第36話 どんなに言われようが鉄仮面は破れない件について。

『入浴介助終わりましたー。』『・・・』

いつまでこのフルシカト状態は続くんだ?

ゆき主任はどの位話を盛ったんだ!?


『安部さぁーん。』出た。チャラ男。『何?』『昨日、佐野さんとラブホ行ったんすか!?』『・・・は?』『仕事サボッてやるっすねー(笑)みんな呆れてるっすよー。』


なるほどね。そこまで話盛ってるのか。そりゃみんなあたしを毛嫌いするわ。納得。


『どうぞ、お好きに呆れて下さい。』『佐野さん、やっぱり凄かったっすかー!?』『何が?』『アレっすよ。(笑)佐野さん、ドSっぽいっすもんね。そーゆープレイしたんすか!?』


あたしの文句ならいくら言っても構わない。でも。

佐野さんに関するイメージダウンは聞き流せない。

・・・ううん。あたしだって佐野さんを「守りたい」。


『おわっ!!な、なんすか!?』『おい、チャラ男。佐野さんの文句は言っちゃダメだろ。あくまでも上司だよ?』『えっ!?でも、みんな言ってるっすよ!?』『みんな言ってればお前も言っていいの!?だせーよ!?』


「安部っ!!」


チャラ男の胸ぐらを掴んでる現場を、佐野さんに目撃されてしまった。

・・・ヤバい。怒られる。


『あっ!佐野さんお疲れ様っす!!』『・・・誰お前?』『え!?』『新人?まぁ、とにかくしっかり仕事しろよ。』『安部、新人教育も程ほどにな。』『あ・・・、はい。』


おとがめ無し。チャラ男も敗北。

さすがは鉄仮面佐野さん。

これからチャラ男を「新人」って呼ぼーーっと。


『変わり無しの様なので、これで失礼します。』『あ、佐野さん!?』ゆき主任が帰ろうとする佐野さんを引き留めた。


『何ですか?』『佐野さん、昨日安部さんと何してたんですか?』


出たーーー!妖怪根掘り葉掘り女。しかも、直接佐野さんに聞くなんて・・・相当調子に乗ってんな。


『ゆき主任。』『はい。』『それは業務の話ですか?』『・・・え、いえ・・・。』『主任たるもの、仕事中にプライベートの話は如何なものかと。それでは、失礼します。』


はは・・・、佐野さんって凄い。てか、むしろ佐野さんを負かせられる人って美香さん以外にいるのか!?

怒りによって、みるみる顔が真っ赤になっていくゆき主任。

・・・勿論、その怒りの矛先は・・・


『安部さんっ!!』『は、はいぃっ!?』『次の仕事、早く取り掛かって!!』『あー・・・、はい。』


おー恐ろしや。怖くないけど。めんどくさいけど仕方ない。

佐野さんはあたしを守ってくれてる。でも、佐野さんは人気があるゆえ、その火花があたしに飛ぶのは我慢出来る。


1番避けたいのは、佐野さんのプライベート・・・

「佐野煌太はシスコンである。」

これは何としてでも死守せねばならない。


『今日の夜勤は・・・良介か。』

もう一波乱ありそうな予感が半端なく感じる。

でも、あたしはあたし。ちゃんと意志を持ってブレずにいれば、いつかみんなも分かってくれるはず。


あたしは良くても、佐野さんだけは・・・。


そして、昼休憩。

『休憩入ります。』勿論今回も返事はなし。

あたしは休憩室でご飯を食べるのも、他の職員が嫌がるだろうと配慮し、屋上である六階にて1人、ゆっくりと昼食を取る事にした。








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