第9話 腹が減っては戦が出来ぬとは本当の話。
『・・・腹減った。』丸一日何も食べてないあたし。こんな時は、チャーシューと味玉追加の味噌ラーメンをがっつきたい。
でも、今日は寝坊してしまってコンビニに夜暇もなく、夜食も用意してない・・・。
『休憩室に誰かのカップラーメン無いかな。』もうすぐ小久保さんと休憩のバトンタッチ時間。あたしがデスクで背伸びをしながらあくびをしていると、フロアのエレベーターが開き、良介らしき姿がフロアへと近付いて来た。
『美桜!!』『やっぱり、良介じゃん。どうしたの!?』『もう休憩終わった?』『ううん、まだ。今小久保さんが・・・』
もしや、あの発言の後での良介のこのタイミングは、あたしにとって何かしらの不利になるのではなかろうか?・・・と、そう考えている間に、小久保さんが休憩室から姿を現した。
『あ、良介君!!どうしたの?』『小久保さん、お疲れ様です。安部さんと小久保さんにデザートの差し入れ以て来ました。』『えぇーっ!?嬉しい!!ありがとう良介君!!』
ほらね。反吐が出るくらいの代わり様。よくこんなに切り替えられるな。・・・スイッチどこについてんだ?
『良介君って、優しいね!ね?安部さん。』『そうですね。』『良介君の彼女になったら、幸せになれるんだろうなぁ。』『小久保さん、次あたし休憩入っていいですか?フロアの監視、宜しくお願いします。』
イライラがこれ以上上昇しない様に必死だった。わざとらしい、あざとい女。それに気付かず、施設内の男共は『小久保さん、可愛い』とはやし立てる。あたしには到底出来ない至難の技だ。
『美桜、俺も一緒に居ても大丈夫?』『いんじゃない?』『・・・何か怒ってる?』『怒ってたとしても良介じゃないから安心して。』
これから二時間の休憩を取る。腹が減っているせいか、余計にイライラが酷い。『美桜には、デザートの他に夜食も買って来たんだよね。』『え!本当!?』『おにぎりとカップラーメンだけど。』『良介君ナイス!!』
機嫌治ってもうた。単純と言われてもいい。
『あたしは腹が減ると機嫌が悪くなる女』らしい。
『美桜、小久保さんと夜勤だったんだね。良かったね。』『何が良かったね?』『仕事出来る人で有名じゃん。』『あ、そうなんだ。興味ないから全然知らなかったわ。』『・・・ねぇ、美桜。小久保さんと何かあったの!?』
あったあった。愚痴りたい位あった。
『佐野さんにちょっかい出さないでね。』だと?
何様なんだあの女。言われなくたって、恐れ多くて佐野さんにちょっかいなんて出せないわ。
でも、こんな事でイライラしてるだなんて、良介にはとてもじゃないけど言えない・・・。まだ傷付けてしまう。
『お腹空いてイライラしてた。』『美桜らしいね(笑)俺、帰った方がいい?』『ううん、良介さえ良ければ、休憩時間一緒にいて欲しいかな。』『良かった。俺、明日早番だからこのまま美桜の手伝いして仕事に入るよ。』『え!?それは疲れるからいいよ!』『いいの。俺が美桜の側にいたいんだから。』
何でこんなにも良介は優しいのだろう。どうして、良介はこんなあたしを好きでいてくれるのだろう。全然女らしくないし、ガサツだし。風呂入ってないし。良介の彼女として、もっとちゃんと良介を大事に想わなきゃいけないのに。
なのに、どうして今も佐野さんの事が頭から離れてくれないの・・・?
『美桜?・・・えっ!!泣いてるの!?』『ごめんっ・・・、気にしないで。』『え!?俺、何か美桜にしたかな!?ごめんね!?』
優しさが辛い。小久保さんの上から目線が悔しい。
・・・自分が本当に情けない。
色々な感情が混ざり会い、不覚にも良介の前で泣いてしまったあたしは、良介が買ってきてくれた夜食を爆食いし・・・いつの間にか寝てしまっていた。
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