■04: 記憶の方舟(7)

 ゴウ、と音を立て振るわれる三本の腕。

 三本腕の攻撃は独特の間合いとリズムで繰り出され、リルの息を乱そうとする。ケモノの発する光熱も、リルの体力を奪い、焦りを誘う。


 リル、一撃を入れるタイミングを窺っている。

 対してケモノ、圧力をかけながらも、急所狙いを警戒する立ち回り。

 片や、相手の手がわからないゆえの様子見。片や、相手の手を知っているがゆえの慎重、臆病さ。

 動くべきか、

 まだか、

 踏み込むべきか――



 先に大きく動いたのはケモノ。

 このまま圧力をかけ続ければ、自ら手を下さずとも、リルは枯れ、灰も残さず燃え尽きるだろう。彼はそれを是としなかった。戦士としての意識が残っているのか、はたまた人間を引き裂かんとするケモノの本能に抗えなかったのか。



 振り降ろされる鉤爪。

 リル、避けずに刃で受ける。そのまま腰を入れ、体重移動で圧し切る。根本から落とされた指が散る。噴き出す血。


 リル、即座に跳び退る。危険を察知。そのわずかな間すら、何秒にも思えるほどの体感。スローモーション。

 空中に浮いた血の滴が、チラチラと揺れ瞬く。

 リル、左の肘で口と鼻を押さえる。

 無数の滴血が沸騰、蒸発。一瞬、霧がかかる。

 瞬間、爆発。一帯が火球に覆われた。

 逃げきれなかったリルへ強烈な衝撃と熱が襲いかかる。



 眩暈、耳鳴り、窒息感。

 鼻出血、失禁の感触。

 リル、ふらつく感覚を抑え、様子を確認。痛む左腕を見やる。さきの火球で燃えた服の断片が爛れた皮膚に張りついている。

 頭もぶつけたのか、顔を血が伝っている。

 それだけでなく、躱せずに浴びてしまったケモノの血は燃え続け、リルの衣服と肌を焦がしている。

 振り消し、血を吐き捨てる。


(厄介だな)


 眩暈や耳鳴りも治まり、冷静さを取り戻したリル。どう攻略すべきか思案。一撃で心臓を破壊するのが最も簡単な手か。幸いアハトの剣の刃は長く、柄も両手持ち前提で体重も乗せやすい。燃える体液による反撃は手痛いが、来るとわかっていれば対処は容易く、強攻すれば押しきれるはず。もっとも代償なしにとはいかないだろうが――


(――?)


 ふいに異様な感覚が襲う。

 身体の芯に火が燻っているかのような感覚。もうしばらくこの光熱に晒され続ければ、人の形をした炭になってしまいそうな奇妙な予感。

 ぽつりぽつりと落ちる血が視界に入った。

 垂れた血が爆ぜ、燃えている。リルの血が、燃えている。


「しまっ――」


 とっさに目と口を閉じ、息を止めようとしたが、遅かった。口、鼻、目の粘膜と体液から発火。身体の内外から炎が上がる。


 その状態でも意識は鮮明に保たれたままで、否応なく焦熱と激痛、泡立つような刺激と不快感が全身を駆け巡り、身を刺す寒苦が破裂するように湧き上がってくる。その繰り返し。燃焼という現象そのものになったかのような強烈な印象。


 永遠にも思える時間。虚空でただ一人で燃え続ける。


 ……。


「――ッつ」


 幕を裂いたように、感覚が戻った。激しい呼吸と揺らぐ視界。冷汗が流れる。

 見える範囲で身体を確かめる。先ほどまでの傷を除いて、新たに肉体そのものが燃えた痕跡はない。

 さきの体験は幻だと気付く。

 いまは〝まだ〟夢や幻の類。

 あれは予告や予兆、予言だ、とリルは受け取った。

 炎熱のケモノの持つ現実を塗り替える異界。

 ありとあらゆるものを焼き尽くさんとする現実改変領域。

 すべてを燃やすには、すべてが燃料であれば効率がよい。現時点ではその段階にまで至っていないが、いずれ彼の世界が完成すれば、水は油のように、鉄や石は薪のように燃えるだろう。

 炎は彼自身の秘めたる熱意や情熱、怒りのイメージ、彼の見た戦場の様相の再現であり、そして自らを含めた罪人を裁き滅ぼす浄化と破滅の象徴でもある。


 先日の空っぽの劇場とは質の異なる自らの世界を構築しつつある存在を前に、リルの心は夢から覚めたかのようにふっと沈み始めた。


(やっぱ、わたしはできない子だな。ダメなヤツだ……)


 敵とはいえ、輝きを持った相手と比べて自分が惨めになる。

 しかし、個人的な感情はともかく、眼前の脅威は排除しなければならない。

 彼を倒せば自分の力が認められる、そうした暗い悦びがふつふつと湧いてくる。

 柄を握る手に力が入る。


「ディ……リィ……ス」


 擦れた声で途切れ途切れに呟く。Disce libens.喜んで学べ――リルの制限解除用の暗示コード。


 静かに息を大きく吸い込む。

 仄黒い火が目に宿る。


 剣――リルから逃れようとしているのか、振動し悲鳴をあげる。

 この剣の契約はまだ生きている。


 リルの脳裏に、白黒の映像が再生される。空っぽの教室。無人の電車。人影のない街。白い花の咲いた広い野原。自分以外誰もいない世界。

 知っているようで知らない。知らないようで知っている、記憶。耐え難い寂寥、飢餓の感情。


「……デーシネファータ――」


「――――!!」


 ケモノ、リルが何かをしようとしていることに気付き、制止しようとするかのように、吼え、腕を振り上げた。

 その爪がリルに触れようという瞬間――

 ケモノの腕が斬り落とされた。

 宙を舞う腕と燃血。

 振り払われた炎を纏う刃。



 リルの異能は、正しくは、拒絶反応なしで遺物を扱えるだけではない。他人と適合している契約状態下の遺物の権限を一時的にオーバーライドし、自分が正規の契約者と認識させるもの。乗っ取りや乗り換えとも呼べる能力。他者の世界を侵して奪う、〝わるい力〟



「ぐぁ、あはっ」咳き込み、笑う。「ははっ」


 頭から血が垂れ落ち、笑うたびに口から血が飛ぶ。それらが空気に触れ、パチパチと火花を散らす。

 不思議と、気分は悪くない。黒く冴えきった安らぎすら感じる。リルはそう思った。弱いはずの自分が強者を踏みにじらんとする感触に悦楽を覚える。


 風向きが変わる。ケモノは苦しそうに叫び始めた。自らの炎に焼かれている。

 彼の持つ焦熱の固有領域をも、リルは自らのものとしようとしている。

 太刀を構え直す。切先が地に触れる。石畳が泡立ち溶ける。


 腰を落とし、腕を引く。


 かぎろう視界の中、リルの右目はケモノの心臓を見据えている。霞みがかった薄暗い視覚の中、拍動する命の輝き。それしか見えていない。

 狙いを定める。弓を引くように、息を、力を溜める。

 地面を蹴る。放たれた矢の如く、疾走。


 ――


 反応する間も与えず、刃が胸を穿った。

 脈打つ命の感覚が手を伝ってリルの全身に響く。

 もう一押しと、抉り込む。


 絶叫を堪えるケモノ。リルを掴み抱く。刺し違えてでも、死なば諸共、最後の意地。

 新たに、その背からは翼が生えている。自らの炎に焼かれ、溶け落ちそうな翼手の翼。

 周囲の熱が、急速にその身に吸い寄せられていく。

 道連れの自爆。秒読み。


 ここまでか――、リル、諦めの滲む表情。


 名残惜しい気持ちもあるが、〝いつか〟が今日だったというだけでしかない。いま死ねば、自分の身体は塵も残らないだろう、それはそれで理想の死に方だ。そうした考えが頭を巡る。



 炸裂の寸前、ふいに女性の声。「ああ、いけないわ。お待ちなさい」


 声に反応してか、溜め込まれた熱が急激に霧散していく。

 ケモノ、腕が緩む。

 我に返ったリル、素早く剣を放しケモノの腕から逃れ、距離をとる。状況を確認。

 いつ、どこから現れたのか、黒いパーティードレスの少女がケモノの傍らに立っていた。

 ケモノは黒い服の少女へ跪き、頭を下げている。


 炎熱のケモノと化したアハトを制したことから、事件の関係者である可能性は高い。この人物がアハトの言っていた「残響」か。



「あの子には、別の役割があるわ。ここで死んでもらっては困る。あなたもそうよ」


 ケモノの頭を撫でる少女。

 固有領域は消え、炎はすでに鎮まっている。


 リルは、この状況をどう切り抜けるかを考えている。少女の能力がどうであれ、数的には不利、疲労と傷もある。このまま戦闘を続行すれば、リルに勝機はない。場の支配権は向こうにある。幸い相手方からは、明確な戦意や殺意は感じ取れない。ケモノも敵意こそあれど、すでに戦闘態勢は解かれている。この場は見逃されそうではあるし、それで終わるならリルとしては構わない。しかし、リルの立場上、見逃してもらえたとしても、その提案に考えなしに頷くことはできない。

 色々な事柄が合わさり、どうしようもなく面倒な事態。面倒だからといって逃げ去ることもできないし、弱音を吐くこともできない。変に時間を稼いで味方が現場に到着してしまえば、事態がさらに拗れる可能性もある。

 そもそも、こちらの常識が通じる相手なのか。


 リルの内心を知ってか知らないでか、黒衣の少女は首を軽く傾げ、口を開いた。


「ねぇ、あなた――」


 そこへ、もう一人、奇妙なシルエットの人物が現れた。少女の言葉を遮る形になった。


「いやー、大変だった、大変だった」


 紐状の飾りの垂れた、クラゲのような傘を被った人物。ボロボロの布を纏い、分厚い本を抱えている。顔つきや衣装から伸びる手足の様子、声質から女性だと思われる。

 濁った青白い肌、幼い顔立ち。よく見ると白い髪は、うねうねと動き、艶に見えるのは粘り気のある液体。傘も被り物ではなく彼女の肉体の一部で、飾りや顎紐に思えたものも触手様の器官で粘液に覆われ蠢いている。


「あぁ、あの伊達男か、この子。ずいぶん可愛くなっちゃって。ようやく仲間になったって感じだね」


 クラゲ頭がケモノに手を振る。暢気な振る舞いが危険さ、底知れなさを安っぽく彩る。


「それで、どうしたのかしら」


「ああ、そうそう、こっちの仕事は一応は済んだよ。何体か想定してなかったバケモノがいて手を出せなかったけど」やれやれといったように、わざとらしく両手を上げる。「でも褒めてほしいくらいだよ。そっちに行かないように我慢したんだから」


「そう、助かるわ、ありがとうね。ご褒美に何匹かは好きにしていいわ」


「その子は?」


「彼女はダメよ」


「そっか。まあ、いいや。目ぼしいのは、いくらか印しておいたし」


 黒衣の少女とクラゲ頭、リルには目もくれず話している。

 何のことだ――と、リル、会話内容を咀嚼しようとする。


 まず、この二人は人間ではない。神器兵とも違う。クラゲ女のほうは法石反応がある、となると人語を解する人型のケモノか。黒い少女は、まったく見当がつかない。気配はあるが、実在感がないように思える。なるほど「残響」とは、確かにそうだ。


 彼女たちには何か目的があるように思えるが。


「で、生かしておくの? それともこの子の餌にするの?」


「違うわ。彼女には役割があるの。こんなところでつまらなく死んでもらっては困る」


「そう? あんまり聞き分けのよさそうな感じには見えないけど、大丈夫かなぁ。計画に影響は出ない?」クラゲ女はリルをじろじろと見て言った。


「問題ないわ。はじめからこちらに引き込む気もないし。それに、彼女の役割は彼女にしか果たせないから。わたしたちに従っても従わなくても同じ。なんでも言うことを聞くお人形さんが欲しいわけではないの。あなたはそういう子が欲しいかもしれないけれど」


「いやだなぁ。反抗的なのを躾けるのが楽しいんでしょ。そういう意味では、その子はすごく好みだよ」


「ふふ、知ってるわ。少し意地悪をしたかっただけ」リルを見て続ける。「本当はあなたが変な気を起こさないように牽制していただけよ。ね、リル」


 リル、その言葉を聞き、ぞっと怖気が走る。


(こいつ、わたしの名前を知っている――)


「リルっていうの、この子。ふぅん。わたしもそういう人間っぽい名前欲しいな」


「あらあら、いまの名前が気に入らないのかしら、司書さん?」


「そういうわけじゃないよ。ちょっとした感傷だよ」


「でしょうね」頷き、リルへ向かってにこりと笑う。「さて、そろそろね。リル、何かわたしたちに聞きたいことはあるかしら」


 ちゃんと答えるかは約束できないけれど、と小さく付け加える。


「……お前たちは何者だ、目的は」声が震えそうになるのを抑え、尋ねた。


「見てわからないかしら、あなたと同じよ」


 どういうことだ、と疑問符が頭の中を巡る。


「わたしたちは取り戻したいだけ。わたしたちのものがわたしたちのものにならなくなってしまったから。奪われてしまったものを取り返すのは別に悪いことではないでしょう?」一歩、二歩とリルに近づきながら言った。淡々とした口調。


 リルには、黒い少女が何を言っているのか理解できなかった。というよりも少女自身が自分たちの目的を真に理解できているように思えなかった。意思のあるような振る舞いをしてはいるが、それさえも与えられた命令を機械的、自動的にこなそうとするうえで必要だからそうしているだけにも見える。

 彼女の名の意味を改めて実感。


「何を言っているのかわからない。そういう顔をしてますね」


 少女はリルの顔を覗き込み、くすくすと笑った。表情に反し、機械よりも感情のない声音。


「でも、きちんと伝えて頂戴ね。そしてしっかりと備えなさい。ちゃんとあなたたちの予定に合わせてあげるから。よろしくね」


 そう言い、少女はリルから離れ、クラゲ女と炎熱のケモノの側へ戻っていく。

 羽ばたきの音が聞こえ、頭部が花のようになった翼竜型のケモノが降りてきた。ケモノは黒い少女と司書を乗せ、早々に飛び立っていった。

 後に残ったアハトはリルへわずかに頭を下げると、跳躍し姿を消した。




――


「あー、寒い……」


 リル、地面に身体を広げ横たわる。

 緊張の糸が解れる。疲れと痛みが酔いにも似た不快感、愉楽の姿に化けて、じわじわと滲んでいく。

 沈むとも、浮いているともつかぬ、奇妙な感覚。

 瞼が重い。


「おーい」


 リルの瞑想を邪魔する声。ウルリカ。


「ふぅぐ」唸りと吐息が混じった音で返事。


「なーんだ、まだ生きてるんですか。死んじゃったかと思いましたよ」弾むような揶揄うような口調だが、声が震えている。「ほーらー。生きてるんでしたら、目を開けてくださーい」


「なによ。鬱陶しい」リル、目を開け、身体を起こしながら言った。


 鬱陶しいと言われ、小さくむくれた顔をしているウルリカ。わざとらしい膨れっ面。

 半裸にブランケットという状態。

 リル、思わず視線を逸らす。


「なに」


「ふふ、ずいぶんボロボロになりましたね。ダメですよー、イキってるからそうなるんです」


「それはこっちのセリフ。あんたさぁ、どうせ煽って脱がされたんでしょ。少しは大人しくできないの?」これだから強いやつは、と言いかけるが、飲み込む。


「白い服を早く脱いでしまいたかったからですよ。それに、あそこで一番強いのはわたしでしたし――」空を見上げる。「でも、来てくれてよかったです」


 ウルリカが強がりを言っていることに、リルは薄っすらと気付いていた。

 ウルリカはウルリカを演じたがる。見栄っ張りというわけではないが、他者の前では、彼女は自分自身や他人の思う〝ウルリカ〟であろうとする。

 そんな彼女でも、さきの状況はさすがに堪えたらしいことはリルにも察せられたし、ウルリカも言外にそう言っている。

 もっとも自業自得ではあるが、それを言ってしまったらウルリカは機嫌を損ね、何をするかわからない。


「面倒くさい女だよ、まったく」呟く。


「わかってますよ」寂しそうに口角を上げる。


「ねぇ。少しの間、手を握ってもいいですか」


「こっちは怪我人なんだけど。ま、いいよ」


「ありがと。膝枕も付けてあげます」


 ウルリカ、リルの頭を自分の膝に預けさせる。無事な右手を左手できゅっと握り、空いた手で頬を撫でる。


「痕、残らないといいですね。で、あの男にやられたんですか? 確かに強そうには見えましたけど、あなたをここまでするほどには思えませんでしたが」


「それはあとで報告書か何かで見てよ」


「なーに? いま言えばわたしがあの人を追いかけるとでも思ってるんですか。リルが殺せない相手なんて、わたしが殺せるわけないじゃないですか」


「……」


「嫌味じゃないですよ」


「わかってるよ。ごめん」


「ごめん」


「つまらないことであんたの貴重なごめんを消費しないで」


「何ですかそれ」


「変なこと言った、ごめ――」


「いいですよ」にこりとして、リルの唇に指を乗せる。「さ、怪我人は黙って休んでください。お互い疲れてるから変なこと言っちゃいましたね。わたしも静かにしますから」


「わかった。じゃあちょっと寝る。変なことしないでよ」


「わかってます」


 目を閉じるリル。それをジッと見つめるウルリカ。


「じゃ、歌歌ってて」視線を感じてか、リルは目を瞑ったまま口を開いた。


「えーと」


 ウルリカは、少し迷う様子を見せるも、すぐに意を決したように深呼吸をした。

 そして歌い始めた。

 震え、かすれ気味の声音。

 それでもウルリカの透明感と纏わりつくような湿り気、寒気を覚えるような底知れなさの同居した蠱惑的な声質は健在で。



 ほんの数小節で、リルは眠りについた。

 一瞬、死んだのかとドキリとするウルリカだったが、寝息や上下する胸を見て、ほっと息を吐く。


「おやすみ、リル。ありがとうね――」宙へ向かい、小さく呟いた。


 事態は収束し、事後処理に追われる悲鳴にも似た喧騒が街を包んでいる。

 建物の隙間から差し込む西日が眩しくウルリカの顔を照らす。


 日が暮れる前には、宿が無事であればホテルへ戻りたい、でもさすがに暢気にベッドで寝てはいられないだろうな、とウルリカは陽に目を細めながらぼんやりと考えていた。

 こうした空気を読まない考えを巡らせていないと、今日の自分の情けなさや知らないところで歯車が動き出したことへの不安に支配されそうになる。


 もう少しで夜が来る。どんなに無関心を装おうとも、目を瞑り耳を塞いでも、否応なくドアを叩く。

 ウルリカには、今日の事件がもっと恐ろしい事態へ繋がる予感があった。自分たちの想像を越えるほどの、まさしく死闘になる、そう思った。


 リルの寝顔、そして爛れた左手を見て、ウルリカは決意を新たにした。そうせざるを得なかった。

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