43.遺跡の守護者
外界と隔絶され、日の光すら差し込まない真っ暗なレテ遺跡の内部。
松明の明かりだけを頼りに、プリーシード一行は石壁に囲われた通路を慎重に進んでいた。
「ん~、以前調査に訪れた時とは明らかに違いますね」
先頭を行くアシュリーがふと立ち止まり、怪訝そうな表情で辺りを見回す。
だが、視界の中で動きを見せるのは、壁を這う虫と、足元で忙しなく走り回っている鼠だけだった。
「何か変わったのか?」
「ただならぬ魔力を感じます……用心した方が良いかもしれません」
魔道士であるアシュリーには、常人とは違った感覚で空間を捉えているのだろう。
ヴィンセントの問いかけに応えた彼女は、厳戒態勢のまま慎重に歩を進める。
また暫く、沈黙が場を支配した。
頭上の暗闇に紛れていた蝙蝠が飛び立ち、リネットからヒッ!と悲鳴が上がる。
「よーし、遺跡で肝試しでもするかぁっ!」
そんな彼女の様子を見て、ジークは悪戯に笑った。
「しーっ! ジーク、声が大きいよ!」
口元に人差し指を立て、ジークを窘めるリネット。
相変わらず奔放な二人を振り返ったヴィンセントは、「言いつけを守れないのか」と鋭い視線で釘を刺した。
「もぉ~っ、ジークのせいで怒られちゃったじゃない!」
「はは、悪ぃ悪ぃ……でもよぉ、肝試しするには持ってこいの場所だと思うんだよな~」
リネットは恨めしそうにジークを睨む。
しかし、彼は相変わらず飄々とした態度で、そこら中に視線を遊ばせていた。
「確かレテ遺跡は、セレスティア王家のお墓だって聞いたけど……」
アリアはそう言って、アシュリーが話していたレテ遺跡に関する情報を思い返していた。リネットやジークもその場にいたはずなのだが。
「えーっ、そうなの?」
「ほら、やっぱりそうじゃねぇか」
まるで初めて聞いたかのような反応をするリネット、そしてアリアに乗じて適当に話を合わせるジーク。
二人とも、普段から人の話を聞いていないと言うことだ。
「おいアシュリー、また扉があったぞ」
そんな部隊後方とは打って変わり、黙々と任務にあたっていたヴィンセントたちの前に新たな扉が現れた。
「んんっ、ふぬぬぬぬっ!! ……はぁ、ダメね。ここも開かないみたい」
早速エレンが力いっぱいこじ開けようとするが、固く閉ざされた扉はビクともしない。
だがその堅牢さは明らかに、魔法によって守られたもので―――。
「あぁ、無理に開けようとしない方がいいです」
小さな魔女が警告するも、それは時すでに遅く。
―――ゴゴゴゴゴゴゴ……
通ってきた道の奥の方から、巨大な岩が崩れたような音が響き、地鳴りが遺跡を揺らした。
「ん? ……何の音?」
突然の異常事態。やがて地鳴りは規則的に鳴り始め、その音は段々とこちらに接近していた。
―――ドシン、ドシン……
まるでそれは、巨人の足音の様だ。
「えっ、あたし何もしてないよーっ!?」
普段、真っ先に疑われるリネットが先んじて抗議の声をあげる。
対して思い当たる節があるのか、「私のせいかも?」とエレンは頬を掻きながら苦笑いを浮かべていた。
背後に目を凝らしていたジークは、自分たちに向かってくる者の姿を目視し危険を知らせた。
一行が身構えたのが早いか。その巨体が暗闇から姿を現したのが早いか。
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