19:正装

 中性的な美貌が明るい黒髪に緋色の虹彩をもつ澪はタキシードを纏いアレン城で開かれた舞踏会に出席している。会場ではセレナの交響楽団が優雅な円舞曲を奏で煌びやかドレスを纏った女性達は裾をはためかして踊っている。


「澪」


 同じタキシードを纏った中性的な美貌が儚い白髪に黒曜の虹彩をもつ霧は片手に持っていたワイングラスを差し出す。


「ふぇ……ありがとう」


 受け取ったグラスを口へと運びグイッと白ワインを飲み干した。


「しゃんとなさい、澪」

「無理だよぉ……僕、昔からこういう場所苦手だもん」


 踊れないし。と付け足し溜息を漏らす。


「はぁ……。兄さんは凄いよ。さっきから女の人をとっかえひっかえで踊ってる。然も誰よりも優雅で美しい。僕が弟じゃなかったら見惚れているね」

「兄様は僕達と違って器用だから」

「霧だってかっこいいよ。踊っている姿は兄さんに引けをとらないくらい優雅で、惚れちゃう」

「屋敷に居た頃、澪の代わりに嫌と言うほど仕込まれたからね」


 埴輪のような形相でションボリしながら澪は溜息を漏らす。


「……此の場は兄様達に任せて、少し抜け出そうか」

「うん!」


 白と黒の双子は其の場をこっそり抜け出した。


   終

 ――――――――――

 あとがき


 閲覧ありがとうございます。

 誤字脱字ごめんなさい。


 19日目のお題は『正装』でした。タキシードくらいしか思いつかなかったので取り敢えず双子に着せてみました。こう言った社交の場では霧が最もうまく立ち回れます。夕霧さんはマスコット的な意味合いで参加させられ、双子は道連れですが其の分レイラから依頼料ふんだくれるので……。


20200919

 柊木 あめ。

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