12:いちゃいちゃする

 場所はヴェルダン城の庭にある東屋。絨毯の上に置かれた沢山のクッションに身を預けて見上げる天井には幾重にも張り巡らされた蜘蛛の巣を彷彿させる鍾乳石飾りが日の光を透かしている。木々の枝葉をザワザワと揺らす風は微かに冷え、夏の終わりを告げていた。


「もう秋か……」


 灰色の髪をハーフアップにし長めの前髪の片側をオールバックにしたオルハ――ワイシャツに薄緑で裾が長い上着をはおり黒のズボンを穿いている――は言いながら腹部に乗っかっている頭を撫でる。暫くそうしているとモゾモゾと身体が動く。


「霧もそうだったが、お前達は何故人の上に乗りたがる」

「……人肌が恋しいだけだろ」


 まるで他人事のように返す低く落ち着いた声音を返すのは冷やかな美貌が中性的な夕霧は騎乗し緋色の視線で見下ろした。


「夕霧もそう感じるのか?」

「さあ? どうだろうな」


 ワイシャツの裾から侵入した両手が直接腹部に触れる。


「少し筋肉が落ちたんじゃないか」

「やっぱりそう思うか?」

「ああ。腹部が前よりも柔らかい」

「ぁ……其の触り方、やめてくれ……」

「ん?」

「ちょ、夕霧……」


 反射的にプルプル腹筋が揺れた。


「……意地悪……」


 意図せずともピクピクと腹筋が疼く。


「んっ――」


 徐々に上昇する心拍。紅葉する頬。


「ぁ――」


 微かに色を含んだ吐息が自身の口から漏れていく。そうこうしている内に裾を捲り上げられ晒された腹部。跨ぐ位置を下にずらした夕霧は腰を折って顔を埋めた。器用そうな舌先が腹筋をなぞる。やがて到達した臍の輪郭をなぞり、其の付近をチロチロチロチロを舐められピクピク、ピクピク腹筋が笑う。そして最も柔らかい部分に、ちゅ。と口付けられ、離れ際に夕霧の薄くも形の良い唇がプルプルと揺れて、ぶぅ~。と間の抜けた音を立てると共に微振動が皮膚の表面をプルプル揺らす。


「あはっ! くすぐった――」


 夕霧は其れを数回繰り返し、満足したのかオルハの隣にゴロンと横になった。


「夕霧」

「ん?」

「もうよいのか?」

「何が?」

「私に触れなくて、よいのか?」

「……触れてほしいのか?」

「質問を質問で返すなと教えたのはお前だぞ、夕霧」

「そうだったか。おいで、オルハ」


 腕に誘われる儘に近寄ると、ぎゅぅ。と抱きしめられ、ドッドッドッドッと心拍が上昇する。其れを誤魔化すように片腕で夕霧の腰を撫で、尻に触れた。


「……相も変わらず夕霧はよい尻をしている」

「お前は肉が落ちたな」

「はぅっ! なんちゅう触り方を――」


 重なる唇が言葉を奪う。


「…………」

「…………」


 見つめ合う視線。相も変わらず夕霧は無表情だが、虹彩に浮かぶ熱の所為か目つきがいつもよりも柔らかい。再び交わされる接吻は何方からともなく深いものへと移ろっていく。


   終

 ――――――――――

 あとがき


 閲覧ありがとうございます。

 誤字脱字ごめんなさい。


 12日目のお題は『いちゃつく』でした。互いに身体に触れたりしながら戯れる様だそうです。夕霧さんのスキンシップは時折迷走します。オルハが可愛くて愛しくて仕方がないので兎に角触れたい、ちょっかいだしたい。其の結果が肉笛。


20200912

 柊木 あめ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る