第26話 夢であって欲しいと思うのに現実であるこのご時世。

『付き合って・・・るんですか!?』 『安部さん、ごめんなさい。良介から「別れたい」って言われたけど、どうしても踏ん切りがつかなくて。思わず携帯を見てしまったの。』『と、いう事は、今跡部さんと良介は一緒にいるんですか?』『うん。良介が「考え直してくれる」って言ってくれたから・・・。』


何なんだ、この状況は!?

みんなして、あたしを弄んでるの?

あたしは、そんなに軽く見られてるって事なの・・・?


『安部さん、良介と別れて下さい。』『あ、あの、明日会う約束してるんですけど・・・。』『じゃぁ、その時に良介を振って下さい。』『あたしが振るんですか?』


佐野さんとのケジメを付け、これからは良介との関係を深めて行こうと思ったばかりだった。

いつも優しくて正義感に溢れてて。

そんな良介が二股するとは、どうしても考えられない。


『跡部さん、本当に良介と付き合ってるんですか?』『信じられないなら、今から良介の家に来て3人で話し合いませんか?』『今から・・・?』


信じたくない。でも、真相を確かめたい。

だけど、これが本当の話だったら、あたしはもう立ち直れない・・・。


『明日、直接良介に聞いてみます。』『そうですか。分かりました。あ、私から電話があった事は秘密にしてて貰えますか?』『・・・分かりました。』


電話を切り、呆然とした時間が過ぎていく。

ハッと我に返ったあたしは、携帯を手に取り良介にLINEをしてみた。


「今、何してる?」


中々既読にならず、モヤモヤするあたしの心は次第にイライラへと変わる。

すると、あたしの携帯にLINEメールの受信音が鳴った。


『良介だ・・・。』画面を開き、良介からの内容を確認。すると・・・


「今、友達と一緒にいた。」


あまりにもザックリとした内容の返事。思わずあたしは、返事を返した。


「友達って誰!?」


普段ならこんなメールを返したりなんて絶対にしない。

相手を信用してないみたいで、とても自分自身が嫌になるから。

でも、今回ばかりは・・・


「美桜の知らない高校の時の友達だよ。」

「暇なの。今から良介の家に遊びに行ってもいい?」

「友達がいるから、今日は無理かな。明日会う約束してるでしょ?」

「今すぐ良介に会いたいの。」


醜いLINEのやり取り。

あたしの中で、良介に対する信用度が徐々に減ってきているのが分かる。

もしかすると、跡部さんが嘘を言ってるかもしれない。

でも、ここまで頑なに断られると、どうしても怪しく思ってしまう。


「今日はどうしても無理なんだ。ごめんね。」


釘を打たれた様なメールの内容。この時、あたしの中で何かが崩れ落ちた。


「わかった。明日ね。」


真実を確かめたい。

嘘であって欲しい。

佐野さんが昨日、去り際に言いかけた言葉が引っ掛かる。

自分の目で確認し、ジャッジしたい・・・。


そう思ったあたしは重い身体をお越し、良介の家へと向かった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る