第27話 弄ばれる女の特徴があたしだという事実。
車を走らせ40分。
あたしは良介が住んでいるアパートの前に到着。
『良介の車・・・ある。』
良介は部屋の中にいる。
それが、本当に高校時代の友人なのか。それとも、さっき電話わくれた跡部さんなのか。
『怖い・・・。』あたしは真実を確かめるべく、良介のインターホンを押した。
『はい。』スピーカーから聞こえてくるのは紛れもなく良介の声。『あたし、美桜。』『えっ!?美桜!?』急に慌て始める良介の奥から、女の人の声が聞こえ来た。
『誰?』
心臓が高鳴り、胸が締め付けられる。
『良介、開けて?』『いやっ、今はちょっと・・・』ドアノブに手を掛けると鍵はかかっておらず、あたしはそのままの勢いでドアを開けた。
すると・・・
『安部さん?』『跡部さん、来ちゃいました。』『えっ!?どういう事!?』
下着姿の跡部さんと、上半身裸の良介の生々しい光景があたしの目に飛び込んで来た。
『良介、高校時代の友人は?』『あ、今ちょうど・・・』『良介、あたしは良介の高校時代の友達なの?』跡部さんが良介に詰め寄る。『跡部さん、すみません。その格好だとあたしも困るので、一度服を着て頂いても構いませんか?』『あっ、そうですね。安部さんごめんなさい!』
跡部さんが慌てて服を身に纏っている最中、良介は顔面蒼白の状態であたしを見つめたまま固まっている。
『良介、どういう事?』『美桜っ、一回部屋に上がって・・・』
『上がりたくもない。汚らわしい。玄関先で充分、説明して。』
着替えを終えた跡部さんも玄関まで着てくれ、泥沼のトライアングルとなった。
『良介、安部さんと付き合ってるの?』『いや、付き合ってるっていうか・・・』『え?良介からあたしに告白して来たんじゃないの!?』『美桜!それはそうなんだけどっ・・・』
しどろもどろの良介。でも、あたしも跡部さんも容赦はしない。
『良介、ハッキリして。あたしと安部さん。どっちが本命なの?』『どっちって言われても・・・』
こんな奴の為に悩んでいたのかと思うと、自分が情けなくなる。
こんな奴の為にここまで車で来たかと思うと、ドッと疲れる。
こんな奴・・・こっちから「願い下げ」だっつーの。
『跡部さん、もういいですよ。』『み、美桜っ!?』『一気に冷めました。むしろ、2度と顔すら見たくないです。』
2人で勝手にラブラブ幸せにやってくれ。あたしをこれ以上巻き込まないで欲しい。
・・・仕事辞めたくてしゃーないわ。
『美桜、待って!!』『うるせーんだよ。このすけこまし野郎が。』『安部さん、わざわざ来てもらってすみません。』『別に跡部さんの為に来た訳じゃないんで。お礼言われる筋合いありません。』
悔しくて涙が出そう。でも、ここで・・・こんな奴等の前で泣いてたまるか。「あたしは遊ばれた。」それならそれでもう構わない。
『良介、今後一切あたしに話し掛けないで。』『待って美桜!!』『待たねーよ。分かった!?あんたみたいなクズと一緒にいると熱が上がるから帰るわ。』
本当ならビンタの一発位お見舞いしてやりたい気分だった。でも、今まで少なからず助けられた一面もあったのは確か。
『良介、さようなら。』『え、ちょっと美桜!?』『跡部さん、お幸せに。』
視線を合わせる事なく、あたしは部屋を飛び出し車に乗り込んだ。
『あー・・・だる。』涙がこぼれる。これが悔し涙なのか、悲し涙なのか。自分では判断がつかない程、あたしのメンタルはズタズタだった。
『帰ろ。』ボーッとする意識の中、あたしが車を止めた場所は職場の職員専用駐車場。
『・・・何でここに来ちゃうんだろう。』車の中で声を出しながら泣きまくるあたし。
すると、「コンコン」と、窓ガラスを叩く音が聞こえた。
あたしは顔を上げ、窓越しにいる相手を見た瞬間、車を飛び出し思わず抱き付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます