(四)-2(了)

 辰巳は発泡スチロールの箱の蓋を開け、箱を店の台の上に載せた。二つ、三つ、四つと次々に乗せていき、すぐにターレーの荷台が空になった。

 台の上に乗せられた箱から魚を取りだし並べていた若手の木場はそれを見て「ちょっとちょっと、辰巳さん早いっすよ」と辰巳の方を見た。

 辰巳は「どんどんやれ」と、ターレーの運転席に座った。

 同じく別の台のところで魚を並べていた千川が言った。

「今日はもうすっかり元気になったみたいですね」

 辰巳は「おうよ」と返事をしてターレーを発車させた。

 ターレーは、人と物がせわしなく動きざわつく市場の中を走って行き、建物を出た。

 白み始めている空の下を一つ目の前照灯が道を照らしながらターレーが走って行く。

 運転する辰巳の目線も道の先をしっかりと見つめていた。


(了)

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夜明けのターレーが運ぶもの 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

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