(二)-14

 授業はまだ始まっていなかったこともあり、保護者たちは知り合いの人たちや、初めて会う人と軽く挨拶を交わしたり、世間話をして多少ざわついていたりしたが、辰巳の大声でその話題はこの二人に切り替わったようだった。

「何、あの方は」「お仕事の途中だったのかしら」「授業参観を何だと思ってらっしゃるのかしら」「うちのクラスにあのような方の子どもがいるの?」などの声が聞こえた。

 そして、すぐ斜め後ろに立っていた黒いロングヘアーで、白で花柄のワンピースを着た若い女性が、レースのフリルが付いたピンクのハンカチで口元と鼻を押さえながら「失礼ですが、あなた、なにかにおいますよ」と不意に言われた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る