10:獣耳(衣装でも/生やしても)
ある日のろすときんぐだむの噴水広場。
「おや」
そう声を漏らしたのは脹脛の半ばくらいまで伸びた白くふっさりした長髪を後頭部で一つに結った垂れ気味赤目の優男風な青年、白兎――向かって右目尻に黒子がありネイビーのスーツ姿――だ。
「お」
ほぼ同時に声を漏らしたのはさらやかな黒髪ショート――向かって左の前髪と横上の中間に紫と桃色のメッシュがはいっている――に同色のネコミミが生えた黄緑の虹彩をもつ美少年、チェシャ猫。今日も黒のゴシック調の装束がよく似合う。
「…………」
そんな二人を無言で見やるのは中肉中背で黒いスーツを纏った青年。黒兎と呼ばれる通り黒いウサギミミを生やし、黒の長髪を低い位置で結い赤い虹彩をもっている。
3人は絶妙な距離を保って三角形を作るように立ち止まった。
「お前ら珍しいな。アリスは一緒じゃないのか」
チェシャ猫が尋ねると、白兎と黒兎は互いに顔を見合わせる。
「おたくのアリスなら、今し方白い男と一緒に居たのを見たが」
「其方のアリスなら向こうで青髪の吸血鬼に絡んでいましたよ」
同時に言葉が紡がれ、
「吸血鬼!?」
「男!?」
同時に焦りが浮かぶ。
「すまない、白兎。助かった」
「いいえ、此方こそ。ありがとうございます」
互いに握手を交わしてから走り去って行く背を見送るチェシャ猫は溜息を漏らす。
「兎って大変だな」
退屈そうに呟き大きな欠伸を漏らすと、聴覚がとある声を拾いネコミミがピクピク動き、尻尾がブワッと逆立った。
「チェシャ猫ぉおおおおおおおおお!? 今日こそファンシーうさぎちゃん白銀ヴァージョンの仇をとらせてもらうわよぉおおおおおおお!? おいゴルァ何処行った! 出てきなさい! チェシャ猫ぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」
遠くで鬼のような形相をしたスタイルのよい女性が周囲を窺っているのが見え、チェシャ猫は慌てて空気に溶けるように姿を消した。
終
――――――――――
あとがき
閲覧ありがとうございます。
誤字脱字ごめんなさい。
今回はお題が[獣耳]だったので【契約のアリス】に出てくるケモミミ三人衆を登場させました。本編では白兎とチェシャ猫がメインで、黒兎はちょろっと出てくるだけです。アリス本編の方は加筆修正中なので途中までしか掲載していません。サイト消滅後にシブとかに掲載するかもしれません。その時はツイッターで報告とかするので、お付き合いしていただけたらよいな、と思ったりします。
20200910
柊木 あめ。
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