第14話 進路と卒業式準備

 本格的に未来さんが帰ってきて2日が経った。

 その間は美人な幸子と可愛い未来さんの二人に癒されながら過ごした。

 きっと未来さんの部屋の中に見えたアレは何かの間違いなんだろう...。

 俺と幸子がフルタイム+残業で働いてても帰ったら未来さんが夕食を作っててくれるし「よーしパパ養っちゃうぞー」とか思ってしまうぐらいに幸せな日々だった。

 そうは言っても未来さんも就職しないといけないし熊本の内定は辞退してしまったので卒業までの間になんとかしないと、と三人で話し合った。


「正直俺も幸子も部長級の給料なので金銭的に未来さんを養うのは問題ないんだがせっかくの新卒で職歴無しっていうのは勿体ないなぁ」


 俺がそう言うと。


「確かにお母さんや昭彦さんのためにご飯作って待ってるのも悪くないけど自分で使うお金は自分で稼ぎたいし残業のない事務職とかが良いのかな?」


 未来さんに聞くと高校時代に簿記検定の3級は取ってあるという事だし中小企業の事務ぐらいはこなせるだろう。


「でもせっかくだから何かやりたい事とかないの?お金に余裕があるからこそあなたがやりたい仕事を優先しても良いのよ?」


 と、幸子が母親らしい事を言う。

 確かに俺も同意見だ。


「本当にやりたい事があれば今から専門学校に行ってもいいと思うけどな、バイトもできるし専門知識も得られるから」


 元々短大に2年しか行ってないのでまだ二十歳だしもう少し学生でもいいんじゃないかと思う。


 俺がそう言うと未来さんが。


「実は...調理師の資格も欲しいんです、二人にご飯作るのも楽しいし持っておいて損はないのかなって」


 という事で早速手続きをすることになった、3月頭でギリギリだが市内の調理専門学校に問い合わせたところなんとか間に合うとの事だったので卒業後4月から通う事で話がついた。


 ちなみに学費は俺が出すと言う事で落ち着いた、幸子は自分が出すと言っていたのだがそもそもの原因が俺だし家計も一緒になっているから随分と余裕もあり貯金で楽に払えるからだ。

 名目は二人の家に住まわせてもらってるから未来さんの学費ぐらい出させてくれって事にしたけどな。


 幸子が席を外した時に。


「ありがとうございます昭彦さん、私のためにすみません」


 って未来さんが言ってきたけど。


「そもそもの原因が俺だからね、ちょっとはカッコつけさせてよ」


 と言うと。


「もう、昭彦さんは元々カッコいいんだからこんな事されたら一生離れられないでしょ」


 と腕にしがみついてきた。

 うーん、程よい感触。

 シャツとブラ越しでもふんわりとした感触が感じられて腕が幸せ...じゃない!


「コラコラ、こんなとこ幸子に見られたら誤解を招くだろ?」


 と言うと。


「大丈夫ですよ、感激した娘がパパに甘えているだけにしか見えませんから。

 もちろん私は違う意味で当ててますけどね」


 と言われて困惑する。

 いくら初めての相手で仲がいいと言ってもそれこそ親子ほど離れたおっさんだぞ?


「そんな事言って未来さんの同級生とか友達にカッコいいとか優しいとか気になる男の子は居ないの?」


 俺がそう言うと未来さんは。


「カッコいいも優しいも昭彦さん以上の男の人って居ませんから」


 とニッコリ笑った、うーん。


 やがて幸子が手洗いから出る音にササっと元の位置に戻る未来さん、こういうところが侮れないんだよなぁ。


 そんなこんなで未来さんの進路も決まり、日常に戻って次の金曜日、夕食の場で幸子が提案した。


「明日は二人とも休みだし未来の卒業式の袴選びに行きましょうか?」


 どうやらレンタルして袴で出席するらしく卒業式前の最後の週末という事でみんなで行こうということになった。


 ちなみに卒業式当日は二人とも休みを取っているので揃って出席する予定だ。


 翌日の土曜日、俺たちはまたバスに乗って天神へと繰り出した。


 車はあるのだが天神に車で行ったところで結局駐車場から歩きになるのでバスで向かった方が何かと便利なのだ、もちろん大きな買い物なんかは車で行くんだけど。


 天神に着いた三人は貸衣装屋に向かう、幸子が新年や和式のパーティに呼ばれる時によく使う店があるという事でその店で借りるように予約してあるんだそうだ。


 お店に着いた俺たちだが女性二人のはしゃぎっぷりに一歩引いて待つ俺。

 アクシーズファムでもしていた「判断を仰がれるまでは少し離れる」を実践しているわけだ。


 やがて今選べる中から3種類ほど選んだので試着をするという事で試着室の前で待っている俺。

 流石和服を扱う貸衣装屋だけあって試着室も二人以上入れる広さらしく幸子も一緒に入っている。


 シャッとカーテンが開いて目に飛び込んできたのは...。


 大正レトロ感のある黄緑の袴に赤い上着の未来さん...と大きな柄のついた上着にワンポイント付きの袴のガーリーな装いを着た幸子だった。


「いやいやいや、何で君まで着てるわけ?」


 俺のツッコミに幸子は。


「何着も着替えるの大変だからモデルよモデル」


 そう答えるけどメチャメチャノリノリだしすごく嬉しそうだな。

 何よりすごく似合っててちょっと押し倒したいぐらいでもある。


「もー、メインは私でしょー?

 お母さん張り切りすぎ」


 ほっぺをプクッと膨らませた未来さんも可愛いな。


「ゴメンゴメン、貴女の歳の頃に昭彦さんと出会ってたらって考えちゃったらついはしゃいじゃった」


 という幸子に。


「ダメ!そしたらお父さんより昭彦さん選んじゃうから私が生まれて来ないでしょ?」


 と怒る未来さん。


「それよりどうですか?この袴?」


 と聞かれたのでじっくり見直す。


「いいと思うよ、今の人気アニメのおかげで大正時代が話題だし美人のレトロ衣装ってのもオツなもんだしね」


 と俺がいうと。


「もう...すぐ美人とかいうんだから」


 と、頬を染めて嬉しそうに言う。


 幸子がん?って顔をした途端。


「褒めてくれてありがとう、パパ!」


 って子供みたいな顔をして言う、こう言うところが強かだと思う。


 こっちとしてはヒヤヒヤするので幸子の前でそういうのはやめて欲しいというかそもそもこういうのは気まずいんだけどな。


 俺の一言もあってか袴も無事決まり卒業式前日に取りにくることに決まったので俺たちは店を後にして昼食に。


「あー、今日はがっつり食べたい気分ねぇ」


 という幸子に俺も。


「そうだな、肉とか良いな」


 と言うと未来さんが。


「それならこの前通ったあそこ行きません?」


 と言われて思い出した、やっぱりステーキだ。

 そのやりとりを見て幸子が。


「性格が合わない事はないと思ったけど二人がすぐに仲良くなるのは意外だったわ、まるで昔からの友人みたいね。

 お母さんの恋人取らないでよ未来」


 と戯けていう幸子に。


「取らないわよ、私たち三人ずーっと一緒なんだから」


 と言う未来さんの言葉に言いようのない重みを感じるんだが気のせいだろうか?

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