第六十五話 歩行要塞攻略(2)
『
AIが告げる声がコックピットに響くが、メイン・モニターに映るサイケデリックな虹色の星空はそのままだ。現在、"カリバーン・リヴァイブ"は件のレイス星系の外縁部を光速の九十九パーセントというすさまじい速度で航行している。もちろん、スラスターで加速したのではなく
「おっとり刀で出てきた甲斐がありました、先手をとれましたね」
そう言ってニヤリと笑うのは、
その上、周囲の星系に敵部隊の反応は少ない。偽装された伏兵が多少いる可能性はあるが、足の速い部隊だけで出撃しただけあって敵主力の増援より早くレイス星系に到着することができたのだ。
「第七七、七九ストライカー戦隊はマガ星系への接続宙域を封鎖!」
シュレーアの指示を受け、銀輪を背負った無数のストライカーが輝星たちの集団を離れて進んでいく。統制の取れた動きだ。それもそのはず、連れてきたのは皇国最精鋭の部隊だ。ここで
そして輝星たちの周囲に残ったのは、数十機程度の少数だった。しかも、そのほとんどがライドブースターの代わりにバイクを思わせる形状に変形した
「さて、包囲網は作りました。あとは獲物が網にかかっていればいいのですが……」
とりあえず退路はストライカーの大部隊でふさいだものの、すでにこの星系から
「しかし、姿の見えない敵ってのは厄介っすね。偵察艦隊の連中ですら発見できなかったってんだから……」
「地表への走査を行っている最中に奇襲を受けたのでしょう。流石にあの巨体、小惑星程度の質量で隠しきれるものではない」
「なるほどな。撃たれる前に撃てと判断した訳っすね」
サキが唸った。攻城砲並みの威力の主砲で先制攻撃を受けたりすれば、大部隊とはいえ大きな損害を受けるのは避けられない。
「おい、北斗。敵の位置ってわかるか」
「わかる」
「マジかよ」
駄目もとで聞いたにもかかわらず、当然のような口調で帰ってきた答えにサキは絶句する。
「アクティブステルスでは殺気は遮断できないワケよ。 大丈夫だ。連中、まだあの小惑星に居る。さっさと片付けよう」
「便利なことこの上ないな……あいあい、援護は任せとけ」
こうして、別動隊は小惑星b1へと向かう。亜光速の速度をもってすれば、目標の星はすぐ近くだ。あっというまにジャガイモのようなデコボコした形状の小惑星がメインモニター上に現れ、どんどんと大きくなっていく。
『重力影響下に入りました。巡航モード解除。通常航行に移ります』
自動で亜光速航行が停止し、各機の背に展開していた銀色のリングが消失した。
「敵は……さすがにこの距離では目視確認は無理ですか。光学迷彩を装備している可能性もある。注意しなくては」
「殿下、先頭は俺が。悪いけど、今回の作戦は俺に指揮を任せてほしい。たぶん、この中で
「問題ありません、任せました」
取り回しが悪く、建造費もかさむ
「男の指揮下で戦うなんて!」
砲兵隊のパイロットが侮蔑もあらわに吐き捨てた。輝星は成果を上げているだけあって、皇国軍内ではある程度評判がいい。しかしその性別を理由に嫌うものもまた少なからずいた。
「じゃあいい! 俺に指示されたくない人は勝手に動いてくれ!」
とはいっても、輝星としてもこの手の反応は慣れたものだ。ニヤリと笑ってそう返すと、しばし砲兵隊が騒がしくなる。しかし、さすがに実戦下で喧嘩別れするような愚を犯すものはいなかった。
「し、失礼しました。あとでこの馬鹿には謝らせておきますので」
話をまとめた砲兵隊の隊長がこほんと咳払いし、申し訳なさそうに言った。
「なんであたしが謝らなきゃ……」
「馬鹿! 子供じゃないんだからわがまま言わないでよ!」
「重ね重ね申し訳ない……」
「ごちゃごちゃ言ってる場合か! 距離五万、そろそろ敵のキルゾーンだ……」
業を煮やしたサキが文句を言った瞬間だった。突然、輝星の鋭い声が飛ぶ。
「全機
次の瞬間、漆黒の宇宙に真紅のビームの奔流が走った。
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