(二)-13

 辰巳はあくびをしながら授業が始まるのを待っていた。

 子どもたちは皆、そわそわしていた。後ろを振り向き自分の親が来ているかどうか確認したり、誰がどのクラスメートの親なのかを話したりしていた。

 辰巳と一羽は勇男の姿を見つけた。一羽は手を振り、辰巳は「しっかりやれよ」と大きな声で勇男に言った。勇男も両親に手を振った。

 辰巳の声は大きく教室内に響いた。そのためか、子どもたちだけでなく保護者の耳目も集めてしまった。その視線に気づき、辰巳は小さめの声で周囲を見ながら「失礼」「失礼」と三回会釈した。


(続く)

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