■13: 祝福(F)

――――

エピソード「祝福」の断片・プロット

――――

1053年11月


傷の様子の落ち着いたウルリカは義肢を与えられた。

リハビリに明け暮れるウルリカだったが、精神の不安定さと痛みに苦しめられる。大量の精神安定剤や鎮痛剤を服用。

周囲に弱った姿を見せられない、という意識もウルリカを苦しめる。


戦死や作戦中行方不明などで「聖女」の数は減る。そのペースが速くなっている。ウルリカは復帰への強迫感をさらに募らせる。

自室に戻る回数も減り、リルを避けるようになる。


そうした精力的で意欲的に振る舞う反面、ブレンダンに会いに医療棟を訪れたパルサティラに弱音を吐くほど、気が参っている。


「――パルちゃん。パルちゃんに比べたらわたしの痛みなんて大したことないはずなのに」

「それは違う。わたしは鈍いだけ。それにわたしはただ傷を負ってるだけで、何も失ってない。ウルリカさんと同じ状況なら、わたしは復帰しようなんて考えないよ」

「慰め?」

「違うよ。やっぱりウルリカさんはすごいなって。尊敬するなって、改めて思っただけです」

「……ごめんなさい、今日ここで聞いたことは忘れてください」



――

陰では、アンリースを暗い欲求の捌け口にするウルリカ。

自分に憧れ好意を寄せる後輩を利用する悪い先輩になる。ウルリカの美学的には受け入れがたい存在に自ら身を落とす。

リルたちには見せられない醜い姿。


「ねえ、アンリースちゃん。あなた、わたしのこと好きでしょう? なら――」

「早く脱ぎなさい」

「ヘタクソ」

「なんで、わたしのこと気持ちよくできないクセに一人で勝手に気持ちよくなってるの?」


倒錯的な関係。欲だけでなく、苛立ちや焦りもアンリースへとぶつける。幼稚な罵倒を投げ、アンリースを叩く。

しかし、アンリースは苦しむどころか喜びの表情を浮かべる。これみよがしに傷や処置を晒しまでしている。


――

そうした鬱屈した日々を過ごし、リハビリをひとまず終える。一ヶ月という驚異的な早さ。



12月。

復帰戦に挑むことになるウルリカ。

リハビリや治療がうまくいっているか、義手が適合しているか、調整がうまくいっているかは、実戦を経なければ最終的な判断は下せない。


内容は、小型・中型種の少し歯ごたえのある“雑魚戦”。

牙を剥き襲いかかってくるケモノに、一瞬、「魔狼のケモノ」を幻視し、動きが鈍る。しかし、すぐに振り切り、ケモノを倒すことに成功する。


「わたしはまだやれるんだって。誰よりも自分に示さなければならないんです。――その糧にすることを許してください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る