1章 第2話 【夢の彼女】矢島快人編
アラームがなってないのにも関わらず僕は冷や汗をかきながら飛び起きた。
周りを見るといつものラノベや漫画が詰め込まれた本棚や黒い勉強机などがある。
白い壁紙の見慣れた自分の部屋だ。何だったんだ……いや、誰だったんだ、彼女は?
本で読んだ事があるが、夢は記憶の中から形成されるらしいので。
見たことが無い彼女をどうやって夢で形成するんだ?そんなことを考えながら、ちらっとスマホを見ると7:40と書かれていた「はえ?」 自分でもびっくりするほど素っ頓狂な声が出た。まずいぞ!いつもならとっくに電車に乗ってる時間のはずなのに俺はまだ、、、。あぁ、クソ!口調が治ってない!、落ち着け、、落ち着け、僕は僕だ。
首を掻きむしりながら自分に言い聞かせた。そう僕なんだ。これは剥がれちゃいけない……よし。僕は顔から落ちた仮面を拾い上げて顔に付け直すように。
大急ぎで着替えて、机の上に置いてある1000円札を握り絞めて家を出た、机にはまた手紙だけが残っていた。ブレザーを着ながら勢いよくドアを閉め、カードキーで施錠できたことをを確認して、薄暗い空間に敷かれている黒のカーペットを踏みしめながら、エレベーターホールまで走る。エレベーターホールに着いた瞬間にボタンを連打して舌打ちをしながら、カバンの中の忘れ物を確認する。
えーっとぉ、宿題、、よしやってない! 一通り確認した限り、忘れ物は無さそうだ、なんか忘れてるかもしれないが多少の小言は覚悟しておこう。
エレベーターに乗り1階のボタンを連打して、1階に着く間に夢の事を考えている1階に到着した。走ってマンションを出てそのまま駅に向かって全力で走る。
あ、やばい吐きそう…。全力で走ったお陰でいつもの電車の2個後の電車に乗れそうだ、駅の中で日本産のマーライオンを作りそうになりながら。改札を抜けホームに着いた。激しい息遣いのせいで、周りの人間に距離を取られていると電車が到着した。いつもは早く感じるのに今日はやけに遅く感じる、ようやく駅に着くとリバース覚悟で全力ダッシュした。HR始のチャイムが鳴ると同時に教室に到着して、疲れから机に突っ伏しながら吐き気と戦っていると。担任の〈
いや人違いかもな、そしてクラスの全員が抱いてるであろう疑問を、当然僕も抱いていた。あれ?なんで名前が全部日本語なんだ?と そんな疑問の空気で感じ取ったのか灯之は、咳払いをして口を開いた。「皆さんが思ってる事は分かります。確かに私の父の出身はアメリカですが日本式の名前を気に入って、灯野と言う名字に改名したため私もこの名前になりました。」と綺麗な声で落ち着いた声色でクラスに説明してた。改名するって、どれだけ日本好きなんだよ…。灯之はこの後授業をみんなと過ごした、そして彼女の穏やかな話し方や天然気質な行動のためか一躍クラスに溶け込んでいった。自己紹介の際に好きなものや得意な教科などを言った際に、アニメやゲームがあった為クラスのオタク枠にも話掛けに行ってた。しかしオタク達が引くレベルのヘビーユーザーだったらしく、灯之は初日でオタク達に崇拝されていた。当然そうなると僕にも話掛けに来たが、夢の事もあるため当たり障りのないことを言って話を切り上げると真顔で僕の目を数秒見た後に別のグループの所に行った。え、なに?怖い、俺なんか変な事したっけ?そんなこんなあって、学校終わりに部室に行くと秦道がいつもより香りが良い紅茶を飲んでいた、疲れているようだ。「あら お疲れの様ねバ快人、ついに数々の変態行為が見つかって、退学になるのかしら?それとも下校中の小学生にクトゥルフの邪神が逃げ出すほどの顔で話しかけたことが警察に通報されたのかしら?」なんだこいつは開口一番失礼過ぎるだろ「おい待て 疲れてるのはそうだが後半が全部違うぞ、しかもなんだよクトゥルフの邪神が逃げ出すほどの顔ってそれもう人間じゃないだろ…」「コミュ障で挨拶が出来ないあなたのために、話の切り口を作って上げたんじゃない?感謝しなさいバ快人、学年2位のこの私が気を使ってあげてるのよ?普通は泣いて喜ぶものよ?」「僕はコミュ障じゃないし、何で自分で自分を神格化してるんだよ、確かに普段の物静かな秦道だったら少しはありがたみを感じるが、お前俺といる時良くしゃべるだろ」
「それはバ快人が昔からの付き合いだからよ。」急にマトモになったな「そ、そっか、あと今日はお互い疲れてるし普通に話そう。」
「分かった」「ありがとな」「で、なんでそんなに疲れてるのよ?」
「秦道だって疲れてるだろ、俺、僕のは……言わなきゃだめか?」
「いいわよ、私今日何も用事無いし。私のはこないだ無謀にも私に告白してきた愚か者の取り巻きに因縁を付けられただけよ、勿論全員今頃職員室よ。」普段はあんな口調だがこっちが素だ、本人曰く変な虫がよって来ないように尖った口調にしてるようにだそうだ、にしたってやる事えげつねぇな。秦道は読んでいた本を閉じて本棚からもう一つティーカップ出して紅茶を作り、こちら側にずいっと机の上を滑らせて渡してきた。僕は静かに「ありがとう」とつぶやき紅茶を一口飲んだ、ジャスミンティーの良い香りが花を抜けて、体の緊張がほぐれるのを感じ僕は少しずつ話始めた。「夢に見た人物が同じ学校に転校してきたって言ったら信じるか?」「私と快人くんの仲でしょ、信じるわ」意外な返事が返ってきて少し虚を突かれたが、話を続けた。「夢は唯一自分が自分で居られる場所なのに、他の誰かに見られたくない自分を見られた気がする」「快人くんご両親が離婚してから変わったわよね」「僕が?変わってなんかないよ」「変わってる、特に口調なんて全然違うし一人称も変わってる」「年を重ねると一人称も変わるだろ 」「人間の本質は案外簡単に分かるものだよ」「それ僕の受け売りだろ」「ばれた?」まだこの書庫に棚が一つしか無かった頃に言った台詞を秦道はまだ覚えていた。「多分気付いてるのは私だけだと思うけどその張り付いた仮面はいつはがれるの?・・・・まぁ良いわ。 じゃあ私先帰るね」「は?仮面ってなんだよてか、秦道今日用事無いって言ってなかった?」「たった今出来たのよバ快人 じゃあね。」秦道はそう言って書庫を後にした。仮面か……。ティーカップを水道で洗って本棚に戻し、僕も部室を出た後に、旧校舎の更に奥へ足を運ぶ。裏山の頂上には古びた神社があって、ちょうど神社の鳥居の前は山が開けており街を見渡せる、この神社は旧校舎が使われた頃はリア充が爆誕してた場所だったらしい。爆発しないかな。ここに来るのは決まって一人になりたい時だ。などと黄昏ていると ガサガサと草が揺れる音がした。先客がいたのかなと思い?足音を消して誰がいるのか確認しようとこっそり覗いたら、見覚えのある金髪の少女が神社に手を合わせていた、彼女は一言、「 」と何かを呟いて神社を後にしようとした。気を抜いたら足元の小枝を踏んでしまい、「え、?!猪?!」とこっちに来た、さすがにここで猪の真似をするのは変人認定されかねないので、堂々と「僕だよ」と返事をした。灯之の顔に夕日がさして金髪が綺麗に輝いている、彼女は「君って…………」と静かに僕へ問いかけた。彼女の顔を夕日がオレンジ色に光らせて少し儚げな雰囲気を作っていた。灯之は草むらから出てきた僕に向かて困惑と驚きの表情で。「君って……確か快人くん?だよね?どうしたの?」あ、どうしよう何にも考えないで出てきちゃった、取り合えず夢の事聞いてみるか。数秒考えた末に絞り出した声で。
「い、いやただ黄昏に来ただけだよ。あとさ、変なこと聞くけど、夢で俺のこと見た?」何言ってるんだよ僕?!完全にキモいやつじゃん!!灯之は一瞬険しい表情をした後に苦笑いをしながら。「ごめん!ちょっとわかんない! じゃあね!!」
そう言って灯之は走って帰ってしまった、まぁ当然だな。明日からクラスの笑い物だろうな、もう帰ろう。今日は疲れた。お金もあんまり無いし今日はカレーでも作るか、材料を買って家に帰ると食卓の上に新しい手紙が置いてあった。カレーを煮込んでる間少し横になろう。
僕は唐突に襲ってきた睡魔に喰われた。
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