(三)-2
連絡帳の開いたページを見てみた。そこには息子が作文コンクールで金賞を取ったと書かれていた。
辰巳は再び原稿用紙を見てみた。題名は「おとうさん」だった。息子の字はきれいとは言えなかったが、十分読むことができるものだった。内容は父の仕事についてであった。朝早くから仕事に行き、市場で競りや取引をして、お客さんに売る大事な仕事だと。魚についてたくさん知ってお客さんに喜んでもらえるように、毎日がんばっている。そんな僕もお父さんみたいな仕事をしたい。そう、書かれていた。
辰巳の目から涙がこぼれ、頬を伝って降りていった。さらに涙は大粒になった。テーブルの上に落ちた水滴はミルククラウンを一瞬作った後、小さなため池になった。辰巳はいくつもいくつも、それを作った。
(続く)
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