1章 第3話 【キラワレモノ】矢島快人編
鏡を見るたびに苛立ちを覚えたのは、いつ頃からだろうか。
いつも鏡の前に立つと写っているのは、大した才能も無く人望があるわけでも無くただ多少口が上手いだけの軽薄そうな男がこちらを睨んでくる為実に不快だ。
事の発端は恐らくあの一件なのかもしれない。
両親の離婚は当時の幼い俺にとっては理解が出来なかった。
少し前に両親に『パパとママどっちが好き?』と聞かれたときは、何も考えずにただ
「僕は両方大好きだよ!!」と何も知らない俺は無邪気に答えた。
それを聞いた二人は、泣きそうな顔で優しく僕の頭を撫でてくれた。
それからしばらくして、ある日の下校時間、珍しく母がクラスまで迎えに来た。
不思議に思ったが、大好きな母が迎えに来てくれたのだから喜ばないはずがない。
帰りの電車で母とウキウキで談笑をした。
降りる駅が近づき、降りる準備をしていると母に『今日はここで降りないよ』
と言われた。
その時横から見えた母の顔は、いつもより曇っている様に見えた。
数十分過ぎた後にやっと『ここで降りるよ』と言わた。
始めて降りた駅、見慣れない街並み、いつもとは違う雰囲気に興奮していた。
例えるなら知人の家に向かう道中のような感じだ。
見知らぬ飲食店や少し遠くに見える高層マンションや、見たことない形をした建物などに物珍しさを感じながら周りキョロキョロしていた。
俺が街並みに目を輝かせているのには目もくれず、顔を見せないように早歩きで進む母の背中をを追いかけた、暫く歩いていると随分立派なタワーマンションが見えてきた。興味本位で回数を数えて見たが眩暈がしてきたので20階から先は数えるのをやめた。マンションを背にして母は俺に向かって『今日からここがお家だよ』と振り返って微笑んだ。しかし街灯の光りに照らされた母の目には涙のが浮かんでいた。
俺はエレベーターの中で母に新しい家への物珍しさを感じながら父はいつ帰って来るのか聞いたところ
「パパとママは別々に暮らすことになった」と言われた。
その一言で俺の人生は変わった。
そうして俺と母の2人暮らしが始まった、親が別々に暮らしているからといって僕の生活がさほど変わることはなかった。
小学3年生になった頃に女の子の友達が出来た、そう秦道だ。
だが当時の苗字は白川だった。
なんでかは覚えてないが
クラスの自己紹介の時には既に俺達は仲が良かった。
帰り道も、弁当を食べてる時も俺に頻繁に話していた。
仲のいい友達が初めて出来た俺の学校は華やかだった。
人間とは常に残酷なものである、自分達と違う事を異端と蔑み迫害する生き物だ。
ある日突然同級生の一人が「お前親が離婚したんだって?」
とオブラートもくそもない疑問を投げかけられた。
俺は「違うよ今は別々に暮らしてるだけだもん」と
そいつに言ってやった事実だ、両親の口からそんな言葉は一度たりとも聞いたことが無かったからだ。そいつは<親が居ないなんて可笑しい>と俺に言い放った。俺はイジメられ始めた。始めは些細な事だけだった、軽く叩かれたり
シャーペンの芯を筆箱にぶちまけられるだけだった。
だが次第にイジメは深刻になってき始めた。
秦道と帰っている最中にカバンを奪われ池に投げ捨てられたり。
石を投げつけられたり、万引きの濡れ衣を着せられたり
出会い頭に殴る蹴るなどの暴行、いざやり返せば10倍で帰ってきた。
正直言って学校に行くのが苦痛でしょうがなかった。
母と食事に行った際に相談したが気にし過ぎだと言われた。
母と一緒に座ってた母とは年の差が10では足りないほど歳を取ってた男はやり返せと、大変ためになるアドバイスを賜った。
誰だお前は
俺はイジメに耐えられくなり自傷行為に走った。
自分の人差し指の関節をハサミで切りつけて
傷口を噛み続けた影響で今も人差し指が醜く腫れあがっている。
更にイジメのせいで今まで仲良くしてた奴らも離れていった、薄情なやつらだ。
もういっそ死んだほうがマシだと思うぐらいだった。
だが秦道だけはそばから離れなかった
俺のカバンが取られたりしても取り返してくれた。
いつも俺の隣で笑っていた、なんでだよ。
なんで笑ってられるんだよ。
見捨ててくれよ。
俺はいつも自分と話している秦道も虐められかねないと思い、俺は意を決して秦道を誰もいない教室に呼び出して
もうこれ以上関わらないでほしいと彼女に伝えた。
が彼女は「私はそんなの気にしないに決まってるでしょ?!」
と予想とは裏腹に鬼の形相で怒鳴りながらそう俺に言った。
だが俺は良く纏まらない思考の中で考えうる中で最低な行動をとった。
俺は息を思いきり吸って彼女に思いつく限りの罵声を
そして言葉の暴力と言う名が相応しい言葉のナイフを彼女に突き立てた。
言葉のナイフが刺さった秦道の傷口からは、血ではなく透明の液体が流れてきた。
涙だ
俺は困惑した、普段は獅子のような勢いでいじめっ子を追い返していた
あの秦道が泣いたのだ、俺が驚愕していると彼女は俺が刺したナイフを抜いて
俺に刺し返す訳でもなくそのまま傷口から溢れ出る涙を流しながら
走って去っていった。
教室の後ろに掲げられてる年間目標が書かれてる型紙には
「笑顔が絶えないクラスに!!」と今の状況には全く真逆の目標に笑ってしまう。
あ 死にたい 消え去りたい
そうだ、
自分が憎い
そんなことを考えていると
見回りの先生に帰るように促されて無言で家路についた。
「そうだ、あれで良いんだ そうだあれは白川の為だ」
違う、チガウ、ちがうと自分に言い聞かせながら帰っていった、
そうでもしないと電車に飛び降りてしまいそうになるからだ。
家に帰ると食卓に置手紙が一枚、母の姿はどこにも居なく手紙の内容は
今日は帰るのが遅くなるらしい。そうか…
「
」
誰もいない家 誰もいない部屋でただひたすら声にならない叫びを上げながら
自害衝動に駆られるがままに自分の顔面を殴りつけながら泣いていた俺は
実に滑稽だっただろう。
俺はただ横で何も知らないようにニコニコしてた白川を恨めしく思ってたのだ。
顔を殴る度に鈍い音とやるせなさで更に自分が憎くなる
痛覚も消え、服を鼻血を垂らし汚した事に気が付いた頃には溜飲は下がっていた。
インスタントカレーを食べたが味がしない鼻も血で詰まっていたため匂いもしない、食欲は失せた。
俺は無意識に母親に構って欲しくて目の下にクマを描いてその日は床に着いた、
俺よりずっと頭が良く優しい母ならば直ぐに何かあったのだと分かってくれるはず、と意気込んでいた。
その夜は母に聞かれたらどう話そうと考えながら眠りに落ちた。
心配が欲しかっただけだ、「大丈夫?」この一言が欲しかった。
聡明な母なら分かってくれる。
翌朝俺の顔を見た母は「何その顔?」と笑いながら聞いてきた。
そうかやっぱり母さんは聡明だった。
このクマを手書きだとすぐに見抜いた、流石の達観だ、感服する。
俺は他人に期待する事をやめた。
その後秦道が別の町に引っ越したのを母親から聞いた、当然といえば当然だろう。
憎い
暫くして母が働き始めた、弁護士の秘書らしい。
心配症の母は俺を会社の会食などにも連れて行った。
会食ではテレビで見たことがある人や、本屋のポスターで見たことがある人たちに
会うこともしばしばあった。
会食に連れて行かれた日は、和室の隅で本を読んだり弁護士の先生の仕事相手に無邪気に話しかけたり今考えれば恐れ知らずももいいところな事をしていた。
ある日そんな俺を見かねた相手方が母に向かって
「貴方の子供でしょう?ちゃんと躾してないの?」と冷たく言い放った。
流石の俺でも言われた事の意味は分かった。
凍り付いた空気を相手方の奥さんが、叱責を飛ばして和ませたががその時
俺は動悸と眩暈に襲われていた。
その場の空気は和んでいたが俺だけは自分がやってきていた愚かな行動に心底自分が憎く感じた、俺を拾ってくれた母の顔に泥を塗ったのだ。
その日は会食が終わるまでずっと無言で過ごした
口を開くと母に更なる迷惑がかかると思ったからだ。
家に帰って自分が今まで何をしたのか再確認して、トイレで俺が普段食ってるもの数十倍の値段がする食事を便器にぶちまけた。
何故まともに座ってられないのか
もう少しまともな受け答えはできなかったのだろうか。
心底自分が憎くなった。
その日から礼儀作法を独学で学び始めた。
と言っても本屋に売ってる胡散臭いハウトゥー本を買った訳ではなく、
他人が何をしているか良く観察をしてどんな人なのか
自分にどんな印象を抱いているのか、自分の存在に違和感が無いように。
その空気に溶け込むように他人の趣味趣向を把握し話を合わせた。
ただひたすら次の機会の為に相手から情報を吸収した
無作法な事をしたら手の中に持っておいた針を握りしめて痛みで気を引き締めた。
そんな事をしてた事もあって、色んな分野に詳しくなった
そのおかげで会食での話題作りも捗った。
時にはへり下りすぎて気味悪がられる事もあったが概ね好印象を持って貰った気がする。
母たちが席を外してる間一人で会話を繋げるようになった
二人っきりになった際に「凄く落ち着いてるね」と言われるが、喜んではいけない。
「いいえ、私は愚息の身ですので至らぬ点ばかりでございます、この度はご同席を承諾していただき誠に有難うございます。」と言うと大抵の相手は目を丸くしていた。分からなくもない、おおよそ小学生の口から出てくる言葉ではなかったらしい。そして俺は大事なものを失った、自分自身だ
相手に趣味趣向を合わせたせいで元々の自分を見失った。
あれ?俺好きな物ってなんだけ?将来の夢?好きな人?尊敬する人?好きな料理?
自分を型取っているものが無くなってしまった。
自分の個性を捏造しすぎたせいで将来自分がやりたい事が分からなくなった。
いつしか一人称も変わっていき私生活でも僕と話すようになった。
俺は中学生になった。
一貫校の為中学に入っても尚俺をイジメてた奴らは俺をイジメ続けた。
カースト最上位の女子に目を付けられた際には
彼氏からのブレスレットを壊した際に俺に責任を押し付けてきた、
激怒した彼氏は取り巻きを連れて、俺を袋叩きにした後にあたかも自分たちが正義だと言わんばかりに風潮して回っていた、
俺を貶してそいつは学年の英雄になった。
(彼女の宝物を破壊した奴を成敗した)とご立派な肩書を得た。
それから更に周りからの視線が四方八方から刺さるようになった。
歩けばそこかしこから、俺をあざ笑う声が聞こえてきた。
耐えられなくなって新任のバカ真面目そうなサッカー部の顧問をやっている
担任に相談したら「先生に任せろ!」と自信満々に俺の肩を叩いてきた。
二日後に担任から面談室に来るように言われた
この中学校校舎は俺達一年が入学のタイミングで完成しため
部屋や教室が全部真新しい建物の匂いがする。
面談室もおんなじだ
薬品の様な匂いがしており床には鼠色のカーペットが引かれていた。
面談室の外見はスモークが掛かったガラス張りになっており中の様子が
薄っすらと見える。
そして面談室の前につくと中に何人かの人影が壁に寄りかかっていた。
嫌な予感がする。
恐る恐る中に入るとそこには俺が担任に言った名前の奴らが全員いたのだ。
は?俺は困惑した、壁に寄りかかっていた5人の見慣れた男たちは俺を今にも殺しに来そうな勢いで睨みつけてきた。
俺が面談室に設けられてる椅子に座ると、黙ってた担任は口を開いて
「お前ら快人になんか酷いことしたんじゃないのか?」
と被害者の本人の前で聞き始めた、そいつらは勿論、何もしてない遊んでただけだ プロレスごっこをしただけだと口を合わせて言った、すると担任は困った様な顔をしながら「こいつらはこう言ってるけどどうする?」と俺に伝えてきた。
は?え?何言ってんの?遊んでただけ?袋叩きが遊び?
プロレスごっこしただけです?
また胃が痛くなってなって来た。
信じられないことを口走った担任に抗議をしようと口を開いたとたん
「先生はな、快人が橋本の彼女が大事にしてた物を壊したから、怒ったんだと思うんだよ、橋本達はサッカー部でも優秀で理由も無く、そんな事するとは思えないだ。」
と俺が悪いかの様に言ってきた。
あぁコイツはだめだな
最終的に俺が謝って向こうが許すことになった。
俺が引き起こした事となった。
何から何まで全て嘘だ。
勿論イジメは続いた、耐えられない。
家に帰って母が帰ってくるのを待っていると、2時間後にスーツの母と焼き肉屋で一緒だった男も同じくスーツを着ていた、そして玄関に迎えに来た俺に母と男は冷たい声で「リビングで待ってなさい」と言ってきた。
大人しくリビングで座って待っていると着替えてきた男と母が食卓に座っている
俺の方に歩いてきたと思ったら
[バン!]
と鈍い音とともに頬に鈍痛が走ったのを俺は感じ取った。
え、え?
頭の処理が追い付かなかった、なんで殴られた?え?は?
俺が混乱していると目の前の男が鬼の形相で口を開いた。
「ふざけるな!自分が何をしたか分かっているのか!?」え?
男は間髪入れずにさらに怒鳴りつけてきた
「遠藤先生から聞いたぞ!女の子が大事にしている物を壊して
あまつさえ怒りに来た子達にイジメられてるって言ったそうじゃないか!
恥を知れ!」
男の口からは担任の名前が出てきた。
「え?違うよ!元はと言えば」と弁明を述べようと試みた結果
「バン!」
追撃を受けた、男は今にも俺を絞め殺しそうな勢いで俺を睨み付けながら
「悪い事をしたらまず謝れと言っているだろ!」とさらに顔を真っ赤にしていた。
「だから俺はあいつに濡れ衣を着せられたんだよ!なんで分かんねぇんだよ!」
「バン!」
二度目の追撃を受けた。
「親に向かってなんだその口の聞き方は!?」
お前がいつ誰の親になったんだよ、気付いたら母さんと住み始めてただろ。
気付いたら唇をきつく噛み過ぎて血が出て来ていた。
聡明な母はそろそろ顔に虐待に見える傷が出来かねないのを懸念したのか
「もういいでしょう」と止めてくれた、やはり母さんは優しい。
「なんであんなことしたの?」と冷たく俺に聞いてきた
俺は鉄の味がする口を動かして事の顛末を話した。
「本当に理子ちゃんのブレスレットを壊してないの?」
と俺に聞いてきた。俺がうなずくと、いきなり母が声を荒げて
「本当にやってないのね?!」と男と一緒に聞いてきた。
あぁ、これは俺が折れなきゃいけないな。
「ごめんなさい、僕は嘘を付きました」と微笑んで
冷静で端的に尚且つ自分に非があると認める一言を発した。
気味の悪いものを見るような目で二人に見られた。
その後俺がどれだけ卑劣な事をしたか長時間にわたって諭して頂いた。
その際になぜか胃がキリキリして痛みと吐き気に襲われた。
その際の痛みを抑える為に爪で親指の関節を抉っていたせいで
人差し指と同じく醜くなっていた。
更に醜い自分が嫌いになっていき、憎くなってきた、
「オマエナンテシネバイイノ二」
と頭の中で誰かに言われた気がしたが、気のせいだろう
その日は静かに眠りに落ちた。
学校ではさらに俺をイジメる輩が増えてきた、クラスでは完全に孤立した。
担任はなぜかは分からないが俺へのイジメを黙認していた。
俺が濡れてたり靴を無くす度に母に聞かれたが
友達と遊んでただけと笑いかけた、これ以上母に迷惑はかけられないからな。
俺は笑い続けた、母に心配を掛けないように
ただ「イジメられてるの?」の一言が欲しかった。
教科書が無くなったり、無理やり女子トイレに入れられて橋本達が
先生に報告して俺がまた母達に夜通しで説教をされた、
その度に胃が痛くなり吐き気がした。
我慢できなくなってトイレに駆け込んで便器に吐いた。
酸っぱい胃液に喉を傷めながら自分が口から産んだ汚物を一瞥したら驚愕した。
そこには、血を含んだ吐瀉物があった。
あぁこれは母さんに迷惑を掛けそうだな、黙っておくか。
俺はトイレを流し、その日は床についた。
そんな事を度々繰り返してたある日、事件は起きた。
ある日いつもの様に罵声を浴びせられて惨めに親指を抉って耐えていると、
またこないだの吐き気とさらに激しい胃痛に襲われた。
またトイレで済ませようと中学1年の廊下を歩いてたところ
運悪く橋本達に出くわした。
橋本は顔色が悪そうな俺の顔を見るや否や
「俺ボクシング始めたから練習台になれよ!」と腹を殴りつけてきた。
かなり強いボディブローがみぞうちに入った
毎日食らったはずで少しは慣れていたが、この日は違った。
何故か意識が朦朧としてきた、そして
「おヴぇ」
我慢していた胃の中の物が口から出てきた
俺の口からは真っ赤に染まった朝食の未消化の固形物が吐き出された。
きつ過ぎる刺激臭や吐瀉物の中に含まれてる尋常じゃない量の血を見た
女子生徒の一人が真っ青の顔をして、職員室が有る方へ廊下を走っていった。
その隙に橋本達は一目散に逃げて行った。
2分も経たない間に職員室の方から保険の先生と担任を含めた4,5人教員が
大急ぎでこっちに向かって来た。
保険の先生が俺の横に立つと彼女がやけに大きく見えた、
その時俺は自分が倒れてる事に気づいた。
横たわりながら保険の先生が俺に痛みの有無、
いつ頃からなどの問診に答えてる最中に逃げた橋本達が
3年のラグビー部に捕まり襟首を掴まれながら罪の擦り合いをしていた。
そいつらは4,5人の中に混じっていた校長に男女問わず殴られていた。
そこで俺の意識は途絶えた。
目を開けるとそこは何もない真っ暗な空間が広がっていた。
目の前にはモヤモヤした何かがあった、それは動くわけでもなく。
ただじっとそこにいた、突然俺の意識は途絶えた。
その日俺は病院に運ばれ医師から吐血の原因を聞かされた。
俺の胃は過度なストレスで穴が開いていたらしい、俺はあまり驚かなかったが
俺が運ばれた病室にとんでもない勢いで泣きながら入ってきた母の
顔がさらにクシャクシャになってた。
その後イジメられてた事を全て話した
母は更に泣き 医者の先生は絶句していた。
直ぐに母が学校に鬼の形相で連絡を入れ、橋本達を訴訟した。
母の事務所の先生方が全力で臨んだところ爆速で勝訴、目玉が飛び出るほどの金額をむしり取った、その後橋本達は退学、顧問兼担任の遠藤は休職処分になった。
母は俺に「もう隠し事はしないで」と言われたが無理な願いだ
俺はもう母に迷惑はかけたくない。
病室に来た母と入院生活中での出来事は、また別のお話
俺は高校生になった
入院生活中暇すぎて身体からキノコが生えてきそうだったので
勉強の勤しんだ結果、そこそこ良い高校の受験を受けることにした。
そしてなんとか受験に受かった事の余韻にしばらくは浸ろう。
高校受験の合格発表当日
綺麗な桜が咲き乱れる校門で、アスファルトで舗装された広場に鎮座してる
合格発表の掲示板の前には泣いている子や
思いっ切り喜んでいる同じ年の男女でごった返していた。
自分の受験番号を見つけて胸を撫で下ろした。
周囲がざわつき始めた。
掲示板の前で一際目を引く同じ年の美少女がいたのだ。
佇まいや雰囲気から感じられる上品さで周囲の男女を圧倒していた。
どこかで見覚えのある黒髪だな、いや思い出すのはやめよう。
その彼女は掲示板ではなく周囲をキョロキョロして何かを探す素振りをしてた。
彼女の姿に見入っていると彼女と目があった。
ヤベ!見られた?絶対変な奴だと思われてるよ。
ほらこっち来たし!うわぁ、合格発表日にもう目を付けられたよ。
またイジメられるのかな。
と華々しい学園生活を捨てる覚悟をした俺は、
目の前まで来ていた彼女に向って全力で頭を下げた。
すかさず「申し訳ありません!貴方の黒髪を以前どこかで見たことがあったような気がして凝視してしまいました!」
そう
自分が何か失態を働いた際に、気付いた時にはもう頭を下げなければいけないのだ。
目の前の少女はキョトンとしていたが、俺の顔を見ながら
「ふぅーん、少しはいい顔になったのね」と呟いた。
褒められた
その謎の美少女Xは
静かな鈴のような声で「また会ったわね、バ快人」と
いきなり耳元で、ささやいてきた。
え?バ快人?なんで俺名前を知ってるんだ?まさかどこぞのリンゴが好きな死神に寿命と引き換えに死神の目を手に入れたのか?とバカげたことを考えて。
俺は数秒固まった後に至極まっとうな疑問を投げかけた。
「どちら様でしょうか?」と腑抜けた声で聞いた、目の前の美少女は
俺の襟首を引っ掴んで入学が決定したばかりの学校の体育館裏に連れていかれた。
来るときにほかの人たちの目線が死ぬほど痛かったが、まぁ気にしたら負けだろう。
体育館裏で俺を拉致した謎の少女Xは綺麗な声で、
小学生が口喧嘩で使いそうな低俗で下品な聞くに堪えない語彙が皆無な罵声を俺に
浴びせてきた、しかし俺はその罵声で背筋が凍った。
俺はその罵声に聞き覚えがある。
そう小学生の頃俺が白川に放った暴言だったのだ。
それに気付いた俺は顔面蒼白になりながら「し、白川?」
ともし違ったら奇人と疑われる主語の無い一言を目の前の美少女に投げかけた。
彼女はとても上品に笑いながら「今は秦道だけどね」
と俺に微笑みかけてきた。彼女曰くテレビでよく見るあの秦道財閥と同じ漢字らしい。そして彼女は口を開いて「今の私はその財閥の令嬢なの」と一瞬何を言っているか理解できなかったが今はそうじゃないだろ!。そう俺が言いたいのはもう決まっていただろ。俺は涙を流し笑いながら「ごめん、ほんとに俺!ごめん、」鼻水交じりの汚い声で彼女に向かって今絞り出せる最大限の謝罪を彼女に投げかけた。
彼女はとぼけた顔で「なんのことかしら?バ快人くん」
と白川改め秦道は急に演技臭く、そして落ち着いた口調で
「あーあー今日は久しぶりの友達に会ったかと思えば、顔面をコンボイトラックに轢かれたぐらいぐしゃぐしゃにして謝られたから、疲れたわね」「どこかにこの疲れた美少女の疲れをファミリーレストランでご飯をご馳走してくれるバ快人はいないかしらぁー」
とこっちをチラチラ見ながら言ってきた。
「お前今自分で自分の事美少女って言っただろ、あと完全に名指しで集りに来てるだろ!」俺はこれは彼女なりの気遣いだと信じて、財布の中身を確認して1000円札が4枚入ってるのを確認して。
「今月は節約だな」と秦道に言ったら彼女はそんなに大食らいじゃ無いと
拗ねた顔で脇腹を本で小突いてきた。
そして俺は昔を思い出すように秦道と並んで帰った。
そうあの頃の様に。
目の前が白くなった。
ピピピピピピー!
けたたましいタイマー音でリビングにあるソファーから体を跳ね起こす。
スマホの時間はカレーを作り始めて2時間が経過していた。
夢だったか、、なんだあのラノベ特有の長ったらしい主人公の過去編みたいな夢は
あ、やべ!
僕は煮込んでる最中のカ レーの安否を確認しに行く、焦げてた。
「クソ!俺はまた何も救えないのか!」
と焦げて石炭みたいに成り果てたカレーにアホな事を言いながら俺は、いそいそとカップラーメンの用意をした。
これ旨いんだがなぁ、これだけ食べるのはなんか学生として駄目な気がするな。
時刻は既に八時を回っていた、今日は宿題を終わらせられるな。
俺がそんな事を考えながらカップ麺をすすってると玄関から
「ガチャ」とドアのカギを回す音が聞こえた。
おいでませ歴研 わらび @Sobato03
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