(三)
辰巳は帰宅すると寝室に入った。ウインドブレーカーを衣紋掛けに掛け、内ポケットからくしゃくしゃにしおれた辞表の封書を取り出した。タンスの上の引き出しから便せんとペンを取り出し、ダイニングに戻りテーブルに着いた。そして辞表を書き直した。
書き終えると、大きくため息を一回ついてから、テーブルの上に置かれた連絡帳をパラパラとめくった。書かれている最後のページで手を止めた。
そのページには紙が挟まれていた。二つ折りになった二枚の原稿用紙だった。それを広げて見てみた。勇男のサインがあった。勇男が書いた作文だった。
(続く)
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