第10話 何故か始まるファッションショー
「はいカタの玉と半玉一丁!」
大将がそう言って持ってきた替え玉を白に替え玉、黒に半玉を入れる。
「しかし元気な大将だね」
俺が言うと未来さんは。
「大将さんのエピソードがあるんですけど聞きます?」
と言ってきた。
大将いい人そうだし人情味溢れるエピソードとかかな?聞いてみたい。
「どんなエピソード?」
俺が聞くと未来さんは。
「この赤ってあるじゃないですか?私の友達が大将さんに『赤ってどんな味なんですか?』って聞いたら『わからない』って言われたらしいんですよ」
へー、なんかスープの味見は欠かさないみたいな雰囲気あるけどな。
「友達が『なんでわからないんですか?』って聞いたら『俺辛いの苦手やもん』って言われたらしいです、意外ですよね」
確かに、強面ダンディな大将が言いそうにない台詞だ。
「面白いね、あんなにかっこいいのに辛いの苦手なんだ、ちょっと可愛いな」
俺が言うと未来さんは。
「ですよね、私も聞いた時驚きました」
と言った後に。
「私は昭彦さんの方がかっこいいと思いますけど」
と言った。
うーん、俺ただのおっさんなんだけどなぁ。
そんなこんなで食事を終えた俺たちは。
「ご馳走様でした!」
と言って店を出ると。
「ありがとうございました!またよろしく!」
と見送ってくれる大将。
この店はまた来なきゃいけないな。
帰りのバスに乗るためにバス停に向かう俺たち。
「あの...昭彦さん...危なく無いように手を繋いで良いですか?」
と言われて返事をする前に恋人繋ぎで手を握ってくる未来さん。
なんで女の子の手ってこんなに柔らかいんだろうな。
バス停までたわいも無い話をしながら歩きバスに乗って家に帰る。
「ただいまぁ」
幸子はまだ遅くなると連絡をもらっているから誰も居ないのはわかってはいるんだがついつい只今の挨拶をする俺。
「お帰りなさい、今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「いや俺も良い店を教えてもらったからWin-Winだよ」
そんな軽口を叩きながら玄関からリビングへ。
リビングでしばらく寛いでいると。
「じゃあ私お風呂入ってきますね」
未来さんが言うので。
「ああ、ゆっくり入っておいで」
そう言って送り出す。
俺はTVのスイッチをつけてニュースをみる。
この前の事があるのでCMも流し見せずしっかり見てみたが面白いローカルCMは流れなかった。
「上がりましたー」
そう言いながらタオルに包まった未来さんがリビングに入ってくる。
「おいおい何て格好で入ってくるんだよ」
俺が言うと未来さんは。
「あれ?どうしたんですか?タオルの下が気になります?」
とからかってくる。
「いや気になるか気にならないかと言えば気になるけど大人をからかうもんじゃ無い」
と言う俺の言葉に。
「ふふっ、気になっちゃうんですね、良かった」
と微笑む未来さん。
「冗談はこれくらいにして...あっ!」
立ち上がったはずみでタオルがはだけるのに気づいた俺はとっさに目を瞑る。
「昭彦さん?大丈夫ですよ昭彦さん」
その声に目を開けた俺が見たものは...今日買ったアクシーズファムのワンピースに身を包んだ未来さんだった。
くそっ!やられた!
どおりでタオルの巻き方がおかしいと思ったんだ、湯上がりなのに首元から腕まで全身すっぽり巻いてあるしよくみるとバスタオルも特大の乾いているものだ。
「やってくれたな!でもやっぱり似合ってて可愛いな」
俺がそう言うと未来さんは顔を真っ赤にして。
「もう...そう言うところが...」
最後の方はこえがちいさ過ぎてよく聞こえなかった。
顔の赤みが引かないまま伏し目がちになった未来さんの耳には座り猫のピアスが付いていた。
「今度は座り猫なんだな」
と言う俺に。
「おうちでリラックス気分だからこれです」
とニッコリ返す未来さん。
ガチャ。
「ただいまー!」
その時リビングのドアを開けて幸子が入ってきた。
一連のドタバタで鍵を開ける音が聞こえなかったようだ。
「お帰り、ずいぶん早かったね」
俺の問いに幸子は。
「未来も帰ってきてるし遅くならないように食事会だけで帰ってきちゃった」
そう言いながら未来さんを見て。
「あら?新しい服ね、んー!未来の可愛さが更に引き立つ良い服じゃ無い!」
と、若干テンション高めで話す、食事会だけとは言え少しアルコールが入っているみたいだ。
「ねえねえ!それあたしにも着させて!」
そう言って未来さんの背後に回った幸子はジッパーを下ろして足元までひん剥く。
「キャー!」
いきなり下着姿にされた未来さんはしゃがみ込んで胸を隠したあとリビングを飛び出した。
と言うかいきなりこの暴挙、幸子のやつ意外に酔ってるな。
「いやっほー!」
そう言いながら幸子は未来さんからひん剥いたワンピースを着る。
くそっ!幸子は幸子ですごく似合うな。
「昭彦くんどう?」
あ、くん呼びって事は結構酔ってらっしゃいますよね?
「意外なくらい似合ってるな、さすが
俺がそう感想を言うと。
ガチャ
「もー!お母さん酔っ払いすぎ!」
未来さんが着替えて戻ってきた。
「あはは!ごめんごめん!お!それもかわいいわね」
と言ってまた脱がそうとする手をガシッと受け止めた未来さんは。
「着たかったら着てもいいからあっちで着替えるの!」
と言って幸子を引っ張っていった。
「じゃーん!」
そう言いながら戻ってきた幸子はさっきまで未来さんが来ていた服を着ている、こう言う格好をすると本当に20代にしか見えない、親子というより姉妹みたいだ。
「二人ともよく似合ってるよ」
未来さんも別のアクシーズファムを着ていてとても可愛らしい。
「そうだ!昭彦くんにファッションショーしてあげよう!」
テンションが上がった幸子がそう言って未来さんの手を掴んで出て行く。
そこから変わるがわる衣装を着替えた二人がやってきては戻って行く、同じデザインの色違いを二人で着た時なんかこれぞ双子コーデだなって感じだった。
「最後は...これっ!」
そう言ってバスタオルを巻いた二人がやってくるとバサッとタオルを取った。
中からは眩いばかりのビキニが出てきた!もうアクシーズ関係ないな。
幸子は大人っぽい黒、未来さんが清楚な白だけどとても清楚とは言えない破壊力だ、顔を赤く染めているあたりは清楚なんだけど。
なお幸子に顔が赤いのは酔った状態でバタバタしたせいだろう。
「もう、お母さんに乗せられちゃって恥ずかしい。
終わりにしよ?」
そう言って出て行こうとする未来さんに。
「あーんもうちょっとー!」
と腕を掴もうとする幸子だったが酔いのせいか手元を狂わせて...。
「キャー!?」
未来さんのビキニのブラ紐を引っ張ってしまいはだける水着!
一年前は慰めるのに必死だったし薄暗かった。
でも明るい中で見えた未来さんの胸は神々しいほど美しかった。
「み、見ました!?」
咄嗟に顔を背けた俺は。
「み、見てない!」
と嘘をついた。
「えー?見ましたよね?」
ブラ紐を結び直した未来さんが詰め寄ってくる、近い近い!特に胸が!
「もー、そんなにカリカリしないの!」
幸子が言いながら謎の動きで未来さんの水着の上を一気にひっぺがす!
「あはは!いいじゃない減るもんじゃなし...」
と笑いながら幸子は寝落ちてしまった。
あまりに一瞬だったため俺も未来さんも反応さえできてない。
未来さんはハッとした後腕で胸を隠すと。
「見ましたよね?」
と問いかけてくるので俺は。
「はい...」
としか答えられなかった。
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