンタルビデオのアルバイト、18禁担当の47才!!です!!』
うん。何か事情があるに違いない。
見た目は100歩譲れないけど・・・美香さんが選んだ人。目を瞑ろう。
18禁のビデオレンタル屋のアルバイトを、そんな堂々と言う奴いるかっ!?おん!?
『只野さん、失礼ですが結婚経験は?』『煌太!いい加減にして!!』『はい!!初体験が美香たんです!!』
ゴゴゴゴゴ・・・。
え?地鳴り?・・・違う。佐野さんの怒りが頂点に達した合図。
『美香!!』『何よっ!?』『俺は許さないぞ!!こ、こここここんなっ・・・!!』『佐野さん、落ち着いて下さい。』
佐野さんの気持ちが分からない訳でもない。
穴の空いた偽物スニーカー。何て読むんだ?これ?Newアンバランス!?に、もはや禿げかかっている髪を気にも留めていない落武者。・・・妹であるワカメをぶら下げている。
そして、トレーナーはズボンにイン!!!!
…美香さん、どうしちゃったの!?
『ど、どこで出逢ったんだ!?』『お見合いパーティーだけど!?』『こいつ以外、ろくなのしかいなかったのかよっ!?』『煌太、カツオに失礼でしょ!?』『煌太、美香にはいつもお世話にっ・・・』『ぶっ(笑)』『俺を呼び捨てすんなーーっ!!』
『いや、俺の方が歳上だから大丈夫かと・・・。』
店内の客はあたし達に釘付け。
佐野さんの怒りはヒートアップ。あたしは・・・笑いを堪えるので精一杯。
このカツオって男・・・「面白過ぎる」。
『カツオ、ごめんね。帰ろうか?』『え、何で?俺ラーメン食べちゃいのっ!!』『安部!!帰るぞ!?』『え!?』『煌太が呼んだんでしょ!?ちゃんと責任持ってよねっ!!』
美香さんに怒鳴られ、佐野さんは立ち上がった身体を無理矢理座布団へと沈めた。
『美香たん、もう1人の女の子は誰!?』『煌太の彼女だよ。安部美桜さんっていうの。』『美桜っ!やっほー!!』
軽く殺意が芽生えた瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます