032 第11話 1963年 イニシュモア島 完結です。
本エッセイは拙著「はじめさんが はじめから はじめる! ~タイムスリップ歴女コスプレイヤーはじめさん~」の最新話のネタバレを多分に含みます。エッセイの題もしくはエッセイ冒頭の表記話数をまずご確認いただき、ご自身の読書進捗度と照らし合わせて読み進めるか止めるかを予めご判断ください。
では、以下から新規部分です。どうぞ。
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はじめさんがはじめからはじめる、第11話 1963年 イニシュモア島。いかがでしたでしょうか?
この物語の題材は、歴史と呼ぶには新しすぎる事柄です。しかし、急速な近代化は田舎の離島にも及び、ましてや観光客がわんさと訪れるようになってはたぶん、あの風情と言うか、あの過酷さは失われていやしないかと考えています。それはそれで良いのでしょう。何も伝統を重んじてわざわざ過酷なままに延々続けなければならない義務はないのです。
私の調べた限り、少しアレンジしていますが作中のような農法は、テレビで取り上げられた1995年くらいまでは少なくとも存在していたようです。そこから25年が経ちました。その後どうなったかは現状では情報が取れていません。
もしその農法が途絶えていたとしたら。それは楽で効率の良い手法に置き換わったと喜ぶべき事ではありますが。ちょっと大げさな表現をしますと、かつての過酷な農法は歴史の一部になったということでしょう。
もしこの2020年でも継続している農家さんが居られましたら感動です。一度赴いてあいさつしたい程です。
この地方の本来の農法は、塩害待ったなしの結構荒っぽい方法なんだとか。土は岩と岩の隙間に自然とあるものを掘りだして持って来て用います。昆布はどうやら採ってきたまんまを畑に混ぜ込むようですね。延々その繰り返しなのは同じなのですが、私が思い描いていた方法と少し違いました。
「もう少し要領良くできるはずなのにもったいない」
だからと言って彼らのやり方を尊重しないではないのです。それを物語の中でどう表現したら。困ってしまいました。
本来の彼らの農法。
私の勝手な想像の中にあった農法。
作劇しようと思ったら後者でした。私が何かしなくとも、主人公だって口をはさみたくなります。しかし彼らの厳しい自然を前にした必死の農業は、その程度の脚色で色褪せたりは決してしませんでした。それは良かったのですが、ただし面白さとの両立は全く今話では達成できず仕舞いに。
エンターテインメントと物語の両立が一番上手くいかなかったと感じているのはこの第11話です。それでこの話を冒頭から切り取り、昔話をする中で新しいエピソードとして語られる形を取りました。
これをさらに後半に移動させますと語るには遅すぎますし、早過ぎるとわざわざ移動までさせた効果が薄れます。その結果としてこの作品の中盤は、バミューダトライアングルのような魔の鬱展開地帯となって読者さんに襲いかかったのでした。
それほど出来が悪いのに、削除だけは絶対にしたくありませんでした。これも私が語りたい史実のひとつには違いありません。冒頭に早くも農業で無双するのは避けねばならず、フィーナの石を手に入れるイベントは経由しなければなりません。つぼみの石をアメリカの砂漠で拾った隕石、つまりフィーナを宇宙人にする訳には行かなかったのです。
隕石は、テュアが作ったドリームキャッチャー中央の石にその存在を譲りました。劇中では全くそれに触れていませんが、ここで言及します。
肉体的負荷の北米(第4話)と、精神的修養のトンネル掘り(第9話)のために、それに至る前に一度、主人公に明確な挫折が必要と思いました。現代ではずっと燻っているだけで折れてはいないんですね。だから第11話(時系列的には第3.5話)でボッキリ折ってやろうと。
この魔の鬱展開を乗り越えてようやく本格的な修行にチャレンジです。令和のままの主人公だったら耐えられないようなところへ放り込まれます。
第9話での禅海和尚もそうでしたが、第11話にも聞き役が必要でした。共感してもらえる相手が。イニシュモア島ではまだひとり旅でしたから、それで後に振り返る構成としたのです。
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