第10話 やらかした後の罪悪感は半端ないけど、腹立つもんは腹立つ。

『ん?・・・やばっ!!』目が覚めたあたしに飛び込んで来たのは、カーテン越しの明るさが『お前寝過ぎだろ』と教えてくれてる位の、もはや『朝』。


『えっ、今何時!?6時半!?』


小久保さんと入れ違いで休憩に入ったのが夜の11時。記憶があるのは、夜中の一時過ぎ位・・・。

完全にや・ら・か・し・た。


『小久保さんっ!!ごめんなさいっ!!』『あ、美桜おはよう!』『良介っ!?』『安部さん、良介君が安部さんの代わりに全部してくれてたよ?体調でも悪かったのかな?大丈夫!?』


体調なんてわるくありません。・・・気分は悪いですが。

いや、それより!!良介に迷惑を掛けてしまった。突然情緒不安定になって泣いて、腹減りすぎて食べ物全部むさぼり尽くして。満腹になって寝るっていうね。


・・・生まれたての赤子やないかい。


『良介!ごめんねっ!本当にごめん!!』『俺は大丈夫だよ。小久保さんも手伝ってくれたし。』『小久保さん、本当にごめんなさい。』


頭下げたくないけど、とりあえず下げてみた。


『気にしないでいいよぉ。ゆき主任には内緒にしておくね!!』『あ・・・、ありがとうございます。』


100%あたしが悪いですが、胸糞悪いです。

いや、でもあたしが悪いんです。


『良介、後はあたしがやるから休んでて。』『いいよ、大丈夫。だって、もうすぐ7時でしょ?勤務時間になるし。』『・・・ほんっとにごめんなさい。』


二日間風呂に入っていない挙げ句に、顔もいい加減パリパリ。汚女子代表と言っても過言ではない。

そんなあたしにキラキラした笑顔を突き付けてくる良介の笑顔は朝日に照され、神様の様に見えてしまった。


そして、バタバタと利用者様をお越しに掛かり始め、7時半。朝食の時間があっという間にやって来た。良介は東フロアへと向かい、あたしは通常運転で東フロアの食事介助に全力を尽くす。

『安部さん、私西フロア手伝って来ますね。良介君、休み無しで働いてたから疲れてるだろうし。』『そうですね。あたしは腐る程寝たので大丈夫です。宜しくお願いします。』


小久保の(もはや呼び捨て)のサラリとした嫌味をスルリと交わし、あたしは名誉挽回を図る為、無心で利用者様の介護にあたった。そして、8時。『おはようございます。』パートの高橋さんが姿を現した。『高橋さん、お疲れ様です!』『介助、手伝いますね。』


助っ人参上。高橋さんは、あたしのお母さんと同じ位の年齢だが、とにかく動くし気が利くし。フットワークが軽い。


・・・何より優しい。


『安部さん、疲れてるんじゃない?大丈夫?』『寝過ぎて疲れてるんだと思われます。』『無理しないでね。体が1番だよ?』『その言葉、そっくりそのまま高橋さんにお返しします。』


高橋さん登場のお陰で朝食タイムはなんらくクリア。後は、利用者様に歯磨きを促し、入浴までゆっくりしてもらう。

時刻は8時半過ぎ・・・。勤務終了まであと1時間。あたしはラストスパート目掛けて利用者様の介護に携わりながら、昨夜の爆食したのが原因での胃もたれと戦っていた。

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