方舟聖女 / いつか、あの川のほとりで

■２０/２１: 聖女の行進１（Ｆ）

――――

エピソード「聖女の行進」の断片・プロット

――――

１０５３年12月

◆

都市内外からのケモノの襲撃の混乱の中、「学校」からも回転翼機による避難が行われようとしていた。もともと予定されていた計画が、襲撃を受けて少し早められた。

しかし、飛び立つや否や機体は内部から引き裂かれ、墜落してしまう。

機体の残骸からケモノが現れる。

脚の生えたイソギンチャクのような形態のケモノ。

鉤爪のついた触手を伸ばし、現場に居合わせたパルサティラを弾き飛ばす。ケモノにとって脅威度の高い対象を優先的に狙った。

ケモノの狙いは、待機中の別の回転翼機と車両、ハンガーに移る。その中にはパルサティラの意中の相手ブレンダンの姿もあった。

警備の銃撃も意に介さず、ケモノは暴れはじめる。

非戦闘員に危害が及ぼうという時、ケモノの動きが鈍った。足が地面にめり込み、骨肉が軋む。パルサティラの異能の影響下に置かれていた。

瓦礫からパルサティラが身を起こす。

幽鬼のような異様な空気を纏っている。

「よくもわたしの大事な人に手を挙げたな」

パルサティラは、ケモノを展開した多節剣型神器で捕え、放り投げた。飛んでいくその姿を追い、パルサティラはその場を離れる。

――

投げ飛ばしたケモノのもとに駆けつけるパルサティラ。

ケモノは、先日の破壊の応急処置がされた校舎に叩きつけられ、瓦礫を頭から被っている。

ひしゃげた脚と、千切れた触手を動かし、逃れようとしている。パルサティラはケモノにトドメを刺す。

そこへブレンダンと「師団」に出向している警備の聖女が小走りでやってくる。

パルサティラは、ブレンダンたちが無事なことを確かめると、遊撃に出ることを告げる。引き留めるブレンダンと警備隊長だったが、パルサティラの提案を後押しするように、強力なケモノの出現と、その対処の応援要請が入る。

「それじゃ、先生。ちょっとおでかけしてきます」――お元気で。

――

ケモノたちに取り囲まれ、生きたまま貪られている下級生の聖女。

周辺には多数の聖女や兵の死体が転がり、ケモノに捕食されている。

ケモノたちはすべてが同じ形状。翼手類のものに似た翼、鮫に似た頭部と牙、骨と皮だけかと思えるほど細い脚、内臓と筋肉むき出しの胴。

下級生の聖女は絶望と恐怖の中、意を決し、リミッターを解除。意図的にオーバーロードし、自爆する。巻き込まれるケモノたち。

その爆発の光を目撃したパルサティラは、確認のために現場へ向かう。

そこで目にしたのは、クレーターとその縁で躰が半分になったケモノ。半身のケモノが分裂し、その数を増やしていく光景だった。

ケモノたちはパルサティラの姿を認識するなり、パルサティラに殺到する。

一体を連結状態の多節剣で斬り伏せ、別の一体を機関短銃の全弾発射で倒す。しかし、倒したそばから再生・分裂していく。

分かれた個体すべてが同一のケモノ。一体でも討ち漏らせば、再び増える。すべての個体を同時に倒す必要があった。パルサティラはすぐにその可能性に思い至る。

幸運だったのは、ケモノたちは各地へ散る様子はなく、パルサティラに狙いを定めていることだった。

攻略法はわかっているが、物量を前に押されるパルサティラ。満身創痍で右腕は千切れ落ちてしまっている。

再生した腕で地面に落ちた自身の腕から多節剣を剥ぎ取る。

伸縮自在の多節剣を使えば、ケモノたちを捕らえて同時に屠ることは簡単だと思っていたが、そうはうまくいかないようだった。

一体一体が通常の獣型よりも強靭。それだけでなく、いつのまにか周囲が肉の地面と壁、天井へと変わっている。そこから、ボコボコと次から次へとケモノが出現していく。パルサティラが戦っていたのは現実改変能力持ちの上位個体だった。

ふと、チクリと肌を刺す痛みを覚えるパルサティラ。

腕を見ると、爛れている。その異常は治らずにそのままで、それどころかじわじわと大きく深くなっていく。

パルサティラの神器のもつ再生機能が阻害されているか、追いついていない。

このままでは押し負けると、パルサティラは察する。

パルサティラは「奥の手」を使うことにした。

「しかたないか――」

チェストリグから注射器と法石片を取り出し、チェストリグを脱ぎ捨てる。法石片を口へ放り、注射器の針を胸に突き立てる。

溜息を零し、俯く。涙が一滴、落ちる。涙と同時に、パルサティラも膝を突く。パルサティラだけでなく、ケモノたちも上から見えない手で押しつけられているかのように動きが鈍り、膝を折っている。パルサティラの異能によって重力に飲まれている。

パルサティラの胸に紫色の幻炎が灯る。重力に抗い立ち上がる。全身の筋骨が軋んでいる。

過呼吸交じりに、呟きながら、多節剣型神器〈果てしなき強き炎への献身〉を振りかざす。

「熾きて、焦がれて、尽きて――」

神器が砕け散る。砕けた剣身は、無数の小さな刃となり、花弁や火の粉のように舞っている。

「――さよなら」

次の瞬間、刃の嵐に襲われ、ケモノは現実改変領域ごと切り裂かれる。ほとんど液体になるほどに切り刻まれた。

血の霧が瞬く間に、滝となって地面に降り注ぐ。

パルサティラは振り上げた腕を下ろした。骨は折れていて、ぷらぷらと揺れる腕。

赤く染まった街路をふらふらと歩くパルサティラ。

鼓動はか弱く、胸の残火の燻りでかろうじて足が動いていた。

身体中の傷は再生せず、そのまま。足を伝って血が流れていく。ついには靴から溢れ、足跡の代わりに血だまりを残す。

それでも、なおパルサティラは歩みを止めずにいた。

◆

指揮所を訪ねるペトラ。

テオドラに戦闘に参加することを告げる。

許可を得ずに勝手に戦うという選択肢もあった。それこそ先日のように。そのときにはお咎めはなかった。にもかかわらず、今回は律儀に許可を得ようとしている。

ペトラなりに考えがあってのこと。ペトラはずっと実戦に焦がれていた、そして戦場で死ぬことを。勝手に戦って死んだら、それは事故に遭って死ぬのと同じだとも考えた。

演技じみた様子で両手を広げ、語る。

「――こう思ってる、やっとこの時が来たんだって。ボクはいま――人生で一番の喜びに打ち震えているんだ」

「出し惜しみができるほど余裕のある状況ではないのでしょう？　ならなおさら、使い潰してしまえる兵は入用じゃないのかい？」

「最期に勇姿くらい見せつけさせてはくれないか」

渋るテオドラたちを強引に押し切り、ペトラは戦いの場へ足を向ける。

――

街の一体が氷霜で覆われている。ケモノの死体や市民の遺体の区別なく、氷に閉ざされていた。その中心に立つ聖女ペトラ。

ヘリコプターが撃墜され、ペトラの頭上へ落下する。ペトラは氷で防ぎ無事。

ペトラの前に、一体のケモノが姿を現す。

右腕が異常発達した人型のケモノ。体長は２.５メートルほど。頭部は骨が剥き出しで、鹿のような角が生えている。右腕は筋骨隆々で肥大している、一方で左腕は無く、肩や背から石灰質の棘状の物体が何本も生えている。

ケモノは自身の躰に生える棘を引き抜き、ペトラへ投げつけた。

ステップで躱すペトラ。

予備動作から見えていたために、難なく躱しせたが、投擲された骨槍は音速を超えていた。骨槍は放置車両に命中し大穴を開け、その後ろのビル壁をも粉砕していた。衝撃波で、路面に張りついた氷が砕け散った。

ペトラは、ヘリコプターを撃ち落としたのはこのケモノか、と思い至る。それなりに脅威度は高そうだと見積もった。

もしかしたら相打ちに持ち込めるのではないか、そういう邪な考えがぺトラの頭に過った。

「なかなか“骨”のありそうなヤツだ、いいじゃないか」

ペトラは右手をケモノにかざした。中指には指輪が光っている。神器〈陽花の誓約〉。

外気温が急激に下がり、氷点下を大きく下回る。ケモノの体表に霜が張る。

ケモノは骨槍を投擲。

ペトラは氷の壁で掴むように防ぐ。そこへケモノが肉薄し、強靭な右腕で殴りかかる。氷の盾と地面が砕ける。

跳び退ったペトラは氷の棘を形成し、射出する。

氷の棘はケモノに命中したが、その強靭な肉体を傷つけることはできなかった。その後も数十発の氷棘を撃ち放つも弾かれる。

骨を引き抜き、振り回すケモノ。

跳躍して回避するペトラ。ケモノの背後に回るが、ケモノは背側の棘を放出してペトラを迎え撃つ。骨棘を凍らせ、塊にする。それを蹴ってさらに跳び退る。

ケモノが振り向きざまに、骨槍を投擲する。

ペトラは手をかざし、握る。

飛翔する骨槍は先端から凍りついていく。先端と後端に速度差が生まれ、自らの飛翔する速さに耐えられず自壊する。

ケモノはさらに骨槍を投げつける。はじめからひび割れた骨槍は、空中で砕け、散弾となってペトラに降りかかる。

ペトラはピンポイントに氷塊を形成して防いだ。

一際大きく鋭利な棘を引き抜き、それで殴りかかるケモノ。

ペトラは黒い氷を形成し撃ち出す。普通の氷では貫けなかったケモノの肉だったが、黒い氷はその肉体に突き刺さった。流れ出す血は即座に凍り、ケモノの内からダメージを与えていく。

ケモノはなおもペトラの迎撃に構わず肉薄し、ついには骨剣を振り降ろした。

しかし、ペトラには届かない。ケモノの躰の多くを黒い氷が覆っていた。

ペトラが右手を掲げる。宙に刃のような黒氷の結晶が現れる。手を振り降ろすと、黒氷はケモノの躰を貫いた。

◆

目の色を変え、壁の向こうに見える「天月の獣」へ向かっていくリル。建物の屋上を飛び移っていく。

ゲルトルードはリルを追おうとするが、街の様子を見て踏み止まる。リルを追ったところで彼女の邪魔になるだけ。それに、自分に求められる役割はリルに追従することではない。

異能を使って脅威度の高い個体を探知するゲルトルード。デカくて強そうなケモノの位置を司令部に伝える。

ゲルトルード自身は、陣地を作り防衛している部隊への狙撃支援へ移行。適宜、射線の通しやすい場所を探して、場所を変えながら。

神器の機能と異能を組み合わせれば、視界や射線が通っていなくとも弾を送り届けることは可能だが、“普通の狙撃”ができる環境ならそうしたほうが負担は少ない。乱発して、奥の手を使いたいときに使えない状況は避けたかった。

◆

都市内でケモノを倒しているロズメリー。

ストックレスの自己装填散弾銃を二挺持っている。

一体の人型ケモノがロズメリーの前に現れる。

行方不明になっていたセシリエだった。

ライトブラウンだった髪の色は濁った灰色になり、頭からはゼリー質のベールを垂らしている。紫色のひだのある白いドレス、ヒレのある長い尾、鋭い爪と水かきのある鳥脚。手には槍型神器〈黒鉄蜂の杖〉を握っている。

バスケットボールほどの大きさの触手の塊の群れがセシリエの背後から現れる。それらはケモノや人間の死体に取りつき、喰らっている。バリボリと骨肉を砕く音が、不快なほどに響く。

ロズメリーはその触手たちにも注意を割きながらも、セシリエから目を離さないようにしている。

「あなた、どこかで見たことがある」

「いやね、ロズメリー。仲間の顔も忘れたの？」セシリエだったものは、微笑の張りついた顔を一層歪める。

「覚えてないってことは、そんなに関わりはなかったってこと。残念だね、あなたも弔われるなら親しい人のほうがよかったでしょ」

「その言葉、そのまま返すわ」

セシリエが槍型神器で地面をトントンと叩く。触手たちは食事を止める。目こそないが、その視線がロズメリーに一斉に注がれた。

「わたしと、わたしの子供たちは負けないわ」

――

跳びかかる触手の塊たち。「第三の腕」を展開し、応戦するロズメリー。散弾銃を使うが、携行分の弾はすぐに撃ち尽くす。銃口側を握り、鈍器代わりにし、殴打する。それもすぐに壊れてしまう。

触手たちの数は減らしたが、敵は触手だけでなく、それらを操るセシリエもいる。

セシリエは獣じみた動きで三次元機動をしながら、空中で神器の穂先を射出。

セシリエの神器〈黒鉄蜂の杖〉は杭状の穂先を撃ち出す機能がある。弾倉に予備のビットを収め、射出後には半自動で次の穂先を装填。挿入し保持できるものなら材質を問わない。木やプラスチックのビットであっても、ほぼすべての装甲や構造材を貫通しうる。

撃ち出された穂先を布状に変形させた神器で絡め取るロズメリー。この手の武器は下手に躱したり防がないほうが対処しやすい。

攻防を繰り返すが、決め手に欠けるロズメリー。奥の手を使うことにする。

腹に刺さったビットを引き抜き、無造作に投げ捨てる。

溢れる血は、地面には落ちず、布様となり宙に留まっている。

「めんどくさい」無感情に零すロズメリー。

血の布がロズメリーの全身を包んでいく。

「ようやく本領が見れるというわけね」好奇の目を向けるセシリエ。「本当なら生け捕りにして、調べ尽くしたいのだけど」死体で妥協してあげる、と言い添える。

笑う。「趣味悪い。もう付き合いきれない」

ロズメリーの全身を覆った血の神器は、鎧のような形状へ変化していく。

赤黒い甲冑。節が多く刺々しい意匠、うなじのあたりからは茨のような羽飾りが伸びている。

神器〈篤き憶いの焦がれ〉の真の姿。この状態を維持できるのは、長くて3分。時間制限付きということは、タイムオーバーで大きな隙が生じるということ。味方の援護がない以上は、この数分で決着をつけなければならない。

形態変化を終えるや否や。

触手ケモノの残骸から新たな触手の塊が生まれ、ロズメリーへ跳びかかる。躱すロズメリー、回避行動の余波で触手が刻み飛ばされる。

攻防。

ロズメリーの圧に、セシリエは押され気味。

一瞬の隙に、ロズメリーが一撃を叩き込む。

捉えた――。

ロズメリーの貫手がセシリエの胸を貫いた。はずだった。

手応えは消えていた。はじめから、ロズメリーが突いたのは宙であったかのように。

次の瞬間、ロズメリーの背から胸にかけて衝撃が突き抜けた。セシリエの槍が刺さっている。

セシリエの固有異能は、数秒前の地点に自身を巻き戻すことができる。異能を使い、ロズメリーの意識の外へ移動した。

ロズメリーは反射的に穂先を掴む。槍が抜けないように掴んで、相手の行動をわずかにでも遅らせようとした。しかし、セシリエの槍は、穂先を射出できる。

穂先とともにロズメリーは吹き飛ばされ、壁に打ちつけられた。

立て続けに穂先が打ち込まれ、ロズメリーは磔にされてしまう。

「さすがのあなたもここまですれば止まるかしら。死んでないわよね」

笑みを浮かべながら、磔のロズメリーへ寄るセシリエ。

ロズメリーの胸に火が灯る。閃光、赤い流体の衝撃がロズメリーを起点に炸裂。

拘束を逃れたロズメリーがセシリエへ一直線に突き進む。

セシリエは固有異能を使い、数秒前の地点へ戻る。しかし、数秒前の地点は、後方へ数メートルの場所。ロズメリーの間合いからは逃れきれない。

「バケモノ――」零すセシリエ。

とっさに神器を突き出す。神器が変形する。穂先がばら撒かれる。宙に浮いた穂先の狙いがロズメリーに収束していく。

ロズメリーは掻い潜り、セシリエへ到達する。ロズメリーの手がセシリエの首を穿つ。

「そっちこそ」

吐き捨て、腕を薙ぐロズメリー。セシリエの首が落ちる。

念のため、躰のほうも潰しておく。

そこで鎧化を解く。2分30秒ほど経っていた。

ロズメリーは呆けた顔で、ぼんやり壊れた建物を眺めている。

「えっと、何してたんだっけ」ぼろぼろの服を見る。「ああ、戦わなくちゃ」

まだ、街にはケモノが残っている。手近な遺体から武器を拝借し、ロズメリーは次の戦いへ向かった。

◆

イリスは壁に張りつく巨大な蛸のようなケモノのもとへ向かっている。

道中の雑魚を散らしながら。自身の神器以外にも何本もの刀型汎用神器を携帯している。

巨大蛸ケモノと対峙するが、そこに辿り着くまでに刀を二本使い潰してしまっていた。

触手と雑魚ケモノがイリスへ殺到する。

刃こぼれしたり、折れた刀で触手と雑魚ケモノを叩き潰し、次の刀を鞘から抜き放つ。建物の壁面を蹴り、斬りかかる。

ケモノもイリスも決定打に欠けたまま、時間が過ぎる。

イリスは最後の刀型汎用神器を投擲し、触手を束にして射止める。

自身の刀型神器〈流火隔霄〉の柄に手をかける。

抜刀。

一瞬、光が走り、ケモノの躰が大きく裂けた。

反動で、イリスの腕と脚の皮膚に小さな裂傷ができ、血が滲んでいる。

命の危機にケモノは咆哮し、暴れまわる。歪に再生し、蛸型からテヅルモヅルのような形態へと変化する。ドームのように空を覆う触手。

闇の中、無数の触手が煌めき、イリスを捕えようと蠢く。無数の触手を躱し、切り払い、足場にし跳ぶイリス。

刀を鞘に納める。

詠う。

「神よ、どうか彼らにその罪を負わせ、私に裁きを命じてください――私はこの鉄の杖をもってあの悪を為す者を、私の敵を打ち砕きましょう」

闇に青い炎が耀う。

瞬間、暗闇が薙ぎ払われる。

イリスが刀を振るうたび、イリスの腕の皮膚と筋肉は裂け、血が流れる。足を踏み込むたび、脚の皮膚と筋肉も同じようにダメージ受け、骨が軋む。

しかし、

リミッター解除と神器解放で圧倒するも最後の一撃が神器が手からすっぽ抜けてしまい、あと一歩のところでトドメを刺しきれない。

反動で動けないイリス。

迫る雑魚ケモノ、ゆっくりと再生し立ち上がる巨大ケモノ。

万事休すかというところに、戦車と小型トラックが現れる。民家の屋上にはゲルトルードもいる。

ゲルトルードは、射線上には味方も市民もいない、と兵士たちに告げる。

戦車の機銃やライフルの斉射でケモノたちは大打撃を受ける。雑魚ケモノの大半は致命傷を負った。

巨大ケモノは戦車の砲撃で、トドメを刺される。

イリスも助けられる。

◆

ティナ――右目の眼帯、ピンクの髪。右手利き左構えの狙撃手。

ライフル型神器を携え、ショルダーバッグにありったけの弾薬を詰め込んでいる。

神器用の弾薬はほぼ専用弾で生産数が少ない。先日の戦闘で消費したり、備蓄分が破壊されてしまってもいた。使えそうな在庫を可能な限りかき集めた。

壁上の機関砲火を潜り、壁を越えてきた飛行型のケモノを優先的に狙う。飛行型の数自体は少なく、脅威度は高くないが、野放しにしておくわけにもいかない。

あらかた片付け、地上にも目を向ける。

味方の戦いや避難の障害になるケモノを撃つ。移動し、観察して、撃って、また適当な場所を探す。

アデーレとハイデマリーが「司書」と交戦しているところを発見する。二人を遠方から狙撃して助ける。

しかし、砲撃型のケモノに発見され、陣取っていた建物に攻撃を受ける。