金盞花
「ユリアス様とソフィア令嬢がいらっしゃるわ!」
私は出来るだけ目立たないように席を立った。
静かに、誰にも気が付かれないように。
校舎を出て、庭へと足を向ける。二度と彼と話さなくて良いように。
ユリアス・クロノア。公爵家爵位第一継承者で、王位継承順位は、王太子とその弟に継いで第三位。武術、学業も共に優秀。また、王の妹を母に、陸軍将軍であり、王国一の魔道士である父を持つ彼は、彼には魔道士としての才能もあった。
そんな彼は昨年、国立魔術アカデミーを首席で卒業し、陸軍へと入った。まさに彼は神が作った最高傑作だと言える。
一昨年、そんな彼に婚約者がいるという噂が流れた。多くの女の子が嘆き悲しみ、その間にあった期末テストでは、アカデミー過去最低成績がいくつも出たという。しかし結局相手の公爵令嬢とは破談になり、多くの女の子が再び彼に群がるようになった。
そして今、彼には一人の女性との婚約が噂されている。二人は運命的な出会いを果たし、恋に落ち、試練を乗り越えて結ばれたのだという。
オリヴィア伯爵の一人娘、ソフィア令嬢。
身分は大したことのない彼女だが、彼女はとても美しく、人に優しかった。彼女が選ばれるのならしょうがないと誰もが思うような女の子だった。アカデミーに突如現れた彼女は、1年立たないうちに彼を射止め、見事に婚約者の座を手に入れようとしているのだ。
そして、彼の幼馴染みでかつての婚約者だった私は、彼らによってもうすぐ王国から追い出されようとしていた。
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