第9話 ラーメン発見伝
「天神でラーメンといえばあそこかな?」
俺の頭の中には大人気なラーメン屋が浮かんでいた。
「昭彦さんの考えているお店、わかりますよ?
でも私が行きたいのはそこじゃ無いんです」
何!?あそこじゃ無いのか?
そんな会話をしながら俺たちは歩いていく。
途中、俺の思っていた店、shin -shinの前を通るが未来さんは華麗にスルー。
「嫌いじゃ無いんですけどわざわざ並んでまで食べませんよ、旅行者じゃ無いんですから」
行列を横目で見ながら未来さんは言う。
確かに俺も福岡に来てラーメン食べようと思ってコンビニに売っている雑誌やネットなどを見て食べに行った覚えがある。
「福岡のラーメンって長浜とかもそうですけど注文してすぐ出てきてすぐ食べるものですよね?
よほどの事がない限り並ぶものって習慣が無いんですよね、地元民は」
言われてみれば確かにそうだ、俺の周りでもshin -shinが美味いって言う人はいるけどよく食べるって人がいないや。
並びたくないんだろうな。
そんなこんなで歩いているうちに枝道から南北に通る大きめの通り、親富孝通りに差し掛かる。
親富孝通りというのは後から決まった愛称のようなものらしく、元々は予備校が何件もあった場所でそのすぐ近くに準繁華街みたいな通りがある事から「浪人しているのに夜遊びする若者の街」という意味で「親不孝通り」という通称で呼ばれていた名残りだそうだ。
予備校は減ってしまったが居酒屋やクラブ、カラオケなど中洲とは違った若者向けの飲み屋街と言った雰囲気の通りだ、外国人向けのバーなどもあるため福岡の中でも外国人が多めである。
そんな親富孝通りを一路北へ歩きながら未来さんと話す。
「へー、こっちにも美味いラーメン屋があるに?」
このまま行くと天神というより長浜方面になってしまう気がするが流石に元祖まで行くならタクシーを使うし何か一言あるだろう。
公園の近辺にもラーメン屋があったしあそこら辺なのかな?
「ふふっ、きっと昭彦さんは知らないお店だと思いますよ?」
そういう未来さんは何か企み顔だ、俺が知らないと言い切るぐらいだから隠れた名店とかかな?
「あ、そこを曲がって下さい」
未来さんはそういうと左折して路地に入る、やっぱりステーキがある角だ。
ちなみにこのやっぱりステーキっていうお店が沖縄から来ているお店なのだが沖縄の所謂「1000円で200gステーキ戦争」をそのまま持ち込んでいるお店で関東などにも出店してあり今やyoutuberの宮迫さんも食レポしてたお店だ。
俺も食べに行った事があるが本当に200g1000円で食べられてライススープサラダも食べ放題というちょっと頭どうかしてるんじゃないかという値段設定だった。
赤身だけど普通に美味しいしソースも色々あって楽しめたもんだ。
おっとそんな事を考えている間に角を曲がった未来さんはすぐ右折、さらに細い道へ。
確かにこんなところ来たことはないなぁ、俺の知らないというのも頷ける。
「もう着きますよ!」
振り向いて駆け出そうとする未来さんだがそこにちょうど路地沿いの店から出てきたお客さんが!
俺は咄嗟に未来さんの手を取って引き寄せる。
「ほら、走ると危ないよ」
「...はい...」
お客さんをスルーして進もうとしたら未来さんが手を繋いできて。
「危ないから手を繋いでおいていいですか?」
と、上目遣いで言ってくる。
「ああ、良いよ」
と、返したもののなぜ指と指を組む所謂「恋人繋ぎ」で繋いでくるのか...。
そして手を繋いで15メートル。
「着きました!」
え?手を繋いだ意味とは?
曲がり角の角の部分にその店は有った、店名は...?
「LA-麺HOUSE 将丸」
そんな看板が目に入った。
...
「らっしゃい!」
威勢のいい掛け声と共になかなかダンディな大将?が顔を出す。
「二人なんですけど」
未来さんが言うと大将は。
「まだ空いてるんで奥のテーブルどうぞ」
そう案内されて店内を見ながら奥のテーブルへ。
窓際の棚には漫画が沢山、壁にはTVも掛けてある。
よくある普通にラーメン屋さんだ。
入り口の横にドアがあってここから上はクラブだと書いてある、店内から上がるのか?珍しいつくりだな。
「はいどうぞ」
そう言いながら未来さんがお冷を渡してくれる、テーブルにコップと水差しを置いてあるタイプなんだな。
「ありがとう」
そう言って受け取ると一口ゴクリ、暖かくなってきたなか歩いてきたので水が美味い!
「どれ食べます?」
と言われてメニューを見ると
基本の白、コッテリの黒、カツオだしの和、辛口の赤と書いてある。
「んー、コッテリの黒が捨てがたいけど基本の白も気になるなぁ」
俺がそう言うと未来さんは。
「じゃあ私が白頼みますから昭彦さん黒にします?後で交換しましょ」
と言う提案を受けて大将に注文する、もちろん麺の硬さはカタ。
「あ、このマヨチャー丼もおすすめですけど替え玉するなら半分サイズが良いかもです」
おすすめならと注文すると。
「半マヨ一丁!」
と厨房へ声をかけていた。
「初めて来る店は出てくるまでがワクワクするな」
俺がそう言うと未来さんは。
「ここのラーメンオススメですから、ハマっても知りませんよ?」
と、悪戯っぽく笑った。
その顔があまりに可愛かったので一瞬固まってしまった。
...
「はい黒カタ白カタ半マヨおまち!」
大将が元気に持ってきてくれたので手を合わせて。
「いただきます」
と、食べ始める。
なんだこれ?無茶苦茶美味いじゃないか!
マー油たっぷりの熊本ラーメン育ちの俺だがshin-shinのラーメンは美味いと思った。
だがここのラーメンもそれに匹敵するほど、いや好みで言えばこっちの店の方が好みだ!
あそこが行列でこっちが空いてる意味がわからない程に!
「すごいな、めちゃくちゃ美味い!」
簡単する俺に。
「でしょー?昭彦さん絶対気にいると思ったんです!」
「驚くほど俺好みだよ!ありがとう」
俺がそう言うとニコっと笑顔になって。
「こっちの白も食べてみます?」
そう言われた俺は。
「そうだな、っと何か取り皿かなんか」
と、大将に言おうとすると。
「平気ですよ、はい!あーん」
いつのまにか俺の方に寄せられた丼から麺を1束箸で摘み上げてそう言う未来さん。
まわし食べが平気というのは理解したがあーんは流石に...と俺が躊躇していると。
「ほら、伸びちゃいますよ?」
といってもう一度スープにくぐらせて俺に麺を持ち上げる未来さん。
ええい!ままよ!
パクリと食べると...。
「こっちも美味いな!」
濃厚だけどさっぱりと言う矛盾がまた美味い。
「ふふふ、じゃあ食べ切って交換して替え玉します?」
なんと魅力的な提案だ。
「じゃあ未来さんが食べ終わるまでコレ食べておこうかな?」
俺は半マヨに手を伸ばす。
これまた美味い。
刻みチャーシューとネギにマヨネーズかかっているだけでこんなに美味いのか!
「お行儀悪いけどレンゲに掬ったマヨチャーをラーメンのスープに通して食べる人もいますよ」
おお!ベーコンエッグ丼もそうだったけど下品な美味さってあるよな。
言われた通りやってみるとこれがまた美味い。
「麺食べたから替え玉します?」
「そうだな、大将替え玉カタ二つ!」
俺がそう言うと未来さんが。
「一つは半玉でお願いします」
と言った。
俺はしまった!と言う顔をしたが未来さんは。
「ふふっ、私が女の子だって事忘れないでくださいね」
そう言って微笑む顔が綺麗すぎて女の子だって事を意識してしまうんだよな。
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