(二)-21

 翌日、辰巳は競りを終えていくつもの発泡スチロールの箱をターレーの荷台に載せて店まで運んできた。そこで、ちょうど出勤してきた上司の市川の姿を見つけ、ターレーから降りながら声を掛けた。上着の内ポケットから昨晩書いた辞表届の封書を取り出して渡そうとした。しかし市川に「忙しいので後にしてくれ」と言われてしまった。そもそもこの時間は仲卸に商品を買いに来る人を迎える準備で忙しい時間でもあった。

 この日もまた、辰巳は仕事を終えると千川とともに市場の門を抜けた。駅へ向かう道すがら、この日も千川は飲みに誘ってきた。辰巳は「悪い、今日はそういう気分じゃないんだ」と言ってそれを断って地下鉄の入り口で千川と別れた。


(続く)

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